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「どうせ自分なんて」という人に足りない「自己受容」の感覚

前回、自己肯定感について書いたところ、たくさんの質問をもらいました。
自己肯定感という言葉は使い古されている割に、誤解が多い概念だと思います。

そこで今回は、自己肯定感の土台となる自己受容について書きたいと思います。
自己受容ができていないと、生きていくうえでさまざまな困難に直面したり、生きづらさを感じたりし、時には人生そのものが閉じてしまうこともあります。

なお自己肯定感には諸説ありますので、今回は私自身が納得できた説を紹介します。


自己肯定感と自己受容

自己肯定感は6つの「感」で構成されている

自己肯定感にはいくつか種類があると言われており、心理カウンセラーの中島輝さんによると、自己肯定感は6つの「感」で構成されるそうです。

①自尊感情:自分には価値があると思える感覚/木の「根」のようなもの
②自己受容感:ありのままの自分を認める感覚/木の「幹」のようなもの
③自己効力感:自分にはできると思える感覚/木の「枝」のようなもの
④自己信頼感:自分を信じられる感覚/木の「葉」のようなもの
⑤自己決定感:自分で決定できるという感覚/木の「花」のようなもの
⑥自己有用感:自分は何かの役に立っているという感覚/木の「実」のようなもの

https://hoiku.mynavi.jp/contents/hoikurashi/special/serialization/lifestyle/10317/

①と②は、自分が自分であることそのものを肯定する「be」の感覚
③〜⑥は、自分が何かをすることで自分を肯定する「do」の感覚といえるかもしれません。そして、自己効力感が高くなれば自己信頼感も増す、自己有用感も増す……というように互いに関係しあっています。

生きていくなかでとりわけ大切なのは、
自尊感情
自己受容感
という「be」の感覚です。

自己受容とは、「自分にはいいところも悪いところもあり、全部丸ごと、悪いところも含めて、自分であることを認める」ことであり、自己肯定感の核でもあります。

この感覚は、わかる人にはわかるのですが、わからない人にはとてもわかりづらい。よく自己肯定感というと「悪いところも含めて自分が好き!みたいな勘違いをされることが多いのですが、そのようなポジティブなアクションというよりは、「どんな自分も自分であることを『許す』」という感覚に近いかもしれません。

自己肯定感という言葉からイメージされるよりも、もっとパッシブなイメージです。

しかしこの感覚がある人というのは、「大丈夫、なんとかなる」という適切な(行き過ぎではない)ポジティブさと、「自分には存在する価値がある」っというまっとうなプライドを持っていますし、「自分には至らないところもあるけれど、ここからもっと良くして行こう」という、“心のバネ”がしっかりしていることが多いです。

自己受容はどうしたら生まれるのか?

自己受容がどのように育まれるかは、諸説あります。
しかしながら、多くのカウンセラーが指摘しているのは、幼少期の親との関わりが重要ということ。

ベストセラー「子育てハッピーアドバイス」の著者である明橋大二先生は、このように書いています。

0歳から3歳というのは、「心の土台」を育てるために、最も大事な時期なんです。「自分には生きている価値がある」「必要な存在だ」と感じる自己肯定感は、普段の生活のなかでパパ・ママにお世話してもらったり、褒めてもらったり、気持ちに共感してもらったりする中で育まれ、おおむね3歳までに築かれます。

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小さい子どもは、自他の区別があまりついていません。
パパ・ママ=世界=自分
という感じで、他者を認識することはできても、自分とは違う考えを持った別の存在だとは理解できていないのです。

そういう状態の中で、世界のすべてであるパパやママから「えらいねえ」「かわいいねえ」と言われることは、自分の存在が世界から肯定されるということ。

そのため、3歳までの親との関わりが非常に大切だと言われています。

ところが、小さい頃に親から
「ダメな子ねぇ」
「お前はかわいくないなぁ」
「○○ちゃんのほうがずっとすごい」
「(何か失敗した後に)だから言ったでしょ!」

という言葉を浴びせられると、自己受容が妨げられるのです。
もちろん、虐待、暴力、ネグレクトなどは論外です。

自己肯定感の土台には自己受容がある

3歳で脳が発達して自他の区別がつくようになると、
自己効力感
自己信頼感
自己決定感
自己有用感
が育ってくるのですが、それはあくまでも自己受容がベースになります。

※それでは、3歳になるまでに親以外の存在(保育士など)から酷い扱いを受けたら自己受容は妨げるのか?というと、妨げられるのですが、親が「大丈夫だよ」「つらかったね」と受容してあげられる環境であれば大きな問題にはなりません。

また、小学校以降にいじめなど自分の存在を否定されるような体験をしても、自己受容ができている子どもは心の中に“バネ”があるので、凹みっぱなしにはならないようです。

自己受容がうまくできなかった人は、ほとんどが親との問題を抱えています。
それほどに、親の存在は大きいのです。
毒親に関する本が売れるわけですよね。

自己肯定感(自己受容)は、自分ではよくわからないことが多い

前回の記事を書いたとき、「その人に自己肯定感があるかどうか、あなたにはわからないでしょう。見ただけで判断するなんて当てにならない」と言われました。

確かにわからない。しかし、その人にもわからないと思っています。

③自己効力感、④自己信頼感、⑤自己決定感、⑥自己有用感というdoの感覚は本人も自覚しやすいのですが、①自尊感情、②自己受容感のbeの感覚は、かなり無意識に近いのではないでしょうか。

少なくとも、本当に自己受容ができていない人は「私、自己肯定感低くて○○できないんだよね〜」みたいなことは言いません(言えません)。まあ言う人もいるかもしれないけど、その発言をしたときの顔は歪んでいるはず。

意外と、「この人自分のこと大切にしてないな」「こいつ自分のこと好きじゃないな」という他人の目のほうが正しいように感じています。

自己受容は無意識の領域に近い。だから怖いのです。
「自分には価値がない」「自分には無理」「どうせこんな自分だから……」が無意識に刷り込まれているので、放っておくとどんどん人生が閉じていってしまう。

自分の土台がよわよわなので、「親がこう言うから」「夫(妻)がこう言うから」「○○が喜んでくれるから」「みんなに嫌われないから」と、他人に「軸」を置いて物事を決定し、その結果都合のいい人間になってしまうこともあります。

次回、自己肯定感が低い人はダメ男や愛国ビジネスにハマりやすいということを書きたいと思います。





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