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松下幸之助と『経営の技法』#36

 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。

1.3/22の金言
 常に新しい目で物事を見、とらわれない心で新たな発想をしていく。

2.3/22の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。短いので、全文を引用しましょう。
 人間というものは、ともすれば一つの考えにとらわれがちである。特に過去の常識とか通念というものからなかなか離れられないものである。しかし、時代は刻々と移り変わっていく。昨日、是とされたことが、今日もそのまま通用するとは限らない。
 だから、指導者は、過去の常識、固定観念、そのほか何ものにもとらわれることなく、常に新しい目で物事を見ていくように心がけなければならない。そして、そのとらわれない心で次々と新たな発想をしていくところに、進歩も発展もあるのだと思う。

3.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 ここでは、組織が硬直化してしまうことの問題を指摘しています。そして、この硬直化を打破することが経営者の仕事である、と述べています。
 第1に、硬直化の問題は、リスク管理上、経営上、いずれにも悪影響を及ぼす問題である点が指摘されます。
 すなわち、リスク管理上はPDCAが回らない、ということであって、新たなリスクに対応できないだけでなく、従前から蓄積している小さなリスクの累積的な危険を高めることになり、経営上は、リスクを取れないことからチャレンジできず、ビジネスが縮小していくことになるのです。
 第2に、硬直化を打破するのが経営者の仕事とされている点です。経営者こそ、組織が硬直化している危険に気づき、手を打つべきなのです。
 もっとも、会社組織自体が、硬直化しないような、自己再生機能をもつ組織になる必要があります。社風であり、人事考課などの組織やプロセスであり、人材採用やQC活動などの運用です。
 経営者個人の問題に終わらせるのではなく、このように、会社組織の問題として取り込み、活用すべき「言葉」なのです。

4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家と経営者の関係として見た場合、先例だけを踏襲し、チャレンジしようとしない経営者ではなく、会社を常に変革できるような感性、意欲、さらに組織を動かすリーダーシップを有する人材を選び、または、現在の経営者に対し、そうなるように働きかける(株主総会や株主の代理人であるべき社外取締役を通して、のことになります)ことが重要になります。

5.おわりに
 存在それ自体がチャレンジのようなベンチャー企業やスタートアップ企業が注目されている時代です。しっかりした会社だからといって、安心できる状況ではありません。
 松下幸之助氏は、経営者だけの問題であるかのように述べていますが、組織として常にこれを実現できるようにすることも重要です。常に工夫する、ということは、従業員全員の共通した意欲が無ければ、実現できないからです。
 どう思いますか?


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