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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話

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息子が急性散在性脳脊髄炎を患い倒れた急性期から完治を目指している現在までの経過をまとめています
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#育児

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後5

退院後初めての減薬の日がきた。

入院中に3食後から朝夕食後へ減らした服薬を、朝食後だけにする、というものだ。

退院日に医師から『退院からこの日まで健康状態に問題が無ければその予定で進めるように』と指示を受けた。

今長男が元気に過ごしているのは、薬によって自分の免疫を抑え込めているからで、薬を減らせば途端にまた脳や脊髄に炎症が出来てしまうのでは無いか…。

当時は薬を減らすと言われる度にそんな

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後4

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話 その後4

再び保育園に通い始めて2週間。

その間も体調に変化はなく、穏やかに日々がすぎていった。

この日は長男が出たがっていた発表会の当日だった。

本当だったら誰よりも見に行きたかったのだが、今年は感染症拡大防止の為、参加出来るのは保護者一名のみとなっていた。

さらにタイミングが上手くいかず、寝る時だけはママがいないとダメな次男が、発表会開始直前にお昼寝を始めてしまった。

直前までどちらが行くか悩

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話33

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話33

長男が倒れてから21日目。

この日、主治医やリハビリ担当の医師等からの診察を受け、翌日の退院許可が出た。

長男は前日に母親との面会を満喫した為、この日は父親に目一杯甘えて過ごしたとのことだった。

私と次男も穏やかに2人きりの時間を楽しみ、翌日まで何事もありませんように、と心の中で祈った。

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長男が倒れて22日目。

夜中に急変の電話がくるのでは

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話32

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話32

長男が倒れて19日目。

前日に脳波計測を行い、炎症があった脳の右側はまだ痙攣と思われる怪しい波が計測された。

しかし、現在服薬している薬で症状は抑えられている為、影響が出たら服薬量を戻すという前提のもと、予定通りこの日の朝の服薬分から減薬を開始した。

前日、保育園の園長先生からお見舞いを頂いた。

そこには絵本が大好きな長男のためにたくさんの絵本と、長男のクラスのみんなと担任の先生からのメッ

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話31

遡ること10日程前。

長男が目覚め、まだ寝たきりで食事は取れないけれど、少し会話が出来るようになったころのこと。

PICUのベッドサイドで長男に絵本を読んでいると、主治医の先生が来てくれた。

「お母さん、ちょっとお話したいことがありまして。」

少し改まった雰囲気で会話が始まった。

「実は、ADEM(急性散在性脳脊髄炎の略称)を含めたいくつかの疾患で、再発しやすい抗体というものが発見されて

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話30

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話30

息子が倒れて16日目。

この日、やっと主治医の先生に会うことが出来た。

この頃になると私も夫も仕事に復帰しており、一日おきで面会に行っていた。

加えて面会時間は限られており、外来や急患対応もある主治医の先生と会って会話が出来るタイミングはあまり多くは無かった。

それでも、先生は出来る限り時間を取って病棟に顔を出してくれ、長男に声をかけてくれていた。

「長男くんわがままも言わないし、すごく

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話29

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話29

息子が倒れてから15日目。

面会に行くと、理学療法士の先生がきてくれた。

熱は変わらず37度5分と高めだったが、本人は元気そうだった為、病棟外に出る許可を得た。

敷地内に公園のような屋外のリハビリ施設があり、そこで遊びながら動きを見せて欲しいと言われた。

長男は入院して以来初めての外の空気だった。

冬の寒い風が吹き始めた頃だったが、まだ日差しは暖かく、カーディガンと心拍計測器を入れたポシ

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話28

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話28

息子が倒れてから14日目。

この日は最初に夫が面会し、私は次男と病院近くの公園で遊びながら待っていた。

その後交代の連絡を受け、夫とバトンタッチ。

面会に行くと、昨日まで長男が使用していた個室には別の患者さんが居た。

前日に私が帰宅したあと、大部屋へ移動になったらしい。

大部屋は4人部屋で、長男ともう1人、長男より1歳か2歳年上と思われる少年が居た。

よろしくお願いしますと挨拶をして、

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話27

息子が倒れてから13日目。

一般病棟に来てから初めての土曜日だった。

看護師さんの人数も少なく、今まで毎日組まれていたリハビリや検査も無かった。

そんな静かな午前中を過ごした長男は、私が面会に訪れると同時に「寂しい」と訴えた。

長男が倒れてから約2週間。

1週間前の土曜日はやっと目覚めたばかりの長男の様子に気を取られ、病院内の雰囲気を見る余裕は無かった。

この日の病棟内は確かに静かで、

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話19

そこから医師の表情が少しだけピリッとした。

「本人の意識はしっかりしていますが、脳波のほうは痙攣を疑うような動きが頻繁に出ています。

『痙攣と疑われる脳波が出たら、必ず長男くんにも症状が現れる』というわけではありません。

しかし、もしかしたら痙攣なのかもしれない、と疑われる動きがあるときもありました。

まだガンマグロブリンの投与中ですので、このまま快方に向かえば見られなくなっていく可能性も

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話18

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話18

「昨日パパが来たことは覚えてる?」

こくん、と縦に頷いた。

「長男くん、保育園で具合が悪くなって倒れちゃったんだ。そこからずーっと眠ってたんだよ。目が覚めたらここに居たからびっくりしたよね。」

「昨日、長男くんとおしゃべりできて、パパ嬉しくていっぱい泣いてんだよ。」

と言うと、長男は私ををじっとみつめて、

「…ママ、も、ないてた、ね」

ガラガラの掠れた声でゆっくり一文字ずつ話してくれた

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話17

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話17

長男が倒れてから6日目。

この日は、私の両親が来てくれることになっていた。

前日とはまた違う祖父母の登場に、次男は最初から大泣きだった。

けれど、なかなか押しの強い私の両親に戸惑いながらも少しずつ心を開き(開かされ?)、私が面会に向かうころには強張った顔だが抱っこを許す仲になっていた。

今日も私の両親と夫、次男からのメッセージを録音し、絵本と共にカバンに詰めた。

「じゃ、申し訳無いけど面

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息子が急性散在性脳は脊髄炎になって倒れた話16

息子が急性散在性脳は脊髄炎になって倒れた話16

翌日の朝は、義両親の訪問に向けて準備をしたり、次男に声掛けをしたりしながら過ごした。

次男は半年前に義実家を訪れてはいたが、当時は生後半年。

その後は新型コロナウイルスの流行によりどちらの実家にも帰省していなかった。

保育園と自宅以外の場所は近場の公園やお散歩程度。

家族と保育園関係の人以外、長時間一緒に過ごしたことは一度も無い次男。

産まれてから3度目の対面となる義両親へどんな反応をす

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息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話15

息子が急性散在性脳脊髄炎になって倒れた話15

それからすぐに面会時間が終了した。

また来るからね。と約束し、強く抱きしめてPICUを後にした。

今日の反応は意識が回復したとは言えない。

脳波の乱れも改善していないし、手足は動いていたけれど、麻痺や後遺症、薬の副作用の問題だって出てくるのかもしれない。

今までの私なら色々考えては悩んだだろう。

でも、息子は懸命に生きようと足掻いていた。

生きる意志を感じられたのだから、私は信じて支え

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