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ツー・ステップ・ソウル:Two Step Soul

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'80年代後半~'90年代半ばにロンドンを中心に流行した音楽、ツー・ステップ・ソウルについての解説とレコード・ガイドです。
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記事一覧

2 STEP SOUL 21:ランダム編3

1年半あまり続けてきた2ステップの記事も今回で終わりです。本当に紹介したいと思っていた盤は最初のほうで取り上げてしまったので、終盤はあまり意外性のないものに終始してしまった感もあり… インスタント・ファンク"Get Down With The Philly Jump"(1976) 2ステップの曲:"So Glad I'm The One"   ニュー・ジャージー出身のミュージック・マシーンというグループが母体だが、プロデューサーのバニー・シグラーに認められてフィラデルフィ

2 STEP SOUL 20:ランダム編2

 ランダム編のつづきですが、今まで「これは取りあげないでいいかな」と寝かしておいたものが中心なので、どうも地味なラインナップですね。ラストのCD3種のほうが意外な気がする...  2ステップに関する記事は今回も含めてあと2回で終わりです。 ドラマティックス"Shake It Well"(1977) 2ステップの曲:"Ocean Of Thoughts And Dreams"  '60年代前半からデトロイトで活躍、ヴォルト・レーベルと契約した'70年代以降は高水準の作品を安

2 STEP SOUL 19:AOR編

 以前ボビー・コールドウェルやバーブラ・ストライサンドのアルバムを紹介しましたが、ツー・ステップの曲を調べていると意外なほど目に入るのが日本では「AOR」にカテゴライズされている曲。アメリカのソウル・ミュージックをベースにしている点、ソフト&メロウな感触が重視されている点などはラヴァーズ・ロックに相通ずるものがあるのかもしれません。  実際には、AORばかりかかるツー・ステップのパーティがあったわけではなく、ソウル系の曲が中心の中にサラリと織り交ぜられる程度だったのだろうと思

2 STEP SOUL 18:こんなものいらない?編

 前回は割と高めのレコード中心だったので、今回はそのカウンターとして格安で手に入れた(基準としては1,000円以下だった)ものを紹介していきます。ただ、最近はコロナの影響で海外買い付けがほとんど出来ない→結果として中古アナログの相場がやや高めに推移しているようにも感じます。 キンズマン・ダズ"Kinsman Dazz"(1976) 2ステップの曲:"I Might As Well Forget About Lovin' You" 'オハイオでベル・テレファンクというジャ

2 STEP SOUL 17:ランダム編

パート13までのレコード紹介は2020年の秋ごろには原稿を書き上げてあったので、それ以降に入手した盤をランダムに紹介していきます。 リロイ・ハトソン"Love Oh Love"(1973) 2ステップの曲:"So In Love With You"  インプレッションズから独立後初のアルバムで、ハトソンのソロ作中最もオーソドックスなソウル感覚漂う内容。ひんやりしたストリングスとシャープなリズム・ギターが絡む"So In Love~"が心地よい。個人的にもA面4曲は以前から

2 STEP SOUL 14:コンピレイション編

以前も書いたように、ツー・ステップ・ソウルの曲は一枚のアルバムに一曲しか入っていないことがほとんど。ならばツー・ステップの曲だけを集めた編集盤を作ればよいのではないかと考えるのは自然ですが、それほど大きな流行にはなっていないジャンルゆえ全編ツー・ステップのみで固められたものが意外と少ない…比較的揃った内容のものを集めてみました。 Various Artists:The Wants List (17 Soulful Rare Grooves)(2003)   ツー・ステップ

2 STEP SOUL:ツー・ステップ・ソウルとは何か

 2019年の始めごろ、ジェフリー(ジェフ・ペリー)'79年のアルバム"Jeffree"に惹かれました。このアルバムは10年以上前に一度買ったことがあったのですが、当時は「マーヴィン・ゲイのフォロワーだな」と思った程度ですぐに手放してしまったもの。それが何故いま良く聴こえたのかは自分でも不明なのですが、ちょうどレオン・ウェアの"Musical Massage"、ジョニー・ブリストルの"Bristol's Creme"、マーヴィン・ゲイの"I Want You"、クインシー・ジ

2 STEP SOUL 1:ベーシック編

ツー・ステップ・ソウルの代表的な10曲。 アルバム中心に紹介していますが、ツー・ステップの曲は一枚のアルバム中に一曲だけしか入っていないことが殆どなので予めご了承ください。 スターヴュー"Upward Bound"(1980)  '80年前後にシカゴで活動していた8人組。アルバムはこれ1枚のみだが、"Body Fusion"はツー・ステップの代名詞的な一曲として常に高い人気を誇る。一聴では派手なストリングスに耳がいきがちだが、ツー・ステップ的に重要なのはミディアム・テ

2 STEP SOUL 2:シカゴ編

 シカゴ・ソウルと言うと連想されるのはカーティス・メイフィールドだが、2ステップで人気なのはその後輩にあたるリロイ・ハトソン。自身のソロ・アルバムをはじめ、プロデュース作でも前回あげたアーノルド・ブレア、ナチュラル・フォー等が良く廻されていた。その他にもカール・デイヴィス周辺やロウウェル・サイモン等、独特の軽みを持つ都会派サウンドが好まれた。 リロイ・ハトソン"Feel The Spirit"(1976)  カーティスの後任としてインプレッションズのリード・シンガーを数年

2 STEP SOUL 3:フィラデルフィア編

 プロデュース・チームのギャンブル=ハフを中心に、'70年代後半に絶大な人気を誇ったフィリー・ソウル。ストリングスを多用したメロウなサウンドはラヴァーズ・ロックや2ステップにも影響大。  毎回「~は2ステップの人気曲。」で締めるのもしんどくなってきたので、今回からアルバム・タイトルの後に「2ステップの曲:"〇〇"」と書くことにしました。 ジョーンズ・ガールズ"The Jones Girls"(1979) 2ステップの曲:"This Feelings Killing Me"

2 STEP SOUL 4:ロサンゼルス編

 '70年代前半にモータウンやブルー・ノートが拠点をこちらに移したこともあって、この頃から急に増えてくるのがLA周辺でのレコーディング。音的にそれほど共通項はないが、無理やり挙げるならいい意味での軽さを持った音が多いところか。 サイド・エフェクト"Portraits"(1981) 2ステップの曲:"Midnight Lover","I Can't Play"  ウェイン・ヘンダーソンのアット・ホーム・プロダクションズ一派で、自らもプロデューサーとして活動したオウギー・ジョ

2 STEP SOUL 5:デトロイト編

 モータウンがLAに移転してしまってからは翳りも見え(今回のラインナップも録音はLAのものが多くなってしまった)るが、独自の黒光りする音の美学を持っているのがデトロイトのアーティストたち。 L.J.レイノルズ"L. J. Reynolds"(1981) 2ステップの曲:"Key To The World"  元ドラマティックス、デトロイトを代表する名シンガー。今作はドラマズから独立して初のアルバムだが、"Key To~"はそんなプレッシャーも感じさせないリラックスした雰囲

2 STEP SOUL 6:南部編

 数の関係でひとくくりにしてしまったが、マイアミ、メンフィス、ニュー・オーリンズと都市毎に全く違う音なのがアメリカ南部。範囲が広すぎた… オーパス・セヴン"Thoughts"(1979) 2ステップの曲:"I Love You"  ノース・カロライナ州ウィンストン・セーラム出身の7人組ファンク・バンド(録音はアトランタ)。リリース当時はディスコ・ファンクな"Bussle"がヒットしたようだが、ステッパーに人気なのは切ないメロディがしみるバラードの"I Love You"。

2 STEP SOUL 7:ニューヨーク編

意外と数を揃えるのに手間取ったのがこちら。日本では'80年代以降のソウルと言うと圧倒的にニュー・ヨーク・サウンドの人気が高いと思うのだが、適度なユルさも求められる2ステップにはNYの音はタイトすぎるのかもしれない。 リフレクションズ"Love On Delivery"(1975) 2ステップの曲:"She’s My Summer Breeze" メルバ・ムーアのライヴでのバック・コーラスを務めた後、キャピトルと契約してアルバムを発表した4人組。ゴスペル・ルーツ丸出しのゴ