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2 STEP SOUL 20:ランダム編2

 ランダム編のつづきですが、今まで「これは取りあげないでいいかな」と寝かしておいたものが中心なので、どうも地味なラインナップですね。ラストのCD3種のほうが意外な気がする...
 2ステップに関する記事は今回も含めてあと2回で終わりです。

ドラマティックス"Shake It Well"(1977)
2ステップの曲:"Ocean Of Thoughts And Dreams"

 '60年代前半からデトロイトで活躍、ヴォルト・レーベルと契約した'70年代以降は高水準の作品を安定して発表した名ヴォーカル・グループ。今作は育ての親ドン・デイヴィスのプロデュースながら録音はLAで、演奏陣もデトロイトと西海岸の人が混在している。"Ocean Of Thoughts~"は彼らにしては抑えた曲調で、フィリー的な穏やかさも感じるミディアム・ナンバー。

ヘヴン&アース"Heaven And Earth"(1978)
2ステップの曲:"Guess Who's Back In Town"

ドゥワイト&ジェイムズのデュークス兄弟を中心に、'70年代後半にシカゴで活躍した4人組ヴォーカル・グループ。スターヴューも手掛けたクラレンス・ジョンソンがプロデュースに関わっているが、"Guess Who's Back In Town"は実力の高さを感じるオーソドックスなヴォーカルもの。


ジーン・テレル"I Had To Fall In Love"(1978)
2ステップの曲:"How Can You (Live Without Love)"

 ダイアナ・ロス脱退後のシュープリームスでリードをつとめた女性シンガー。唯一のソロ・アルバムになる今作は全9曲中5曲でグレイ&ハンクスの作品を取り上げていて、特にイギリスで人気が高い。多くの人が唄った名曲"Rising Cost Of Love"も良いが、2ステップで支持されたのは"How Can You (Live Without Love)"。


グウィン"Guinn"(1986)
2ステップの曲:"Give Everything You Got For Love"

 フィラデルフィアで活動していたグウィン6兄妹に、セッション・シンガーのロリ・フルトンがリードとして加わったグループ。後にヴァネッサ・ウィリアムズが取り上げてヒットざせる"Dreamin'"のオリジナルも含むアルバムだが、"Give Everything You Got For Love"はデバージ辺りに通ずる清廉なラヴ・ソング。


マクファデン&ホワイトヘッド"McFadden & Whitehead"(1979)
2ステップの曲:"I've Been Pushed Aside"

  ライター/プロデユーサーとしてフィリー・ソウル畑で多数のヒット曲を持つ男性デュオ。フィリー産ダンス・ナンバーの定番"Ain't No Stoppin' Us Now"を含む有名作だが、"I've Been Pushed Aside"はベース・ラインやストリングス/ホーンのリフがいかにもステッパー好みなミディアム・ナンバー。


アイズリー・ブラザース"Grand Slam"(1981)
2ステップの曲:"I Once Had Your Love (And I Can't Let Go)"

 '50年代後半から近年まで息の長い活動を続けるヴェテラン・ヴォーカル・グループ。バックの演奏を担当する弟3人が加わった'70年代前半ごろはファンク的な曲も多かったが、ロナルド・アイズリーの甘くこってりしたヴォーカルを前面に出したバラードが定番に落ち着いた頃のアルバムで、山下達郎氏も最高傑作と絶賛する名作。"I Once Had Your Love"では抑えたビート、エレピのメロウなトラックをバックに濃厚なファルセットを聴かせる。'80年の"Go All The Way"に収録の"Here We Go Again"も2ステップ認定されています。


ミーターズ"New Directions"(1977)
2ステップの曲:"Be My Lady"
 

 ニュー・オーリンズを代表する名グループだが、今作はタイトルからもわかるように本来の路線から軌道修正を図った内容で、ミュー・オーリンズ色の薄い曲も数曲含まれる。"Be My Lady"はそのうちの一曲で、ファーザーズ・チルドレン"Hollywood Dreaming"辺りに通ずる柔らかなアレンジが印象的なミディアム・ナンバー。



ルーサー・ヴァンドロス"The Night I Fell In Love"(1985)
2ステップの曲:"My Sensitivity (Gets In The Way)"
  

  '80年代NYサウンドの権化ルーサー先生にも2ステップの曲が…"My Sensitivity"はジャジー・Bも「早朝のブルース・パーティで『そろそろ帰ろうか』と思っている人の足も止める曲」だとお気に入りの一曲。ヨギ・ホートン&マーカス・ミラーのシャープかつ余裕たっぷりのリズム・セクションはやはりすばらしい。


ロニー・リストン・スミス"Dreams Of Tomorrow"(1983)
2ステップの曲:"A Lonely Way To Be"

  '60年代後半からローランド・カークやファロア・サンダースの周辺で活動していたジャズ系キーボード奏者。'70年代半ばにRCAからリリースした数枚のアルバムがジャズ・ファンク・クラシックとして根強い人気だが、コロンビアに移籍した'70年代後半以降はアコースティック・ピアノの静謐な響きを生かしたソフトな作風へ移行。"A Lonely Way To Be"は弟のドナルド・スミスのヴォーカルとプロフェット5によるシンセ・ベースが心地よい。


  ハービー・ハンコック"Monster"(1980)
2ステップの曲:"Making Love"

  日本でもおなじみのシカゴ出身のキーボード奏者。今作はフレディ・ワシントン、シーラ・E、ウォーターズ兄妹ら西海岸のミュージシャンを揃えてポップなソウル路線を狙ったアルバム。"Making Love"はカーティス・メイフィールド"Tripping Out"タイプのリズム・トラックに、グレッグ・ウォーカー(サンタナ)がやわらかなヴォーカルを聴かせるナンバー。


ピーシズ・オブ・ア・ドリーム"Pieces Of A Dream"(1981)
2ステップの曲:"Warm Weather"

 フィラデルフィアのクラブで演奏していたところをグローヴァー・ワシントン・Jr.に発掘されたピアノ・トリオ。初期のアルバムでは何曲かソウル/ファンク的な曲を入れるのを常としていて、R&B系のチャートでも常連だった。"Warm Weather"はゲスト参加のバーバラ・ウォーカーの気だるくメロウなヴォーカルと、熱気を音で表したようなデクスター・ヴァンセルのシンセが印象的。イギリスでは今も夏場のラジオの定番だとか。



スティング"Pleasure"(1976)
2ステップの曲:"Do It In The Shower"

 ポリスの人とは関係ない、ディスコ系プロデューサーのジェイ・エリスによるプロジェクト。明るいアップ・テンポの曲が中心だが、"Do It In The Shower"はラヴ・アンリミテッド辺りに通ずる穏やかなミディアム。


チャス・ジャンケル"Questionnaire"(1981)
2ステップの曲:"Boy"

 イアン・デューリーの相棒としても知られ、「愛のコリーダ」の作者でもあるイギリスのキーボード奏者。ソロ・アルバムでは品の良いファンキー・サウンドを聴かせてくれるが、"Boy"はスローなファンクに女性目線のファルセット・ヴォーカルが妖しい雰囲気を醸し出す曲。


オズボーン&ジャイルス"Stranger In The Night"(1985)
2ステップの曲:"I'll Make You A Offer"

 元スウィッチ~ディーコで、'80年代後半以降はプロデューサーとして活躍するアタラ・ゼイン・ジャイルスと、元LTDのビリー・オズボーン(ジェフリーの弟)の二人によるこの1枚のみのプロジェクト。アルバム全体としては大味なエイティーズ・サウンドといった感じだが、"I'll Make You A Offer"はシンセ・ベースとファルセットのヴォーカルの絡みが心地よいミディアム・ナンバー。


リンダ・エヴァンス"You Control Me"(1979)
2ステップの曲:"You Got Me Dreaming"

 デトロイト出身、この後すぐゴスペル畑に転向する女性シンガー。TOTOの面々やE,W&Fホーンズをバックに安定感あるディスコ・サウンドを聴かせるが、"You Got Me Dreaming"は同時期のエモーションズをお手本にしたと思しきくつろいだミディアム。


フォスター・シルヴァース"Foster Sylvers"(1973)
2ステップの曲:"Misdemeanor"

 西海岸版マイケル・ジャクソンとして人気を博した当時12歳の少年シンガー(兄弟グループのシルヴァースに加入するのはこの後)。ジェリー・ピータースの初期のプロテュース作でもある。"Misdemeanor"はレア・グルーヴのブーム初期から人気の高い曲で、シンプルなブレイクがループ状に繰り返される中、子供なのに妙に的確なヴォーカルが癖になる一曲。



L.A.ボッパーズ"L.A. Boppers"(1980)
2ステップの曲:"You Did It Good"
  

 サイド・エフェクトのバック・バンドの面々がオウギー・ジョンソンの口利きで独立したグループとして活動するようになったもの。ファンキーな曲を演っても粘らずあくまで爽やかな感触はアット・ホーム・プロダクションズ一派に共通の印象。"You Did It Good"はイントロから繰り返されるチャイムのような音が印象的なハッピーなナンバーで、ロンドンでも人気だった。



ハイ・リズム"On The Loose"(1976)
2ステップの曲:"On The Loose"

 '70~'80年代にハイ・レーベルのヒット曲、アル・グリーンやアン・ピーブルス等のレコードでバックをつとめたホッジズ兄弟やハワード・グライムスのグループ。バックメンの時の渋く抑えた感覚と違い、根っから明るくユニゾン・ヴォーカルで盛り上がる感じはメンバーの人柄を感じさせる。アルバム・タイトル曲はゆったりしたファンキー系のトラックに、とぼけた調子のヴォーカルがイイ味を出しているユーモラスなナンバー。


ボビー・ウォマック"Roads Of Life"(1979)
2ステップの曲:"How Could You Break My Heart"

 ファミりー・グループ、ヴァレンティノスのメンバーとして'50~'60年代にかけて活動、その後ソロに転向してユナイテッド・アーティスツ・レーベルに数々の名作を残したディープなシンガー。本作はこの後しばらく行動を共にするパトリック・モートンが初めてプロデュースしたアルバムで、パトリックのアレンジのおかげかUA時代よりモダンで明るい印象を受ける。"How Could You Break My Heart"は印象的なリフはキーボードやコーラス隊に任せて、自身はシャウトや合いの手で引き締めているような曲。


シャーリー・ブラウン"For The Real Feeling"(1979)
2ステップの曲:"Love Starved"

 セントルイスで地道に活動していたところをアルバート・キングに見い出され、スタックスと契約したところ不倫ソング"Woman To Woman"が大ヒットした女性シンガー。本作は'79年のサード・アルバムで、時代もあってかこてこてのサザン・ソウルよりもだいぶモダンな音作りになっている。"Love Starved"はホーンやストリングスも加わったゴージャスな演奏を従えて、アレサ・フランクリン風のヴォーカルを聴かせる女性主導のラヴ・ソング。



Z.Z.ヒル"Down Home"(1982)
2ステップの曲:"Cheatin' In The Next Room"

 テキサスからLAに出てきて'60年代から活動、モダンなサザン・ソウル・サウンドで人気を博した男性シンガー。今作はメジャーのコロンビアからマラコへと移籍して2枚目のアルバムで、停滞気味だったサザン・ソウル界から久々のヒットを出して話題になったもの。まだ粗製乱造化する以前のマラコ・サウンドで、""Cheatin' In The Next Room"もシンプルだが洒落たアレンジ、体言止めで強くアクセントをつけるヴォーカルに引きつけられる。


ジョニー・テイラー"Best Of The Old And The New"(1984)
2ステップの曲:"Shoot For The Stars"

 サム・クックの後任としてソウル・スターラーズで活動した後ソロに転向、ブルージーな味わいで評論家からも絶賛されるシンガー。今作はパトリック・モートンのビヴァリー・グレン・レーベルに在籍していた時の音源を集めたもので、ジョニーのキャリア中でも特にモダンで洗練されたバックで唄っている。ジェフリー・オズボーン作の"Shoot For The Stars"もブルージーというよりダンディな大人のラヴ・ソングといった感じのゴージャスなミディアム。



ナインス・クリエイション"Mellow Music"(写真は再発盤です)(1982)
2ステップの曲:"Mellow Music"

 ブレイク入りのスロー・ファンク"Bubble Gum"で知られるカリフォルニアの白黒混成グループ。今作は'82年にインディからリリースしたシングル・オンリー曲で、オリジナルは5ケタ超えのレア盤らしい…スラップ・ベースが派手にアクセントをつける中、E,W&F風の抑えたコーラスとホーンズが流れる、タイトル通りメロウな曲。


アート・ウィルソン"I Know We Can Make It"(1978)
2ステップの曲:"I Know We Can Make It"

 詳細不明だが、ハーヴェイ・メイソンやコン・ファンク・シャン等のレコーディングに関わっている男性シンガー。自身のソロ名義ではシングル2枚しか発表しておらず、他のレコーディングではもっと太い地声で唄っているのだが、"I Know We Can Make It"では優しくソフトな唄いぶりがアーノルド・ブレア似とロンドンでは話題になった。


エイトボール"Lost"(1998)
2ステップの曲:ロドニー・エリス"All The Way"

 M.J.G.とのコンビで地元メンフィスでは絶大な人気を誇った巨漢ラッパー。初のソロになる本作はCD3枚組の豪華仕様で、ディスク3は所属レーベルSuave Houseのアーティストを中心としたサンプラー的オムニバスになっている。ロドニー・エリスはそのうちの一曲(結局彼のアルバムは出なかった)で、R.ケリー風のゆったりしたテンポのトラックに優しいヴォーカルを聴かせる唄ものソウル。



ヘレン・ベイラー"Look A Little Closer"(1991)
2ステップの曲:" Oasis"

 本名のヘレン・ロウ名義でLAでセッション・シンガーとして活動を始め、ゲスト参加したサイド・エフェクトのアルバムでは"Always There"でリードを取って同曲のヒットに貢献、その後ゴスペルに転向した女性シンガー。ゴスペルと言ってもエイブラハム・ラボリエルやルーファスのトニー・メイデンも参加しているコンテンポラリーな音で、言われなければ普通のR&Bと変わらない。"Oasis"は打ち込みビートにメロウなシンセ&サックス、ヘレンの穏やかなヴォーカルがイギリスで人気が高く、エクスパンジョンから12インチでも再発された。


キム・ウォーターズ"Peaceful Journey"(1993)
2ステップの曲:" Late Night Hour"

 メリーランド州出身で、'90年ごろからNY周辺で活動するスムース・ジャズ系サックス奏者。5枚目のアルバムになる本作は'70年代からソウル畑で活躍するキーボード奏者のレイ・チュウのプロデュースで、レイの演奏するキーボード&プログラムしたビートのみをバックにサックスがのるというシンプルな編成。"Late Night Hour"は唯一のヴォーカル・ナンバーで、女性コーラス隊も従えたアーバン感全開のトラックに、マイルス・ジェイが熱いヴォーカルを聴かせる。

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