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エッセイ

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#日常

徳島なんか燃えてしまえ

徳島なんか燃えてしまえ

ノスタルジーなんかくれてやる

1時間おきのディーゼル車に乗った牧歌的なかったるいクソ田舎の思い出とかそういう名前のついたものを新快速に15分おきにクチャクチャにしてもらいに6年前私は都会に来た

岸和田出身の知人が「岸和田なんか燃えてしまえ」と言っていてどうもそれがめちゃくちゃよかった
頭の中にフレーズだけ濾し取られたそれは地元への熱いヘイトも相まってその“岸和田育ち”っぽさが否が応でも出ちゃっ

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私は君を弔う言葉を知らない

私は君を弔う言葉を知らない

二十歳にもならない人間が死んだことについてずっと考えている。

年下のお通夜に行く機会なんて、あるとしても到底先のことだと思っていた。
6月半ば、知人が死んだ。
たった19歳だった。

今年の4月に初めてお会いした彼の印象は、場を明るくすることに長けている“底抜けに明るい”少年だった。
モデル(被写体)と劇団をやっていて、ファッションやメイクに造詣の深い少年。
私の認識はそれ以下でも以上でもなかっ

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そのダサいネイルでしぬのか

そのダサいネイルでしぬのか

負けん気が強いと言われる。
10年来の親友は私を「肉を切らせて骨を断つ女」と例えた。
膝を叩いてなるほどと言ったが厳密には「肉を切られるくらいなら自ら骨を断つ女」の方がより正確かもしれない。
どちらにせよ字面の上ではともに深手を負って死んでいるのは確かである。

私は前日にその翌日着る服を決めるということがどうしてもできない。なのでやらない。
その当日の気持ち(前の晩の気分で代替することはできな

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食べかけの昼飯を持ったまま飛ぶことはできない

食べかけの昼飯を持ったまま飛ぶことはできない

少しでも涼しければ、隙を見て出てくるらしかった。
猛暑の今年は油断していたが少し気温が低いと思えば飛んでいる。
友人が仕留める。
横の動きで叩くと逃げられやすいが縦の動きだと仕留めやすいのだと言う。
潰した手に黒くはりついて、血はついていなかった。
払うとへろへろと地面に落ちて、何事もなくなった。

「この間は1日に3件も起きて、ひどかったな」
鉄道会社勤めの友人が呟いた。
「あれって、どういう人

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