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三島由紀夫『禁色』の書評をやりました。ラストで意外などんでん返し。

YouTube『百年経っても読まれる小説の書き方』
235、三島由紀夫『禁色』誰も言わない感想と文章の分析。
https://youtu.be/j61wmXNKG_w


この動画の台本を公開。かなり細かく筋の流れを追っています。読んでみてください。

三島由紀夫を理解するために。
『仮面の告白』24歳
『禁色』26歳、1951年
作風は全く変わっていない。
何度読んでも「新しさ」を感じる作品。
今の世にタブーはあるのか?
なんでも一番最初にやる人は偉い。
由紀夫さんはいつも私を励ましてくれる。背中をポンポン叩いてくれる。
龍之介さんは面白がってニヤニヤ見ている。来る時は長く滞在される。
 
本は本屋で買おう。
 
海外に目を向けないと、三島は理解できない。
 
「人間を書く」とはどういうことか? キャラクターが人間として存在しているか? 主要人物よりも脇役に存在感がある。
 
漱石の登場人物は静寂の中に、ひっそりと存在している。
 
 
行動? 正直さ? 美辞麗句に埋まって存在していない。
 
そもそも、人間らしくないキャラクターを書くというのは、小説という芸術において悪いことなのか? 人間らしく「書けない」のか、それとも「書かない」のか?
 
悠一に対する描写がとても多い。一ページにわたることもある。それでも彼は存在していない。他の作家の登場人物と比べても、人物が生きていないことが分かる。
 
悠一は人間として描かれていない。知性が感じられない。姿が美しく、人々を驚かせる、という設定が何度も繰り返す。彼は誰も愛していない。自分以外は。
 
ナルシシスト(行動には現れるが、本人の意思としてはっきり書かれているわけでないのが意外。本人が認識しているとは書いてない)。自己愛性パーソナリティ障害(自分のことを特別な人間であると思っている)。あるいはサイコパス(人を操る行為。罪悪感の欠如。サイコパスという言葉は19世紀から使われている)、ボーダーライン・パーソナリティー(百人の少年と寝るということが自傷行為であるなら)とも思えるけれども、そのような病気があると私は思うけれども(特にサイコパス)、私は精神科医ではないから分からない。いずれにしろ、そのような精神病であると、はっきりとは書かれていない。ステレオタイプに当て嵌めては書いてない。それを示唆するようには書いてない。
三島由紀夫は老作家なのか? 美青年なのか?
ナルシシストである、と表現されている場面は一つだけ。鏑木信孝(ポープ)と初めて寝た時。「自分のことに興味がある」はっきりとは言ってない。
自分のことしか考えない。二人の女性に「愛している」と言ったが、それは本当か? 
 
どうすれば「人間」を描くことができるのか? そもそも描こうとしているのか?
 
三島由紀夫の比喩が好感が持てる。理屈に合っている。
理屈っぽさは凄いが、美的に書かれているから嫌ではない。
 
美辞麗句は多い。それを抜かして読むと、四時間くらいで読める。
書き方は、1949年『仮面の告白』と全く変わっていない。
 
女性の描き方。解釈が難しい。生きている様でもあるし、そうでないとも言える。分からない。
 
語り手の俊輔に、全く魅力を感じなかった。
 
最後にどんでん返しがあるので、最後まで観てください。
 
 
1902年 交響曲第5番 グスタフ・マーラー
 
1912年 小説『ベニスに死す』トーマス・マン
 
1953年 小説『禁色』
 
1971年 映画『ベニスに死す』ルキーノ・ヴィスコンティ
 
トーマス・マン『ベニスに死す』老作曲家が美少年に恋をする
三島由紀夫『禁色』老小説家が美青年に恋をする
 
 
1951年『禁色』発表。28歳の時の作品。
1958年に結婚
 
 
この作品のプロットの終わり辺りに乱れがある。継ぎ足していった感じがする。
特に「第二十七章 間奏曲」からが、第二十六章までと違う雰囲気がある。
間奏曲で、悠一は、全く新しい登場人物である、稔と出会う。そして全く今までのストーリーとは違う展開が始まる。不自然。
 
目に付いた表現・出来事(そのままではなく、変えてある)ページ数は新潮文庫,平成二年発行。
 
「第一章 発端」
檜俊輔。作家。
痛さが快感になる。
女に対する憎悪、蔑視。
妻を猛禽類にたとえる。
女は子供の他に何も生めない。
女に「精神」はない。
 
「第三章 孝行息子の結婚」P66
Gayの大多数は結婚して父親になる。
P97
初めての少年を、振るだろうという予感。
バー、ルドン。悠一の美しさが伝説のように囁かれる。P142
「第八章 感性の密林」P146
俊輔が初めて悠一に嫉妬する。P176
「第十一章 家常茶飯」かじょうさはん=日常茶飯P213
妻が妊娠。妻といるのが苦痛。
俊輔が若返る。作品がみずみずしくなる。P221
悠一と初めて会った時から俊輔に「思想」が生まれた。P222
俊輔の思う「死」の芸術性。P224
俊輔に恋を打ち明ける若者。P226
十八から二十五歳の若者が貴重であること。P226
俊輔と悠一の会話。美は幸福について考えなくてもいい。?P232
悠一の人間宣言。秘密に疲れた。P233
Gayの男性舞踏家の話。P235
悠一は子供を望んでいない。結婚に対する絶望。P236
「第十二章 Gay Party」
パーティーで知り合いの、鏑木元伯爵、鏑木信孝(ポープ)と出会う。P248
悠一は外人が嫌い。P254
信孝が悠一を誘惑する。有名なシーン。ナルシシストの心を揺さぶる。P263
「第十四章 独立独歩」
悠一は妻を愛している、と思う。P283
俊輔は物事全ての解決を悠一の美に見た。P288
俊輔は悠一に恋をしていることを悟る。P289
俊輔は恋を打ち明けたいと思う。P318
悠一は鏑木(かぶらぎ)夫人のことを好きになる。
悠一は女を幸せにできないならせめて不幸にしてやろうと思う。P324
鏑木夫人の夫と悠一の現場を目撃。P338
鏑木夫人から悠一へ恋文。P362
悠一は夫人への愛を強く感じる。P364
悠一は鏑木伯爵へ別れを切り出す。P394
信孝は悠一に追い縋る。P397
俊輔に創作意欲が戻る。P400
俊輔と恭子の悠一をめぐる対決。P444
「第二十三章 熟れゆく日々」P447
悠一の子供が生まれる。P474
悠一が夜遊びに戻る。P487
しかし、夜遊びにも飽きてくるP490
男同士の愛は肉欲というより、形而上学的な欲求だと、悠一は思う。P490
悠一は会った青年を邪険に扱う。P495
悠一は自分を美しいと思わないようにしていた。P497
Gayの結婚式に遭遇。P498
俊輔と川田の会話。P520
俊輔が付き合ったこともない悠一に別れを切り出す。P527
俊輔がパビナールの飲む。鎮痛剤。精神的な痛み。P530
「第二十七章 間奏曲」
悠一が稔と出会う。お互いの美しさにおどろく。P536
「第二十八章 青天の霹靂」
悠一の母親が、変態性欲という言葉を使う。教養のない証拠。P570
母親は、日清戦争、日露戦争を経験。気品のある道徳。P571
悠一は密告書を破り捨てる。P575
悠一は妻を愛していると発言。P576
悠一は自分が女も好きだと証明する気である。P577
稔との決別。P584
稔の義父が悠一に一目惚れをする。P585
どんな悪徳よりも偽善に勝るものはない。P587 これは悠一の言葉ではない。
悠一は妻に愛想を尽かされる。P626
悠一が川田に意地悪をする。P631
「第三十二章 檜俊輔による檜俊輔論」P648
俊輔の美に対する考え。P678
悠一は俊輔が悠一の理想像を見ていて、自分を見ていたわけではないと悟る。P678
 
 
 
俊輔は語り手だったが、悠一との関係はなかった。しかし最後には彼を思って死んだ。この設定が理解できない。なぜGayではない俊輔を語り手にしたのか。その意味は?
三島は小説家俊輔を自分と重ねていたのか、それとも悠一を自分と重ねていたのか。俊輔は六十歳。悠一は大学生。三島は二十六歳。
 
『禁色』1951年に発表された。文学史の中の位置づけ。
 
アメリカ文学
F・スコット・フィッツジェラルド(1896年 - 1940年)
『グレート・ギャツビー』(1925年)
 
ヘンリー・ミラー( 1891年 - 1980年)
『北回帰線』(1934年)
 
ジョン・スタインベック(1902年 - 1968年)
『怒りの葡萄』(1939年)
 
J・D・サリンジャー(1919年 - 2010年)
『ライ麦畑でつかまえて』(1951年)
 
アーネスト・ヘミングウェイ(1899年 - 1961年)
『老人と海』(1952年)
 
ウラジーミル・ナボコフ(1899年 - 1977年)
『ロリータ』(1955年)
 
トルーマン・カポーティ(1924年 - 1984年)
『ティファニーで朝食を』(1958年)
 
 
その他
 
ジャン=ポール・サルトル (1905年-1980年)
『嘔吐』(1938年)
 
ジャン・ジュネ (1910年-1986年)
『花のノートルダム』(1942年) 戯曲も発表
 
ルベール・カミュ (1914年-1960年)
『異邦人』(1942年)
 
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ (1900年-1944年)
『星の王子さま』(1943年)
 
ジャン・コクトー(1889年- 1963年)劇作家、映画監督
『双頭の鷲』(1946年)
 
 
三島の登場人物は全て彼の言葉で語られる。悠一は存在していない。しかし、よく考えると誰も存在していない。
 
しかし、それが言葉の芸術として、悪いことなのか?
 
悠一。
ラストで本性を現し、急にどの登場人物より人間らしくなる。現実に存在を始める。非常に鮮やかに。


「三島由紀夫特集」再生リスト。21Videos https://www.youtube.com/playlist?list=PL4gh5DQAT3fIx2dHFnG5NvA3E2GDHBGGE


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