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2 STEP SOUL 21:ランダム編3

1年半あまり続けてきた2ステップの記事も今回で終わりです。本当に紹介したいと思っていた盤は最初のほうで取り上げてしまったので、終盤はあまり意外性のないものに終始してしまった感もあり…


インスタント・ファンク"Get Down With The Philly Jump"(1976)
2ステップの曲:"So Glad I'm The One"

  ニュー・ジャージー出身のミュージック・マシーンというグループが母体だが、プロデューサーのバニー・シグラーに認められてフィラデルフィアに移住、幾つかのかメジャー・アーティストのバッキングを経てデビューしたグループ。デビュー作になる今作では正式メンバーはドラム/ベース/ギターの3名のみで、ヴォーカルはコーラスのリフレイン中心の曲も多い。"So Glad I'm The One"はE,W&Fを意識したと思しきメロウなミディアム・ナンバー。


メイジャー・ハリス"My Way"(1975)
2ステップの曲:"Love Won't Let Me Wait"

  ニュー・ジャージー出身だが高校時代にフィラデルフィアに移住し、幾つかのグループでの活動の後デルフォニックスに加入し、彼らの後期のアルバムに貢献。その後ソロに転じてアトランティックと契約したシンガー。デルフォニックスのようなスウィート系とは趣が異なり、ややハスキーで男性的な声質。R&Bチャートで1位になった"Love Won't Let Me Wait"は女性の喘ぎ声(バーバラ・イングラムが演じているらしい…)がムードを出すマーヴィン・ゲイ"I Want You"タイプのエロティック・ソウル。UKのクール・ノーツの女性シンガー2人もお気に入りだとか。


ダニー"Introducing Danny Johnson"(1978)
2ステップの曲:"I Might As Well Forget Loving You"

  ユージン・レコードがソロで活動していた'70年代半ばに、シャイ・ライツでリードをつとめたシンガー。ナチュラルなファルセットを生かしたミディアム~スローが中心で、"I Might As Well Forget Loving You"も女性コーラス隊やブラスを従えたムーディなバラード。


マンハッタンズ"Black Tie"(1981)
2ステップの曲:"Let Your Love Come Down"

  '60年代にNY周辺で活動を開始、'70年代に入ると新たに加入したジェラルド・アルストンのあたたかくひたむきなヴォーカルで人気を博したグループ。バラードを一番のウリにしていた人たちだが、"Let Your Love Come Down"は循環するリズム・トラックが印象的なアップ・テンポのナンバー。


ボー・カークランド&ルース・デイヴィス"Bo & Ruth"(1976)
2ステップの曲:"You're Gonna Get Next To Me"

  マイク・ジェイムズ・カークランド名義のアルバムでも知られるボー氏と、アイク・ターナーのアイケッツのメンバーだったというルース・デイヴィスのデュオ・アルバム。 LAのマイナー・レーベルからリリースされたものだが、軽快なアレンジと二人の掛け合いヴォーカルが心地よい"You're Gonna Get~"はイギリスではメジャーのEMIがライセンス・リリースしてトップ20入りするヒットになった。


オコナー"Come Alive"(1981)
2ステップの曲:"Too Sweet To Lose"

  '78年にスタックスからアルバムを出していたサークル・オー・ファイアというグループのメンバーだったキーボード奏者。'81年作ということもありディスコ系のナンバーも多いのだが、"Too Sweet To Lose"はエレピのメロウなリフレインが印象的なミディアム。何故か2010年代以降にサンプリングねたとして多用された。


ローズ・バンクス"Rose"(1976)
2ステップの曲:" You're Much Too Beautiful For Words"

  スライ・ストーンの妹で、ファミリー・ストーンのメンバーとして活動してきた女性シンガー。唯一のソロはスライ風なファンキーな曲も含まれるが、女性的な柔らかなタッチが前に出ていて聴きやすい。"You're Much Too Beautiful~"はクレジットなしのドラマー(エド・グリーンあたり?)のプレイに魅かれる軽やかなミディアム。



ネイチャーズ・ディバイン"In The Beginning"(1979)
2ステップの曲:"I Just Can't Control Myself"

  マイケル・ストークスがプロデュースしたLAの10人組ファンク・バンド。アルバムはこれ1枚のみだが、演奏/リードの女性シンガーともに実力は高く安定している。"I Just Can't Control Myself"はステッパー好みのアレンジが心地よいミディアム・ナンバー。


ブラック・アイス"I Judge The Funk"(1979)
2ステップの曲:"Postcard Love Affair"

  詳細不明だが、西海岸のグループらしい5人組。ジャケやタイトルがファンク・バンドをイメージさせ、実際アルバム・タイトル曲はファンク・ナンバーなのだが、彼らの持ち味はむしろスウィートなバラードで、前作からもシカゴ・ギャングスターズのカヴァーが話題になった。今作からはファルセットと語りがきまった"Postcard Love Affair"が該当曲。


バーナード・エドワーズ"Glad To Be Here"(1983)
2ステップの曲:"You Don't Know Me"

  シックのメンバーで、プロデューサーとしてもソウル~ディスコ~ロックを通じて多数を手掛けたベーシスト。今作は唯一のソロ・アルバムで、盟友ナイル・ロジャースをはじめとしたNYの名手が多数参加している。"You Don't Know Me"はサラッと演っているように聴こえるミディアム・ナンバーだが、ヨギ・ホートンのドラミングの気持ちよさには感服。


シェリル・リン"It's Gonna Be Right"(1985)
2ステップの曲:"Fade To Black"

  日本でもディスコ・クラシック"Got To Be Real"でおなじみのLA出身のシンガー。通算6枚目になる今作はジャム&ルイスのプロデュース作も含む打ち込み中心の内容たが、アップ・テンポの曲で抜群のノリの良さを見せる実力派なので全く問題なし。UKで人気だった"Fade To Black"はフュージョン畑出身のトッド・コクランがプロデュースしたステディなナンバー。


レジーナ・ベル"All By Myself"(1987)
2ステップの曲:"Please Be Mine"

  ニュー・ジャージー出身で、'86年にマンハッタンズのアルバムに客演した際の熱唱が話題となって翌年にソロ・デビューしたシンガー。デビュー当時はコロンビア版アニタ・ベイカーを狙っていたようなスタッフの人選だが、ロンドン周辺では"Please Be Mine"の人気が突出して高く、ブルース・パーティでもプレイされていた。この後ディズニー映画の主題歌を唄って日本でも人気を獲得。


エモーションズ"Sincerely"(1984)
2ステップの曲:"You're The One"

  エモーションズは"2ステップ率"が高いグループで、パート8で取り上げた"Come Into Our World"以外にも、'77年の"Rejoice"(曲は"A Feeling Is")、'78年の"Sunbeam"(同"Ain't No Doubt About It")にも2ステップの曲がある。メジャーを離れ、E,W&Fの面々とも切れた今作からも"You're The One"がロンドン周辺では愛好された。


ダズ・バンド"Joystick"(1983)
2ステップの曲:"Laughin' At You"

  パート16でデビュー作を紹介済みのオハイオ出身のファンク・バンド。モータウン後期はチャート・ヒット狙いが過ぎてヘンに下世話な曲が多いが、"Laughin' At You"は唯一の白人メンバーのスティーヴ・コックスが作曲した、上品なスティーヴィ・ワンダー風の曲。


ボビー・グローヴァー"Bad Bobby Glover"(1984)
2ステップの曲:"It's My Turn"

  ザップのメンバーで、トーク・ボックスよりオーソドックスな唄ものナンバー中心の時にしばしばリードをとっていた男性シンガー。唯一のソロ・アルバムになる今作もロジャーの全面プロデュース、ザップ・ファミリー総出の内容で、まんまザップ、それでいてボビーのストレートで熱いヴォーカルを生かした好アルバムになっている。"It's My Turn"は前身のヒューマン・ボディに通じるヴォーカル・グループ的なメロウな曲。


P-ファンク・オール・スターズ"Urban Dancefloor Guerillas"(1983)
2ステップの曲:"One Of Those Summers"

P-ファンク系にも2ステップの曲があった(?)。やや停滞気味だったクリントン周辺が'80年代に攻勢に出たアルバムで、スライ・ストーン他の豪華メンツの勢ぞろいも話題になったもの。音もゴリゴリのP-ファンク・ナンバー中心だが、"One Of Those Summers"は中では異色のノスタルジックな唄もので、ビーチ・ミュージック的な爽やかさも感じる。


オハイオ・プレイヤーズ"Skin Tight"(1974)
2ステップの曲:"Heaven Must Be Like This"

 オハイオ・ファンクを代表する名グループ。本作はメジャー移籍第一弾になるアルバムで、イントロから繰り返されるリフが印象的なアルバム・タイトル曲がヒットして全米レベルの人気グループになった。"Heaven Must Be Like This"は一転してメロウなバラードだが、演奏力の高さを感じる見せ場の多い音作りに感心する。


ギャップ・バンド"Gap Band III"(1980)
2ステップの曲:"Yearning For Your Love"

 オクラホマ州タルサ出身のウィルソン三兄弟を中心にしたファンク・バンド。重すぎずキャッチーなファンク/ディスコ・ナンバーと、チャーリー・ウィルソンのスティーヴィ・ワンダー風ヴォーカルが持ち味のグループだが、"Yearning For Your Love"はAOR的なブリーズ感もあるバラード。彼らからの影響を公言するテディ・ライリーもガイのセカンドでカヴァーしていた。


スターポイント"Starpoint"(1980)
2ステップの曲:"You're My Sunny Day"

 メリーランド州アナポリスでフィリップス4兄弟を中心に結成、その後ガール・グループで唄っていたレニー・ディグスをスカウトしてリード・シンガーに据えたディスコ/ブギー系グループ。デビュー作ながら既に完成されたポップなダンス・ナンバーが中心だが、"You're My Sunny Day"はステッパー好みなアレンジの落ち着いたミディアム・ナンバー。


メイズfeat.フランキー・ビヴァリー"Maze Featuring Frankie Beverly"(1977)
2ステップの曲:"While I'm Alone"

フィラデルフィアで'70年代初頭にロウ・ソウルというグループ名で結成、その後サンフランシスコに移ってマーヴィン・ゲイのライヴの前座に起用され、メイズと改名してキャピトルと契約したグループ。'60年代から活躍するリードのフランキーをはじめメンバーも実力者揃いで、打ち込みを控えた上品なファンキー・サウンドがながく愛好されている。"While I'm Alone"はフュージョン的なくつろいだ演奏とあたたかいコーラスに和めるナンバー。


ステイプルズ(ステイプル・シンガーズ)"Pass It On"(1976)
2ステップの曲:"Love Me, Love Me, Love Me"

 '50年代にゴスペル・グループとして活動を開始、その後ソウル畑に転向して'70年代にはスタックスと契約、メイヴィス・ステイプルスのディープなヴォーカルが評論家からも高く評価される名グループ。ひとつ前のアルバムのサントラ"Let's Do It Again"につづいてカーティス・メイフィールドがプロデュースしたアルバムで、"Love Me, Love Me, Love Me"も"Let's Do It Again"のタイトル曲の続編的な曲調にゴスペル・コーラスを加えたような音。


グウェン・マクレー"Melody Of Life"(1979)
2ステップの曲:"All This Love That I'm Givin'"

 '60年代末から夫のジョージ・マクレーとデュオとして活動、その後ジョージとの離婚を経てソロに転向するマイアミの女性シンガー。同郷のベティ・ライトにプロデュースを委ねたアルバムで、バラエティに富んだ曲調でグウェンのパワフルなヴォーカルを盛り立てている。"All This Love That I'm Givin'"はUKのレア・グルーヴ・シーンで人気が高く、'88年にシングルが再発された際にはUKチャートでトップ75入りした。


ステファニー・ミルズ"Tantalizingly Hot"(1982)
2ステップの曲:"Keep Away Girls"

 NYブルックリン出身、十代の頃からブロードウェイ・ミュージカルで活躍し、その後ソロに転じたシンガー。'80年前後にはジェイムズ・ムトゥーメ/レジー・ルーカスのプロデュースによるディスコ系の曲で多数のヒットを出す。'82年の本作でもムトゥーメ/ルーカス組が音作りの中心だが、ディスコ色は薄めで洗練されたNYサウンドを感じる。"Keep Away Girls"はイントロから繰り返されるギター/ベースのリフレインが印象的なミディアム。



ナンシー・ウィルソン"Life, Love & Harmony"(1979)
2ステップの曲:"Sunshine"

  オハイオ出身で'60年代初頭から活動するジャズ・ヴォーカリスト。'70年代後半のこの頃はソウル/R&B寄りの音で唄っていて、今作のプロデューサーのラリー・ファーロウも本来はソウル畑の人。"Sunshine"は循環するベース・ラインと要所に入るシャープなリズム・ギターが印象的なステッパー。


ヒューバート・ロウズ"Family"(1980)
2ステップの曲:"Family"

  パート9で"Land Of Passion"を紹介済のジャズ・フルート奏者。こちらはその翌年のアルバムで、日本でもおなじみの一枚。2ステップで人気の曲も日本と同様に妹のデブラ・ロウズがヴォーカルをとるアルバム・タイトル曲。スラップ・ベースとリズミックなブラス隊が印象的な演奏をバックに、デブラの屈託ないヴォーカルが心地よい。


ジェラルディン・ハント"It Doesn't Only Happen At Night"(1981)
2ステップの曲:"Undercover Lover"

ミズーリ州セントルイス出身の女性シンガー。'60年代後半にデビュし、'70年代前半ごろまではオーソドックスなソウル系の曲を唄っていたが、'70年代後半にカナダへ移住して現地のプロデューサーのトニー・グリーンと組んだディスコ系の曲を次々リリース。特に"Can't Fake The Feeling"の人気が高く、2021年には同曲のカール・コックスによるリ・ワーク・シングルもリリースされている。"Undercover Lover"はこの時期にリリースされたシングルB面オンリーの曲で、カシーフの作曲&アレンジによるもの。ディスコ路線とは異なるくつろいだミディアム・テンポの曲で、ステッパーとして人気だった。


スー・アン"Blue Velvet"(1988)
2ステップの曲:"I'll Give You Love"

  '80年前後からミネアポリスとLAを行き来しつつ独自の活動を続けてきた女性シンガー。セカンド・ソロになる本作は同郷のジェシー・ジョンソンを軸に、ロバート・ブルッキンスやジェイムズ・ムトゥーメら複数のプロデューサーを起用してバラエティを持たせたつくり。"I'll Give You Love"はアトランティック・スターのルイス兄弟の作/プロデュースによるバラードだが、うねるDX7のベースと穏やかな女性ヴォーカルの組み合わせがステッパー好みな一曲。


ジーン・ライス"Gene Rice"(1992)
2ステップの曲:"Come Little Closer"

  バイ・オール・ミーンズのスタン・シェパード&ジミー・ヴァーナーが面倒を見ていた男性シンガー。ソロ・デビュー以前にはフラミンゴスやハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ、ゴスペル系ティモシー・ライト等と関わりがあったらしい…声質からしてテディ・ペンタグラスに通ずる男性的なヴォーカル・ナンバーが似合うタイプで、"Come Little Closer"はライヴでの熱唱が目に浮かぶ生演奏ぽいアレンジが効果的な一曲。



   まだ入手出来ていない盤もシングル中心に数十枚あるのですが、あまり見かけないものばかりになってきたのでこの辺で…
 なんとなく紹介し漏れてしまったものは写真一枚でまとめて…

   次回以降は何を書こうか考え中ですが、単発のものを続ける感じになると思います。しばらくはソウル系から離れたいなあ。

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