松下幸之助と『経営の技法』#131
6/25 発意と実行と反省と
~朝に発意、昼は実行、夕べに反省。こういう日々をくり返したい。~
結局、商売には、次のような基本姿勢が大切だと思いました。
つまり、仏教徒の方々の生活態度は、朝に礼拝、夕べに感謝と言いますが、我々日々仕事に携わる者も、朝に発意、昼は実行、そして夕べに反省、こういう日々をくり返したいということです。同様に、毎月、毎年の初めに発意、終わりは反省。そして5年たったら、その5年分を反省する。そうすると5年間に実行してきたことのうち、よかったこと、よくなかったことがある程度わかってくると思います。
私自身の経験では、概ね過ちないと思っていても、5年後改めて考えてみれば、半分は成功だったが、半分はしなくてもいいこと、失敗だった、ともいえるように思うのです。そのように反省しつつ歩むならば、次の歩みを過ち少なく進めることもできるわけです。
要するに商売というものは、この発意、実行、反省が大事なことであり、私自身も、こういう基本姿勢をさらに重要視していかねばと、改めて痛感している次第です。
(出展:『運命を生かす』~[改訂新版]松下幸之助 成功の金言365~/松下幸之助[著]/PHP研究所[編・刊]/2018年9月)
1.内部統制(下の正三角形)の問題
まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
ここでは、2つのポイントを指摘します。
①1つ目は、PDCAサイクルです。
このプロセスの必要性や有効性の説明は、もはや不要でしょう。重要なことは、人任せではなく、全ての従業員がこれを心がけ、会社全体のレベルだけでなく、各現場のレベルでも、PDCAが回るように組織とプロセスを作り、実際にその通り運用することです。
さらに、これはリスク管理のツールとして理解されている場合が多いですが、リスク管理に限られたものではなく、ビジネス上の判断についても用いられるべきものです。ビジネス上のツールとして見た場合、日本で古くから取り組まれてきた「カイゼン」「QC活動」や、アメリカから輸入された(しかし、アメリカでは「カイゼン」「QC活動」がモデルにされたらしい)「シックスシグマ」等の取組みと、その基本的な発想や構造は同じなのです。
松下幸之助氏は、このような取り組みを勧めているのです。
②2つ目は、「朝令暮改」です。
この点は、既にこの連載でも、3/31(#45)でも取り上げた金言で、松下幸之助氏は、「日に三転ではもう間に合わない。今日は、日に百転しなければならない。」という趣旨の発言をしています。
特にこの「朝令暮改」が凄いところは、会社がこのスピードについて来れることです。実行するだけでも大変ですが、さらにそこから必要な情報を収集して検証します。さらに、そもそもの部分ですが、「発意」の前提としても、充分な情報収集と検討が必要なはずです。それを、毎日行えるだけの組織力を備えることができれば、たしかに会社組織としても、相当の柔軟性とスピードが備わることになるでしょう。
2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
投資家である株主と経営者の関係で見た場合、これだけのスピードで対応できる柔軟な組織を作り上げられることのできる指導力が、重要な素養であることを理解できます。口先だけで同じことを唱えるのは簡単ですが、それを実行させてきた実績があるからこそ、松下幸之助氏の発言に重みがあるのです。
3.おわりに
さらに、松下幸之助氏は5年後の反省も勧めています。
これは、私自身が司法試験の勉強中に、半年後の復習をするようになってから成績が上がった、という経験にも合致し、非常に納得できるものです。すなわち、答案練習会で書いた答案の採点結果を、答案を書いた翌週に復習したところで、自分の頭の中にある思い込みがあるため、酷い点数が付けられていても、きっと採点者が不勉強なのだ、等の理由を付けて、自分の欠点をなかなか受け入れることができません。
ところが、半年もたって、自分がこのような答案を書いたことすら忘れてしまってから復習すると、酷い点数が付く理由が非常に良く理解され、その反面として、自分の独りよがりな文章の拙さを思い知らされるのです。
この点でも、すなわち5年後に反省してみよう、という点でも、松下幸之助氏の言葉には、非常に重みがあると感じます。
どう思いますか?
※ 『経営の技法』の観点から、一日一言、日めくりカレンダーのように松下幸之助氏の言葉を読み解きながら、『法と経営学』を学びます。
冒頭の松下幸之助氏の言葉の引用は、①『運命を生かす』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に了解いただきました。