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2 STEP SOUL 18:こんなものいらない?編

 前回は割と高めのレコード中心だったので、今回はそのカウンターとして格安で手に入れた(基準としては1,000円以下だった)ものを紹介していきます。ただ、最近はコロナの影響で海外買い付けがほとんど出来ない→結果として中古アナログの相場がやや高めに推移しているようにも感じます。


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キンズマン・ダズ"Kinsman Dazz"(1976)
2ステップの曲:"I Might As Well Forget About Lovin' You"

'オハイオでベル・テレファンクというジャズ=フュージョン・グループとして結成、'80年代にはダズ・バンドと改名して"Let It Whip"等のヒットを放つファンク・バンド。本作が初のアルバムで、まだE,W&F辺りの影響から自分たちの音を模索中という感じだが、演奏力は高く安定している。"I Might As Well~"はファルセットもキマった爽やかなバラード。


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チャック・シゼル"If I Had The Chance"(1982)
2ステップの曲:"Love Is Missing From Our Lives"

 オクラホマ州タルサ出身で、カレッジ在学中から「コーラス・ライン」等のミュージカルで活躍していたところをラーキン・アーノルドに認められてアリスタと契約したシンガー。今作はジョン・バーンズのプロデュースによるセカンド・アルバムで、線の細い声質ながらLAの腕利きミュージシャンをバックに安定したヴォーカルを聴かせる。 "Love Is Missing~"は2ステップ系クラブでも人気の高かったストレートなバラード。


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グッディー"Call Me Goodie"(1982)
2ステップの曲:"You And I"

 ギャップ・バンドのトータル・エクスペリエンス・レコードからデビューしたシンガー/キーボード奏者。ウィルソン三兄弟やロニー・シモンズ他ギャップ・バンド人脈総出でバックアップしており、ダンス・ナンバー中心の内容だが、"You And I"は例外的にテンポを落とした激アーバンなメロウ・チューン。この曲は2ステップ以前から愛聴していました。


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ベン・E・キング"Let Me Live In Your Life"(1976)
2ステップの曲:"Spoiled"

 おなじみ「スタンド・バイ・ミー」で知られる人だが、その曲が大きすぎて既に過去の人扱いになっていたこの頃のアルバムも悪くない。"Spoiled"はJ.R.ベイリーの作になるメンフィス録音の曲で、循環するベース・ラインとアープ・シンセの粘っこい音色が印象的なステッパー。


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ブッカー・T"I Want You"(1981)
2ステップの曲:"I Want You"

 こちらも"Green Onions"等'60年代のオルガン・インスト・ヒットで有名な人だが、M.G.ズと別れた'70~'80年代は主にヴォーカリストとして活動していた。今作はマイケル・ストークスのプロデュースによるアルバムで、タイトル曲はゆったりとしたグルーヴが心地よい曲。ブギー/ディスコ畑でも人気がある。


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ロバート・ウィンターズ&フォール"L-O-V-E"(1982)
2ステップの曲:"Do It Any Way You Want"

 "Magic Man"のヒットで知られるデトロイト出身の男性シンガー。中古屋では格安で叩き売られている1枚だが、"Do It Any Way You Want"は人気の高いステッパー。オーソドックスなソウルの良さを噛みしめさせてくれる。


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グラディス・ナイト&ザ・ピップス"Visions"(1983)
2ステップの曲:"You're Number One (In My Book)"

 アトランタ出身、日本でも「夜汽車よ! ジョージアへ」等のヒットで名高いポップかつディープな名シンガー。今作はレオン・シルヴァースやジャム&ルイスにプロデュースを委ねて新しめの音に対応を図った内容で、それでも安定した内容に仕上がっている。"You're Number One~"はサラッと聴き流してしまいそうなナンバーだが、このループ状のミディアム・テンポがステッパーには好まれた。


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アニタ・ベイカー"The Songstress"(1983)
2ステップの曲:"Feel The Need"

 「ラプチャー」でブレイクする直前、チャプター8から独立後初のソロ・アルバム。LAの腕利きミュージシャンを取りそろえた生音中心のジャジーな音作りは既に完成されている。"Feel The Need"はネイサン・イーストが入れるベースのアクセントが印象的なミディアム・ナンバー。


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ジーン・カーン"You're A Part Of Me"(1988)
2ステップの曲:"Early Morning Love"

 パート3でサード・アルバムを紹介済みのフィラデルフィアの女性シンガー。今作もフィリーでの録音だが、打ち込み/シンセ系の曲が半数を占め、フィリーの音も変わったと実感させられる。"Early Morning Love"はシンコペイトしたミディアム・テンポのビートとDX7によるベースがまさにレゲエ的で、ロンドンでは局地的に人気だった曲。

2011年、ロンドンでのライブの模様。イギリスではシングル・カットすらされていない曲なのに、観客は終始合唱しています!


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シャーリー・ジョーンズ"Always In The Mood"(1986)
2ステップの曲:"Do You Get Enough Love?"

 ジョーンズ・ガールズ解散後に発表されたソロ・アルバム。"Do You Get Enough Love?"はUSのR&Bチャートでも1位を獲得したヒット曲で、フィリーぽさにクワイエット・ストーム的なアーバン感覚がミックスされた洒落た曲。


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パティ・オースチン"Havana Candy"(1977)
2ステップの曲:"That's Enough For Me"

 クインシー・ジョーンズにフック・アップされる以前、デイヴ・グルーシン&ラリー・ローゼンが面倒を見ていた頃のセカンド・アルバム。既に抜群のヴォーカル・コントロールでジャズとポップス~R&Bの境界を行きかう音を聴かせる。"That's Enough For Me"はこの後セルジオ・メンデスがカヴァーしたヴァージョンも2ステップ界では人気になった。


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マリーナ・ショウ"Acting Up"(1978)
2ステップの曲:"I'm Back For More"

 NY出身、カデット・レーベルに2枚のアルバムを残した後女性シンガーとしてはブルー・ノートで初の契約をして人気を獲得した人物。当時からジャズ・オンリーでなくR&B~ポップ的な曲も多数唄っていたが、この頃は完全にポップR&B路線。"I'm Back For More(オリジナルはレオズ・サンシップ)"はアル・ジョンソンより2年早く取り上げていた。


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トウルーズ"Export"(1977)
2ステップの曲:"What Would My Mama Say"

 '75年にモントリオールで結成された白人女性3人組のディスコ系ヴォーカル・グループ。英語/フランス語のどちらでも唄えるバイリンガルがウリで、今作は全編フランス語だったファーストを英語で歌い直したもの。ディスコ系でカナダの人たちなのに録音はアメリカ南部、バックを務めるのはマッスル・ショールズのベテラン・ミュージシャン、という謎のこだわりを持った制作で、けっこう太い声にやや引いてしまう…"What Would My Mama Say"はその中では比較的落ち着いたミディアムで、個人的には酒焼けしたジョーンズ・ガールズという印象です…


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マザーズ・ファイネスト"Mother Factor"(1978)
2ステップの曲:"Love Changes"

 シカゴで男女デュオとして活動していたグレン・マードックとジョイス・ケネディにツアー中に知り合ったミュージシャンが加わり発展したグループ。ソウルというより「ブラック・ロック」「ファンク・ロック」的な音楽性で知られる人たちだが、今作は中ではかなり黒っぽい内容でルーファスやスライ&ザ・ファミリー・ストーンを連想させる。"Love Changes"は後にカシーフ&メリサ・モーガンがカヴァーしてヒットさせた。


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ルーファス"Party 'Til You're Broke"(1981)
2ステップの曲:"We Got The Way"

 '60年代に活躍したアメリカン・ブリードを前身にして'70年にシカゴで結成されたグループ。チャカ・カーン抜きだとどこかジェントルで、「吐くまでパーティ!」というアルバム・タイトルとは裏腹にAOR的なスタイリッシュさを感じる。"We Got The Way"は後に関連グループのプラッシュ(Plush)も取り上げる洒脱なミディアム・ナンバー。


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ジョージ・ベンソン"Give Me The Night"(1980)
2ステップの曲:"Midnight Love Affair"

 こちらは日本でもヒットした有名作。クインシー・ジョーンズのクウェスト・レーベルの第一弾リリースでもある。ステッパー人気なのはアルバム・タイトル曲や"Love X Love"のようなヒット曲ではなく、B面終わりに近い"Midnight Love Affair"。こんな地味な存在の曲を目ざとく見つけてくるところに感心。


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ビル・サマーズ&サマーズ・ヒート"Call It What You Want"(1981)
2ステップの曲:"I Believe In You"

 ビル・サマーズはハービー・ハンコック関連ほか多数のレコーディングに参加しているパーカッショニスト。サマーズ・ヒートの面々もクレイトーヴェンやレイ・オビエド等この後ソロでも活躍する曲者揃いで、ジャズ~フュージョン系というより演奏力めちゃ高いファンク・バンドという印象。"I Believe In You"は女性シンガーのロリ・ハムがいい味を出しているミディアムで、ラテン・リズムも心地よい。


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オブライアン"Doin' Alright"(1982)
2ステップの曲:"Doin' Alright"

 LAの教会で唄っているところをプロデューサーのロン・カーシー夫妻に発掘されてデビューしたシンガー/キーボード奏者。アップ・テンポの曲はプリンスの出来損ないみたいなヘナチョコ・ファンク、スローはベタベタなAOR路線でけっこうキビシイが、アルバム・タイトル曲はループするトラックにやるせないマイナー調メロディが印象的な仕上がり。


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アイヴィ"Ivy II"(1986)
2ステップの曲:"Tell Me"

 しょぼい手書きのジャケットから中古屋では全く人気のないアルバムだが、彼らの前身グループはプレミア盤になっているシカゴ・ギャングスターズ~ランプルスティルズスキン(Rumple-Stilts-Skin)。なかなかの実力派で、打ち込み中心の時代になってもしっかりしたヴォーカルを聴かせる。"Tell Me"は女性の語りから始まるイントロが人気の高かった曲で、後にメジャーのアリスタが契約して再リリースされた。


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ヴァーノン・バーチ"Playing Hard To Get"(1982)
2ステップの曲:"Lovely Lady"

 ワシンシンDC出身で、十代の頃ギタリストとしてデルフォニックスやバー・ケイズのレコーディングを経験、その後メジャーと契約したシンガー。"Get Up"のようなディスコ系のイメージが強いが、キャリアの長さから多彩な音楽性を持つ人。このアルバムからのシングルはザップ風ヴォコーダー・ファンクの"Do It To Me"だが、2ステップで人気だった"Lovely Lady"はブラス隊の明るいリフが印象的なハッピーなダンス・チューン。


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ザ・ジェイド"Mr.Joy"(1987)
2ステップの曲:"Mr. Joy"

 アメリカではシングルを3枚リリースしているのみ、アルバムはドイツのタイムレス・レーベルからイラスト・ジャケの今作のみリリースの謎の男性シンガー。どうやらシカゴの人のようだが、中~高域の声質がマーヴィン・ゲイにそっくりな、イギリスでいかにも好まれそうなタイプ。バックの音は打ち込み中心のチープなものだが、まずまずいい味を出している。


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ウォーネル・ジョーンズ"Wornell Jones"(1979)
2ステップの曲:"Must Have Been Love"

 ワシントンDC出身のベーシスト/シンガー。'70年代にヤング・セナターズ(Young Senators)というファンク・バンドで活動した後、元Eストリート・バンドのニルス・ロフグレンのグループに加入し、その後しばらくはニルスやレオン・ラッセル関連等ロック畑で活動。今作はその時期に発表されたソロ・アルバムで、レオン周辺のけっこう豪華な面子が参加している。メランコリックなメロディが印象的な"Must Have Been Love"はジャジー・Bやコリン・カーティスらがヘヴィ・プレイしていたUKだけでのレア・グルーヴ・クラシック。現在は東京在住でJ-POP系のレコーディングに多数参加しています。


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V.A."Soul Sauce Sampler Vol.1"(1992)
2ステップの曲:リンゼイ(Linsey)"Power To The People"

ラルフ・ティー&リチャード・サーリング率いるUKのソウル・レーベル、エクスパンジョンからリリースされたコンピレイションの収録曲から、レーベルの独自リリース曲を4曲収めた12インチ。リンゼイはセッション・ミュージシャンとして多数のレコーディングに参加しているキーボード奏者のウェイン・リンゼイと、その奥方のシンガー、リン・フィッドモントによるデュオ。"Power To The People"(ジョン・レノンの曲とは無関係)はエレピのしっとりとした音色とリンの優しいヴォーカルに心温まるナンバー。

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