ち-ちゃん

作家になる事を目指して、日々宅配の配達に頑張っている4人の子供のシングルマザー。シング…

ち-ちゃん

作家になる事を目指して、日々宅配の配達に頑張っている4人の子供のシングルマザー。シングルおばさんです。

記事一覧

働く

    離婚をして四人の子供を育てるために、私は宅配便の配達の仕事に就いた。四十八歳の就活は想像以上に厳しく、やっと就職できたものの、研修の時点で音をあげそう…

2

指切りげんまん

 『指切りげんまん、うそついたら針千本の~ます。指切った』子供の頃、約束をする時に行った一種のパフォーマンス。大人になるとそうたやすく指切り出来ないほどに、約束…

2

胎内記憶

 「お母さんのお腹の中にいた時の事、覚えてる?」  上手にお話が出来るようになる、二、三歳の時に尋ねると答えてくれるらしい。四歳を過ぎると「覚えていない」とその…

5

忘れない

#創作大賞2023 #オールカテゴリ部門 小学校に入学するとき、お父ちゃんは腕時計を買ってくれました。赤いベルトの文字盤に白雪姫の絵が描かれたものです。 私はうれしくて…

4

忘れない

小学校に入学するとき、お父ちゃんは腕時計を買ってくれました。赤いベルトの文字盤に白雪姫の絵が描かれたものです。 私はうれしくて、一日中腕時計をつけていました。 コ…

3

四分の一の一

 僕の小学校では十歳の記念に、将来の夢を発表する二分の一成人式が行われる。僕はお母さんを喜ばせたくて、頑張って準備をした。だけど、お母さんは仕事を休めずに来ては…

4

寂しがり屋

「お金って寂しがり屋だから、仲間の居るところに集まるらしいよ」  親友の朋子が私の懐具合の厳しい理由を教えてくれた。 「なるほど、財布の中、小銭しか入ってないの…

2

選択

妥協というしかない。 なんでこんな大切な人生の岐路で、妥協してしまったのか、自分が情けない。 「三十までに結婚しようね」 陽子と約束していた。 一流企業に勤める陽子…

2

夏休みが嫌い

 私は夏休みが嫌いだ。 宿題がいっぱいでるし、そもそも自由研究って何が自由なんだか意味がわからない。 うだるように暑いのに、私の家は一階の店にしかクーラーがない。…

7

父の匂い

「お母さんデートしようか」 あれから、まるで魂が抜けたように生気を失った母に、私はやっとの思いで声をかけた。 父が余命宣告を受けてからというもの、母はみるみる痩…

7

猫の挫折

猫が家出した。 猫には猫の事情がある。 これが最後の家出であり、最後のチャンスだった。 決められた相手と結婚して実家を継ぐなど 猫にはもってのほかだった。 そん…

6

「ハレ」の街

隅田川の川縁、スカイツリーのお膝元、私の住む墨田区向島は懐かしさと近未来の希望とが入り交じった街だ。 昭和の全盛期、五百人からの芸者衆が町を彩った。今はかつての…

2

聚楽

 父の面会の帰り、上野駅を出て、母と二人レストランに入った。  中途半端な時間帯のせいか、店の広さが目立って、その分どこか物悲しい。 窓の外を行き交う人達がゆらゆ…

2

ここのところなんだか上手くいかなくて、凹んでました。

心のどこかに慢心だったり、慣れだったり、もしかしたら焦りとかあったのかも?

配達中(仕事)にほんの僅かな時間だけど、夕日がそんな私を励ましてくれました。

7

こだわり

娘の良恵は持ち物にはこだわりを持っている。 財布、水筒、自転車、筆箱、何でも水色。 『水色がすきなの?』とちょっと呆れて聞くと、 気に入った物に囲まれている方が快…

8

なんだか自信がなくなってきた。

仕事でミスが連続してしまってる。

負の連鎖ってなかなか止められないんだ。

だけど、ふてくされたら負けだ。

なんとかしなくては。

明日から仕切り直して、又頑張るしかない。

負けるな私。

4

働く

  

 離婚をして四人の子供を育てるために、私は宅配便の配達の仕事に就いた。四十八歳の就活は想像以上に厳しく、やっと就職できたものの、研修の時点で音をあげそうになったりもした。
お金を稼ぐことは大変だ。雨の日も、雪の日も、凍える寒さも、汗が滝のように流れる炎天下の時も、重たい荷物を運ぶ。体のあちこちがギシギシと音をたて、心の声は「無理!」と叫んでいる。それでも、子供達の教育費、家賃、水道光熱費

もっとみる

指切りげんまん

 『指切りげんまん、うそついたら針千本の~ます。指切った』子供の頃、約束をする時に行った一種のパフォーマンス。大人になるとそうたやすく指切り出来ないほどに、約束する事は難しい。もし約束を破ったならば、友情も信頼も失って、「うそつき」のレッテルを貼られてしまう。だからなのか、守れない約束はしない、針千本飲むチャレンジを頭の中で回避できる分別ある大人になった。
「ばーば、今まで針千本飲んだことある?」

もっとみる

胎内記憶

 「お母さんのお腹の中にいた時の事、覚えてる?」
 上手にお話が出来るようになる、二、三歳の時に尋ねると答えてくれるらしい。四歳を過ぎると「覚えていない」とその記憶は消えてしまう。一生に一度だけしか聞けないと育児雑誌に書いてあった。
 長女幸恵が、もうすぐ三歳の誕生日を迎える五月の澄み渡る空の日曜日。胎内記憶を聞いてみることにした。
 隅田公園の芝生の上にシートを敷いて、楽しそうに遊んでいる幸恵を

もっとみる

忘れない

#創作大賞2023 #オールカテゴリ部門

小学校に入学するとき、お父ちゃんは腕時計を買ってくれました。赤いベルトの文字盤に白雪姫の絵が描かれたものです。
私はうれしくて、一日中腕時計をつけていました。
コチコチと耳をすまさなければ聞こえない小さく時を刻む音が、私を幸せにしてくれます。
「お父ちゃんはちいちゃんには甘いんだから」
 お母ちゃんはまだ腕時計なんて必要ないんじゃないかと不機嫌そうに言っ

もっとみる

忘れない

小学校に入学するとき、お父ちゃんは腕時計を買ってくれました。赤いベルトの文字盤に白雪姫の絵が描かれたものです。
私はうれしくて、一日中腕時計をつけていました。
コチコチと耳をすまさなければ聞こえない小さく時を刻む音が、私を幸せにしてくれます。
「お父ちゃんはちいちゃんには甘いんだから」
 お母ちゃんはまだ腕時計なんて必要ないんじゃないかと不機嫌そうに言っています。
「いいじゃないか、よく似合ってい

もっとみる

四分の一の一

 僕の小学校では十歳の記念に、将来の夢を発表する二分の一成人式が行われる。僕はお母さんを喜ばせたくて、頑張って準備をした。だけど、お母さんは仕事を休めずに来てはくれなかった。
「健太は何を発表したの?」
 その日の夜、優しく聞く母に僕はなんだかイライラして口を聞くことができなかった。
「お母さんが来なかったからいじけてるんだろ?」
 高二の孝一にひやかされて、中三の良恵にまで笑われた。高三の幸恵だ

もっとみる

寂しがり屋


「お金って寂しがり屋だから、仲間の居るところに集まるらしいよ」
 親友の朋子が私の懐具合の厳しい理由を教えてくれた。
「なるほど、財布の中、小銭しか入ってないのは、寂しがり屋のお札は仲間の居るところに行っちゃってるからなのか……」
 私も彼女もシングルマザー。子供を育てるために必死で働いてきた。彼女は二人の子供が働き始めて、最近少しゆとりが出来た様子。
私は、四人の子供の下二人がまだ学生でお金

もっとみる

選択

妥協というしかない。
なんでこんな大切な人生の岐路で、妥協してしまったのか、自分が情けない。
「三十までに結婚しようね」
陽子と約束していた。
一流企業に勤める陽子は同じ歳とは思えないほど、きちんとした生活を送っていた。
安定した収入と年二回のボーナスのおかげで、マイカーも持っているし、有給休暇で毎年海外旅行にも行っている。

「ちぃちゃん、イタリア最高だよ」
先日も一週間イタリア旅行を楽しんでき

もっとみる

夏休みが嫌い

 私は夏休みが嫌いだ。
宿題がいっぱいでるし、そもそも自由研究って何が自由なんだか意味がわからない。
うだるように暑いのに、私の家は一階の店にしかクーラーがない。
二階はトタンの屋根がお日様に暖められて溶けそうで、昼間はとても居られない。
扇風機はぬるい空気をかき回しているだけだ。
なんの予定もないから、一日がとても長い。

近所の亜美ちゃんは家族て毎年旅行に行って留守になる。
サラリーマンのしー

もっとみる

父の匂い

「お母さんデートしようか」
あれから、まるで魂が抜けたように生気を失った母に、私はやっとの思いで声をかけた。
父が余命宣告を受けてからというもの、母はみるみる痩せていき、とうとう何も手につかなくなっていた。

『デート』というのは高校生の頃、進路や人間関係に悩み、半ば引きこもりかけていた私をなんとか外に連れ出そうと母が発したものであり、それ以来二人の会話にそんな言葉が出てくることはなかった。

もっとみる

猫の挫折

猫が家出した。
猫には猫の事情がある。
これが最後の家出であり、最後のチャンスだった。
決められた相手と結婚して実家を継ぐなど
猫にはもってのほかだった。
そんな型にはまった猫人生はごめんだった。

夢は夢のまま終わった。
猫は帰ってきた。

上手くいったからといって鼻を高くしてはいけない。
自分の身の丈を知らなければいけない。

飼い猫としての素質を問う最終試験。
「家出をし

もっとみる

「ハレ」の街

隅田川の川縁、スカイツリーのお膝元、私の住む墨田区向島は懐かしさと近未来の希望とが入り交じった街だ。
昭和の全盛期、五百人からの芸者衆が町を彩った。今はかつての賑わいは薄れたものの、それでも百人余りの綺麗どころがいる。
花柳界の粋は健在だ。美容院は髪結さん。どんなに歳を重ねでも、先輩芸者は「お姉さん」と呼ばれ、一見さんお断りの料亭が今も残る。仕出しの料理屋はこだわりに溢れて、格別の味。菊最中の青

もっとみる

聚楽

 父の面会の帰り、上野駅を出て、母と二人レストランに入った。
 中途半端な時間帯のせいか、店の広さが目立って、その分どこか物悲しい。
窓の外を行き交う人達がゆらゆら見える。
「お腹すいたでしょう。何でも好きなの注文しなさい」 
「ハンバーグでいい」もしかして、父と会うのが最後なのかと思うと、胸が苦しい。
「お母さんはビーフシチューにするね」
ビーフシチューは父の大好物だ。
「このレストラン、お母さ

もっとみる

ここのところなんだか上手くいかなくて、凹んでました。

心のどこかに慢心だったり、慣れだったり、もしかしたら焦りとかあったのかも?

配達中(仕事)にほんの僅かな時間だけど、夕日がそんな私を励ましてくれました。

こだわり

娘の良恵は持ち物にはこだわりを持っている。
財布、水筒、自転車、筆箱、何でも水色。
『水色がすきなの?』とちょっと呆れて聞くと、
気に入った物に囲まれている方が快適なんだと答える。
84歳の母は梅原という苗字なので、食器等『梅』の柄の物を好んで集めている。

私は、物に対するこだわりがない。
『お母さんはだから結婚も失敗するんだよ』
良恵に言われて、返す言葉がない。

大好きな人と一緒に生きる

もっとみる

なんだか自信がなくなってきた。

仕事でミスが連続してしまってる。

負の連鎖ってなかなか止められないんだ。

だけど、ふてくされたら負けだ。

なんとかしなくては。

明日から仕切り直して、又頑張るしかない。

負けるな私。