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松下幸之助と『経営の技法』#111

6/5 喜ばれ感謝されているか

~もし仮に自分の店が閉店した場合、お得意先は残念に思ってくれるだろうか。~

 日々の商売を進めていく上で大事なことはいろいろありますが、その1つとして次のようなことがあげられると思います。それは、今営んでいる自分の店ははたしてどれくらいお得意先のお役に立っているか、どれほど喜ばれ感謝されているかということを、いろいろな角度から絶えず検討し、自問自答してみるということです。
 例えば、もし仮に自分が店をたたんでしまった場合、お得意先が“惜しい店がやめたな”と残念がってくれるかどうか、それだけの商売を自分が今しているかどうかといったことを反省、検討してみてはどうでしょう。そのような検討を絶えず繰り返しつつ商売を営んでいくならば、そこから、“自分のやり方にはまだまだ配慮が足りなかった。お得意先に対してこういうこともしておかなければならなかった”ということが随所に次々と出てくるのではないでしょうか。
(出展:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編刊]/2018年9月)

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 ここでの話は、マーケティングの基本であり、同時に、PDCAの基本でもあります。顧客のアンケートを取ったり、不満の声を経営に活かそうとしたりするのは、現在、当たり前のことでしょう。特に、技術者の発言力が強い会社では、開発サイドの独善的な仮説を検証することがなかなか難しい場合があります。実際、ある自動車会社の営業担当者に昔聞いた話では、開発部門にいたときには、営業の現場がもっと車を売れ、と思ったが、営業部門にいる現在は、開発はもっと売れる車を作れ、と思っている、という認識が現場にあるようです。
 松下幸之助氏の話は、販売店の自営店長に向けた話のようですが、これを会社組織として見た場合には、自動車の営業担当者のコメントにあるような、社内での立場の違いを、そのような違いに終わらせるのではなく、組織としてお互いの問題意識を交流し合い、組織として活かせるようにする組織作りや企業風土作りが重要になってきます。
 つまり、開発部門は営業部門から上がってくる意見(≒顧客の声)を謙虚に聞き、改善や新たな発想のために活かさなければなりません。他方、営業部門も開発部門の意図や考えを十分理解し、顧客にその意図や考えを上手く伝える方法を考える必要があります。
 そして、会社組織としては、これを組織として体系化していくことが必要なのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家である株主と経営者の関係で見た場合、経営者自身の謙虚さだけでなく、これを企業文化として全従業員に浸透させ、さらに、これを組織化し、継続的な対応を可能にするような仕組みづくりや段取り力も必要になってきます。
 松下幸之助氏も、このような負託に応えるために、様々なメッセージを発信しているのです。

3.おわりに
 組織ではなく、ビジネスマン一人ひとりの問題として見た場合、他人の立場に置き換えて自問自答することは、自分自身を客観化する訓練になります。さらに、自分の熱くなった頭を冷ますことにもなるでしょう。
 組織が成長すると同時に、自分自身も成長したいものです。
 どう思いますか?

※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
 冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。


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