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2 STEP SOUL 14:コンピレイション編

以前も書いたように、ツー・ステップ・ソウルの曲は一枚のアルバムに一曲しか入っていないことがほとんど。ならばツー・ステップの曲だけを集めた編集盤を作ればよいのではないかと考えるのは自然ですが、それほど大きな流行にはなっていないジャンルゆえ全編ツー・ステップのみで固められたものが意外と少ない…比較的揃った内容のものを集めてみました。


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Various Artists:The Wants List (17 Soulful Rare Grooves)(2003)

  ツー・ステップの感覚をいちばん「わかった」選曲を感じるのが4枚出ているこの"The Wants List"のシリーズ。ライナーにも2ステップの曲は明確にその旨が記されています。リタ・ライト、ベニー・ジョンソン、ルー・ラグラン等のレア曲が収録されているのは有難いのですが、いっぽうでマラコ関連も3曲も入っていたり絶妙にあか抜けないところもあり。2018年に11年ぶりのvol.4が出ました。


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Various Artists:Rare (A Rare Collection Of Grooves)(1987)

  レア・グルーヴのブームの割と早い時期からリリースされていたのがBMG/RCA系の音源を集めたこのシリーズ。選曲を担当したのはDJのデヅ・パークス(Dez Parkes)を中心としたT.U.F.エンタープライゼスの面々で、ファンク系のアップ・テンポの曲も含めつつメロウ系の曲も多数選ばれているのが特徴となっています。ジャケ写はvol.1のものを挙げましたが、ツー・ステップ的に重要なのはフューチャーズ、ヴァイブレイションズ、ベニー・ゴルソンの3曲を含むvol.3。それ以外のシリーズもシングル・オンリー曲中心にレアな曲が含まれています。


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Various Artists:2 Steps To Soul Heaven - More 70s And 80s Steppers(2011)

   オフィシャルの編集盤で明確にツー・ステップを謳ったタイトルのものは私が知る限りこれのみ。選曲はイアン・デュウハーストとクレジットされていますがライナーに名のあるラルフ・ティー(評論家)とケヴ・ロバーツ(DJ)も何らかの形で関わっているようです。アーノルド・ブレア他のカートム周辺やジョーンズ・ガールズ等のフィリー系を中心とした選曲も悪くないのですが、インディ・レーベルに限られるという制約があるのかあとひと押し足りない感じなのと、第一弾にあたる"Soul Steppin'"はあまり2ステップがわかってない内容なのが残念です。


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Various Artists:Classic Soul Mastercuts Volume 1 - The Jazzie B Selection(1997)

   ソウルIIソウルのジャジー・B選曲による好内容のコンピレイション。ルーサー・ヴァンドロス、パトリース・ラッシェン等の有名アーティスト多数ながら意外な選曲、それでいて全体の流れは流麗というさすがの内容です。マスターカッツ・レーベルは他の「レア・グルーヴ」や「クラシック・メロウ」のシリーズにもアルバム中数曲は2ステップの曲が含まれているので要注意です。


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Various Artists:Soul Chasers(1993)

 イギリス人ならではのソウル観を呈示してくれる評論家のラルフ・ティーが関わるエクスパンジョン・レーベルのコンピレイション。他のコンピと比べると、'80年代以降の比較的新しめの曲も多数含まれているのが特徴で、さっぱりとしたモダン・ソウル系の印象です。2ステップ系はロバート・ウインタースやサントラのみにしか収録されていなかったシリータ・ライトの曲などが選ばれています。


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Various Artists:Natural High (2-Step Soul, Boogie Fusion & Rare Groove From The Vaults Of Atlantic, Elektra, And Warner Bros. Records 1975-1982)

   WEA(ワーナー/エレクトラ/アトランティック)系の音源を集めたのがこのシリーズ。サブタイトルに「2ステップ」だけでなく「ブギー・フュージョン」「レア・グルーヴ」も含まれるのが曲者で、ちょっとBPM早すぎかなと思ってしまう曲もけっこう含まれています。2ステップの曲はロン・マトロックやサイド・エフェクト、ベン・E・キング等を収録。

 配信オンリーでズバリ「2ステップ・ソウル」と題された編集盤が2種あるのですが、それらはどちらもこの「ナチュラル・ハイ」のシリーズをベースにしたもの。なので今ひとつ納得いかない内容でした…

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Various Artists:Soul Souvenirs - Volume One(1991)

   メジャーのソニーからのリリースながら大して流通しないまますぐ見なくなってしまったコンピレイション。メロウ系、ノーザン、ブギー系とややバラけた内容ですが、ロージー・ゲインズやランディ・ジャクソンのシングル・オンリー曲、キース・バーロウやアル・ジョンソンの収録は2ステップ好きにはナイス。ジム・メッシーナを「ジャズ・ギタリスト」と紹介しているのには「?」でしたけど…


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Various Artists:The Wind Down Zone(1993)

ラルフ・ティーがビナクル傘下に設立されたエレヴェイト・レーベルで選曲を担当したのがこのシリーズ。エクスパンジョンの時よりもメジャー音源中心、'80年代後半以降の打ち込み系の曲をメインにしていて、イギリス的なモダン・ソウルの感覚が理解出来ます。レア曲はトニ・トニ・トニのUK盤12インチのみに収録されたリミックスやポップ・ゴスペル系のヘレン・ベイラー等。


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Various Artists:Capitol Rare (Funky Notes From The West Coast)(1994)

   CEMA(キャピトル/EMI/マンハッタン)系の音源からDJのケヴィン・ビードルが選曲したコンピレイション。リリース当時はファンキーなベン・シドランやジャズ・ボサ系のジャネット・ロウソンを目当てで買った記憶がありますが、2ステップ開眼後の耳で聴き直すと、ナンシー・ウィルソン、メイズ、リフレクションズ、テイスト・オブ・ハニー辺りがしっかり2ステップの曲でした。


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Various Artists:Mo' Steppers(1994)

 モータウンの音源を評論家のマーク・ウェブスターが選曲したもの。タイトルに「ステッパーズ」が入っているものの勘違い度高めというか冒頭2曲やフュージョン系カヴァー・インストの2曲はしんどい…それでもバーバラ・ランドルフの7"オンリー曲、ジェラルド・アルストンのUK盤CDのみのボートラだった曲等レアな曲もそこそこ含まれています。モータウン系ならドイツ盤アナログのみのリリースですがデヅ・パークスが選曲した"Motown Rare Grooves"(Motown – ZL 72642)の方がオススメかも。



…といったところで本編は終わりなのですが、2ステップの流行には実はレコード会社やアーティストの許諾を得ずに勝手に作られた海賊盤-ブートレグのオムニバスが大きな存在でした。

 Discogsで「Midnight Music」「Raw Records」「Rare Touch」「Zig Zag」「Connoisseur」(同名の異レーベルがあることも多いのでご注意)といった名前をレーベル検索してみて下さい。これらのジャケ無しコンピは許諾を得てないうえ、音もレコードを再生したものをそのまま流し込んだだけの粗悪なもの。それ故まったくオススメは出来ないのですが、どんな曲でも勝手に選べるので選曲は最高で、リスト作りには大いに参考になりました。特に5枚組CDボックスの「Rare Groove Story」は、究極の選曲と言ってもいい内容だと思います。現在はDiscogsでも海賊盤の取引は禁じられているので入手もほぼ不可能ですが、曲を調べる/覚えるのには「使える」ものだと思います。

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