空洞日記

 言葉を飲み込むのがうまくなった。と思っていたのに、体調を崩してからまた下手になってしまった。おそらく薬の副作用だろう。心配されていた発疹、口内炎、下痢の副作用は出ていないが、口渇、頭痛、吐き気がひどい。でも薬が錠剤で本当によかった。八月に飲んだメニエールの薬は、間違えて毒を渡されたのかと不安になるほどまずかった。「良薬口に苦し」とはまさにこのことである。ネット民風にいうと、良薬口に苦C 


 以下は、2023年11月頃からの日記です。

・日記を書くのが下手になってしまった。からだのすべての穴が塞がってしまったみたいに、すべての言葉が詰まってしまう。


・Aの嬉しそうな声色が好き。Aの文章も好き。Aが好きだと言っていた配信者を、自分も見るようになった。思えば、VTuberを見るようになったきっかけもAだった。いつも世界を広げてくれてありがとう。


・人に連絡を返せなくなった。すみません。


・好きなコンテンツ、憧れの人、思考の糧が故人だから、知っている人やグループが解散や引退となってもあまり何も思わないことが悲しい。人間として欠けている気がして。まあ、そういうところを持っていても、たとえば平気で嘘をつくとか人を孤立させようと手を回すとかっていうことが罪悪感なくできる人もいるから、関係ないのかも。暗闇に目が慣れている人間になりたい。


・人に連絡を返せなくなった理由の一つは、自分だけが空洞な気がするから、です。各々の苦しみ、十人十色の悩みを抱えているのは分かっているけれど、私の周りのほとんどが私のほしいものを持っている(と感じている)から、苦しみの明度を比べてしまう。嫌な人間になりたくはないけどね。周りは、仕事や制作や生活を頑張っていて、その対価を与えられている。ということは、持っていない私はまだ頑張っていないということで……と考えると、逃げ出したくなる。全てから目を背けたくなる。好きな人とけんかしたとか、仕事で嫌なことがあったとか、そういう日常の裏側で、けんかするほど好きな人と関わっていることや、友達に聞いてもらっていること。全部が羨ましくて仕方ない。無機物に命が宿ったら、無地の抱き枕と付き合うのに。嫌な人間にはなりたくないね。


・少し前、同じようなことを嫌がっていた友達(些細なことなので、詳細は伏せさせてください)に「××に〇〇されて嫌だった」と話した。適当でも軽くでも共感してもらえると思っていたし、それだけでよかった。友達は「私は嫌じゃないけどな。橘ちゃんも本気で嫌じゃないんでしょ?」と返されて、えーーーー!!?私の話聞いてた!?!? と思ったが、面倒になって適当に流した。本当はAに聞いてほしかった。


・飲みに行った日に着けていた下着は、翌朝ずんと重い。アルコールが滲みていて、嫌になる。


・最高の夢を見た。そのあと、最悪になった。というのが一週間ほど前のことだ。苦水はコップの半分にまで減った。ファイトクラブ。bio欄を、ファイトクラブの一節にしていた人のことを思い出す。彼がいなければ、私はメンヘラ神に会えていなかったはずだ。一人暮らしを始めてから、メンヘラ神の数多あるサブ垢の一つを見つけた。bioは有名な都々逸だった。もうこの話はやめておきませんか。一旦。


・学部のころの資格課程のメンバーで飲みに行った。そこでAの卒業後の進路を聞いた。わかっていたことだし、お酒も入っていたので、自分でもびっくりするほど軽い返事をした。居酒屋特有のあの、熱を孕んだ空気のなかで。
 同じ方向のAと帰るつもりだったが、車で来ていた男友達に乗せてもらい、三人で帰った。寄ったコンビニで買ったファミチキを開け損ねて、ファミチキがアスファルトで産卵してしまったので、やば!!(空気が) と慌てて拾って食べた。「おいしすぎる!」と言うと、二人は「三秒ルール……だよね!」「うんうん!」と、こちらも慌てたようにフォローしてくれた。「(地名)の味がする〜」なんて言わなくてよかった。賢明! 


・飲み会のとき、Aはみんなに優しくて、でもそれは誰にも優しくないということになるのだろうか、と考えた。博愛主義者の偏愛? 共通の友達に「橘はみんなに100優しいけど、Aにだけ120優しいよな」と言われたことがあって、私はそのとき「そうなの? そんなの分かるものなの?」と返した。また、別の人には「性善説で生きすぎだよ。人間っていうのは、他人の隙を補ってあげる生き物じゃなくて、その隙間に指を挿し込んで、暗闇を広げてやろうと思うものだよ。春ちゃんにはそれが足りない。よく考えてみて。春ちゃんは、この四……五年間、誰かに踏み込んだり、踏み込まれたことはある?」と言われた、と書こうと思いましたが、途中からほとんど創作です。


・これ「・」が無かったら太宰治の『葉』感ある


・Aに話したいことが、また生まれてしまった。タイムマシンがあればいいのに。どこでもドアでもいいね。急に現れたら「なんで!? どこから!?」ってものすご   ここまでにしておきましょう。自分の妄想が、限界すぎる。


・寿司打にハマりすぎ 今あなたがやるべきは寿司打でもTwitterでもなく、高熱にうなされていた五日間に進められなかった課題! もしくは、療養! さらには、連絡! でしょ(今でしょ!の正論しか言わないことが正しいと思っている先輩バージョン)


・「幽霊の正体見たり枯れ尾花」←最近この言葉が好き。ほとんどはそうなのかもしれない、私が怖がっていることのほとんどが、案外どうってことないのかもしれない、って元気づけられるから。

 

 もう少し書き残しておきたいことはあるのですが、まだ体調が万全ではないので、一旦ここまでにしておきます。来年もマイペースに更新していきます。今年も橘春の文章に触れていただき、本当にありがとうございました!

 毎年言っているような気がするけど、2023年も一瞬で終わってしまった。さまざまな意味で、生きていたらこんなこともあるんだ……と思う出来事がいくつもあった。来年も、たくさん笑える良い一年になりますように!

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