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  • ツー・ステップ・ソウル:Two Step Soul

    '80年代後半~'90年代半ばにロンドンを中心に流行した音楽、ツー・ステップ・ソウルについての解説とレコード・ガイドです。

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2 STEP SOUL:ツー・ステップ・ソウルとは何か

 2019年の始めごろ、ジェフリー(ジェフ・ペリー)'79年のアルバム"Jeffree"に惹かれました。このアルバムは10年以上前に一度買ったことがあったのですが、当時は「マーヴィン・ゲイのフォロワーだな」と思った程度ですぐに手放してしまったもの。それが何故いま良く聴こえたのかは自分でも不明なのですが、ちょうどレオン・ウェアの"Musical Massage"、ジョニー・ブリストルの"Bristol's Creme"、マーヴィン・ゲイの"I Want You"、クインシー・ジ

    • ダブ界のアンサング・ヒーロー、ポール・"グルーチョ"・スマイクル

       ダブは本来裏方であるはずのミキサー/エンジニアが制作して、そのミキサーの名前がプライマリー・アーティストとして前面に出ていることが多い音楽。代表的な存在としてはオリジネイターのキング・タビー、その弟子筋にあたるプリンス・ジャミーやサイエンティスト、フィリップ・スマート、スタジオの専属エンジニアから発展してダブも制作するようになったシルヴァン・モリスやエロール・トンプソン、またダブ・ミックス以前にプロデューサーとしての手腕が光るリー・ペリーなどが挙げられるでしょう。  またジ

      • コンパス・ポイント・スタジオ~アイランド・レコード周辺(3)

          コンパス・ポイント特集の最後はアルバム1枚のみこちらで録音しているアーティストが中心です。 (「CPAS」は「コンパス・ポイント・オール・スターズ」の略です。詳しくはパート1をごらんください。) <バリー・レイノルズ>    '49年、英ランカシャー州ボルトン出身のギタリスト。'70年代初頭にパシフィック・ドリフトやブラッドウィン・ピッグ等のバンドに参加するもヒットには繋がらず、数年間はアメリカ~メキシコを放浪。'70年代半ばにロンドンに戻りビリー・オーシャンのバッ

        • コンパス・ポイント・スタジオ~アイランド・レコード周辺(2)

            コンパス・ポイントの特集2回めはスライ&ロビーと彼らと関わりの深かったアーティストが中心です。 (「CPAS」は「コンパス・ポイント・オール・スターズ」の略です。詳しくはパート1をごらんください。) <ブラック・ウフル>    '72年ごろにキングストンで男性3人組のヴォーカル・グループとして結成。幾度かのメンバー・チェンジを経て、'77年ごろにはリード・シンガーのマイケル・ローズ、バック・ヴォーカルに女性のピューマ・ジョーンズと唯一のオリジナル・メンバーであるダッ

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        2 STEP SOUL:ツー・ステップ・ソウルとは何か

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        • コンパス・ポイント・スタジオ~アイランド・レコード周辺(3)

        • コンパス・ポイント・スタジオ~アイランド・レコード周辺(2)

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        • ツー・ステップ・ソウル:Two Step Soul
          21本

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          コンパス・ポイント・スタジオ~アイランド・レコード周辺(1)

             以前も書きましたが、ソウル~ファンクが好きでその後レゲエ/ダブを聴くようになった、またその前にはニュー・ウェイヴ系の音楽も聴いていた私のような人間には忘れ難いレコーディング・スタジオがあります。それが今回のテーマであるコンパス・ポイント・スタジオです。  コンパス・ポイントはアイランド・レコード社長のクリス・ブラックウェルがバハマのナッソーに1977年に設立したスタジオ。ロケーションをナッソーにした理由に関して、ブラックウェルは「ナッソーにはこれといったキャラクターが

          コンパス・ポイント・スタジオ~アイランド・レコード周辺(1)

          サンプリング・ソースとしてのダンスホール・レゲエ

           私はダブが好きで、自分の中で熱いジャンル(例えばツー・ステップ・ソウルのように)が特に無い時期はなんとなくダブのCDやLPを買ってしまうのがここ数年の癖になっています。  基本はジャマイカ産のルーツ・ダブですが、ときどきそれだけでは物足りなくなって非ジャマイカ/非レゲエ系のダブ物に手を出すこともしばしば。もともとロックやソウルを聴いていたのでそちらのほうがむしろ馴染みがあるというか…'80年代にニュー・ウェイヴ系の音楽を聴いていたのがダブ好きになる要因になったのかもしれませ

          サンプリング・ソースとしてのダンスホール・レゲエ

          MP3化するレコードを考える

             最近アナログ・レコードの音源をMP3化するのに使うケーブルを買おうと思って、手持ちのレコードから最初に何をMP3化するかを考えてみました。    目的はデータ化して携帯プレイヤーに入れることなので、既にCD化されているもの、特に自分でもCDを持っているものは対象外。CD化されていなくてもデータDL版なら販売されているものは手間や音質面から劣るのでこれらも除外。2010年以降の新譜はフィジカルが出ていなくても音源DLが可能なものが殆どなので、最初から対象外になってしまいま

          MP3化するレコードを考える

          2 STEP SOUL 21:ランダム編3

          1年半あまり続けてきた2ステップの記事も今回で終わりです。本当に紹介したいと思っていた盤は最初のほうで取り上げてしまったので、終盤はあまり意外性のないものに終始してしまった感もあり… インスタント・ファンク"Get Down With The Philly Jump"(1976) 2ステップの曲:"So Glad I'm The One"   ニュー・ジャージー出身のミュージック・マシーンというグループが母体だが、プロデューサーのバニー・シグラーに認められてフィラデルフィ

          2 STEP SOUL 21:ランダム編3

          ファンキー・キングとキミとボクと大親分

             2ステップの記事はまだあと1回あるのですが、全く進んでいないので、間に小ネタを挟みます。最近買った邦楽の7インチ2種プラスαです。 中村ゆうじ Feat. Funky King "Funky King Part I" ファンキー・キングは'80年代から活動するお笑い芸人/俳優の中村ゆうじ(現:中村有志)が'80年代後半に音楽活動を行っていた時に名乗っていたキャラクター。もともとはANB系で放送されていた深夜番組「AVガーデン」内で始まったもののようです。  レーベル

          ファンキー・キングとキミとボクと大親分

          2 STEP SOUL 20:ランダム編2

           ランダム編のつづきですが、今まで「これは取りあげないでいいかな」と寝かしておいたものが中心なので、どうも地味なラインナップですね。ラストのCD3種のほうが意外な気がする...  2ステップに関する記事は今回も含めてあと2回で終わりです。 ドラマティックス"Shake It Well"(1977) 2ステップの曲:"Ocean Of Thoughts And Dreams"  '60年代前半からデトロイトで活躍、ヴォルト・レーベルと契約した'70年代以降は高水準の作品を安

          2 STEP SOUL 20:ランダム編2

          2 STEP SOUL 19:AOR編

           以前ボビー・コールドウェルやバーブラ・ストライサンドのアルバムを紹介しましたが、ツー・ステップの曲を調べていると意外なほど目に入るのが日本では「AOR」にカテゴライズされている曲。アメリカのソウル・ミュージックをベースにしている点、ソフト&メロウな感触が重視されている点などはラヴァーズ・ロックに相通ずるものがあるのかもしれません。  実際には、AORばかりかかるツー・ステップのパーティがあったわけではなく、ソウル系の曲が中心の中にサラリと織り交ぜられる程度だったのだろうと思

          2 STEP SOUL 19:AOR編

          2 STEP SOUL 18:こんなものいらない?編

           前回は割と高めのレコード中心だったので、今回はそのカウンターとして格安で手に入れた(基準としては1,000円以下だった)ものを紹介していきます。ただ、最近はコロナの影響で海外買い付けがほとんど出来ない→結果として中古アナログの相場がやや高めに推移しているようにも感じます。 キンズマン・ダズ"Kinsman Dazz"(1976) 2ステップの曲:"I Might As Well Forget About Lovin' You" 'オハイオでベル・テレファンクというジャ

          2 STEP SOUL 18:こんなものいらない?編

          2 STEP SOUL 17:ランダム編

          パート13までのレコード紹介は2020年の秋ごろには原稿を書き上げてあったので、それ以降に入手した盤をランダムに紹介していきます。 リロイ・ハトソン"Love Oh Love"(1973) 2ステップの曲:"So In Love With You"  インプレッションズから独立後初のアルバムで、ハトソンのソロ作中最もオーソドックスなソウル感覚漂う内容。ひんやりしたストリングスとシャープなリズム・ギターが絡む"So In Love~"が心地よい。個人的にもA面4曲は以前から

          2 STEP SOUL 17:ランダム編

          2 STEP SOUL 16:番外編 ブルース・パーティについて

             資料として買ってみたロイド・ブラッドリーの著書"Sounds Like London"を読んで、あることに気付いたので今回はそれについて訂正を少し...今回は2ステップに関して直接の話はほとんどありません。 Lloyd Bradley"Sounds Like London"(Serpent's Tail 2013)    副題にもあるように、この本は1930年ごろから、本が出版された2010年代の前半までおよそ100年間のロンドンでのブラック・ミュージックの流行の変

          2 STEP SOUL 16:番外編 ブルース・パーティについて

          2 STEP SOUL 15:番外編 UKソウルへの影響

            2ステップが流行した'80年代後半~'90年代前半ごろのイギリスの音楽には、その影響を直接/間接的に受けたもの、また逆に影響を与えたと思われる人たちも居ました。こうして並べてみるとメジャー・レーベルと契約出来たか否かで知名度に極端な差が出てしまうことも感じます。 スティーヴ・マイヤーズ"Loves Gonna Last"(1986)   ラヴァーズ・ロックのレコードを多数リリースしていたプレッシャー・レコーディングからデビューした男性シンガー。いち早くジェフリーの"L

          2 STEP SOUL 15:番外編 UKソウルへの影響

          2 STEP SOUL 14:コンピレイション編

          以前も書いたように、ツー・ステップ・ソウルの曲は一枚のアルバムに一曲しか入っていないことがほとんど。ならばツー・ステップの曲だけを集めた編集盤を作ればよいのではないかと考えるのは自然ですが、それほど大きな流行にはなっていないジャンルゆえ全編ツー・ステップのみで固められたものが意外と少ない…比較的揃った内容のものを集めてみました。 Various Artists:The Wants List (17 Soulful Rare Grooves)(2003)   ツー・ステップ

          2 STEP SOUL 14:コンピレイション編