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松下幸之助と『経営の技法』#35

 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。

1.3/21の金言
 失敗することを恐れるよりも、生活に工夫のないことを恐れたい。

2.3/21の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 考え、工夫し、やってみる。失敗すれば、やり直し、もう一度工夫し、もう一度やり直す。同じことを繰り返しては進歩がない。先例に従うより、先例を破る工夫のほうが大切。そこに、新しい工夫の道もつく。失敗を恐れるより、生活に工夫のないことを恐れたほうがいい。
 我々の先祖からの工夫の積み重ねが今日の生活を生んだ。茶碗、ペンなど、何気ない断片に、尊い工夫の跡、無から有を生み出すほどの創造がある。
 小さくても、僅かでも、昨日と同じことを今日は繰り返さない。多くの人々の僅かな工夫の累積が、大きな繁栄を生み出す。

3.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 失敗から学び、工夫を繰り返す点は、PDCAサイクルなど、技術的な改善手法がいくつも紹介されています。
 問題は、それを続ける熱意や熱量です。
 そのためには、経営者自身が常に熱意や熱量を持ち続け、会社組織の背中を押し続けなければなりません。会社を発展させ、飛躍させる経営者たちには、癖が強い分、熱量の多い経営者が多く見受けられるのは、このためです。
 けれども、経営の観点から見た場合、経営者の熱量が無ければ会社組織が活動しないことになれば問題です。経営者が無限の命を有するわけではなく、会社組織のサステナビリティが確保できず、会社事業の永続性が確保できないからです。
 そのため、経営者だけでなく、会社従業員一人一人が常に意欲を持ち続ける必要があります。松下幸之助氏が繰り返し意欲を持ち続けるように焚きつけるのも、この点を意識しているはずです。

4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家と株主の関係で見ると、投資家としては、会社を改革していく意欲や、会社をリードする熱量をもった経営者を選ぶ必要があります(そのような経営者になるように、株主総会や社外取締役を通して働きかけ、チェックすることも重要です)。
 さらに、経営者個人の力量に頼るだけでなく、会社自身が意欲や熱意をもって、常に改革に取り組むような社風や組織、プロセスを構築できるかどうかも、重要なチェックポイントになるのです。

5.おわりに
 ここでは、主にビジネスの側(お金を稼ぐ場面)からの検討が中心になりました。
 しかし、リスク管理の観点からも同様です。社会のリスクは変化しますし、新しい事業にチャレンジする場合にも、新しいリスクに直面します。むしろ、経営的にチャレンジしない場合でもリスクに変化が生じるのですから、リスク管理の観点からこそ、より新しい視点や意欲が重要になるはずです。
 どう思いますか?


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