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近いのに、知らない場所。

 近所なのに、普段は行かない場所に行った。

 とても、遠いところに来たような感じまで、した。

 ちょうど桜が咲いている時期で、だけど、お寺の境内に咲いている桜がキレイだと教えられ、そこまで歩く。

 この街には約30年住んでいて、その近くを、数えきれないくらい通っていたはずなのに、そこから、何十メートルか進んだだけで、その寺はある。ちょっと遠くからは、その門は見ていたけれど、そのすぐ前に立ったのは初めてだった。

 そこに、古くからあるような、複雑な形をした大きな桜があって、桜の花が咲いている。

 そんな光景も初めて見た。

 その境内には、同じように長年生きてきた桜が咲いていて、しかも、このルートに詳しい人が一緒だったから、そのそばの坂道を少し登って、振り返っただけで、立派な桜が奥行きを感じさせるように並んでいる。

 近所ではなく、どこかの古都に来たような気持ちにもなった。

参道

 さらに、もう少し先の寺に行った。

 近所ではかなり大きく、だけど、池があるのに、中が見えないように鉄の塀で囲われているし、なんとなく人を寄せつけない気配もあって、そこに足を踏み入れたことはなかった。

 入り口の階段も急で、そして、中も整備されている。

 駐車場もあり、鐘撞き堂には、四方に玄武、虎、龍、朱雀と、それぞれの方角の霊獣の彫り物も施されている。

 お寺の規模のわりには、お墓の数は思ったよりも少なく、地面には、古い鏡のような、丸いフタのようなものが設置されている。初めて見た。

 そして、少し小高い山のような場所があって、もしかしたら、古墳では、などと思い、その上にある整えられた樹木の形も、不思議な印象があった。(見出し写真です)。

 お堂には、賽銭箱もなく、周囲も、塀で囲まれているので、やはり、外へ開かれている気配は薄い。

 ただ、その寺の門のところに立つと、昔はかなり遠くまで続いていたかもしれない参道が見えるような気がしたけれど、すぐそばに広い道路があり、それによって、その「参道」が、お寺のすぐそばで断ち切られるようにも思える。

 そんなことで、何かしらの恨みのようなものがあって、だから、こうしてお寺には珍しく、開いた気配が少ないのかもしれないと思った。

 何人かで歩いたので、それぞれの場所で、いろいろな違う視点で話を聞いたので、思った以上に豊かな時間が過ぎた。

 久しぶりに、かなり歩いたので、その時点で、すでに、なんとなく疲れていたのだけど、もう一ヶ所、行きたいところがあった。

 それは、実は、まだどんな場所かわからなかったのだけど、これまでに話を聞いていて、いつも見ているはずなのに「謎」なところらしい、というだけは分かっていたので、やっぱり見たいと思っていた。

 お寺から歩く。

 途中で、図書館のトイレに寄って、それから、その「謎」なところに行く。

 線路に通じる場所で、いつも柵のようなもので閉ざされていて、そこは、昔の水路があったのか、それとも戦後に、何か、今ははっきりと歴史に残っていないような引き込み線があって、その名残りのようなところだったのか。

 ただ、それは、そばに来ると、ただの使っていないような短い道路だった。

 それでも、そこの場所の「意味」が複雑らしいことは、なんとなく分かった気がした。

 近くなのに、知らない場所がある。

 たぶん、どこにでも、そんな「謎」はあるのだろうけど、普段は、知らないままだったのが、実際に少しでも知ると、その知らなかった時間のことが、不思議に思える。

 さらに、知ったことで、街の見え方は、少し変わったと思う。





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