スパイダーマン、甲子園を目指す！！｜『スパイダーマン』（2）
テーマ発表！！
前回に引き続き、映画「スパイダーマン」をベースに新しい物語を妄想します。
※「スパイダーマン」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。
妄想開始！
嘉村 それではまいりましょう！
三葉 はい。
嘉村 「スパイダーマン」は、特別な「力」を授かったヒーローが、「力」を持つがゆえの「責任」を理解し、それを果たそうとする物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは？」ということで……さて！どんな物語にしましょうか？
案①
三葉 まずは、「スパイダーマン」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。
三葉 ……ですね（より詳しくは前回の記事で）。
嘉村 ふむふむ。
三葉 以上を踏まえて「案①」は……ズバリ！「『スパイダーマン』 ～『不良たちの甲子園』編」です。
嘉村 不良たちの甲子園……？
三葉 ええ。大雑把に言えば、「スパイダーマン」と「ROOKIES」をくっつけたようなアイデアです。
嘉村 ほぉ！
三葉 さて……「スパイダーマン」は、主人公のピーターが「力」を得るところから始まります。
嘉村 えーと、「遺伝子操作されたクモに噛まれ、ピーターにクモ由来の能力が発現する」というシーンですね。
三葉 ええ、その通りです。しかし「スパイダーマン」のストーリー構造は、「元々『力』を持っていた者」が主人公でも成立し得ると思うんですよね。
嘉村 ふむふむ。
三葉 例えば……「案①」の主人公は、生まれつきのフィジカル・エリートです。幼稚園生にして既に親や教員よりも俊足で、小学校の体育の授業では教師を投げ飛ばした。そんな男です。周囲の者は興奮し、「将来はオリンピック選手になるぞ！」「いやいや。プロスポーツ選手だよ！」と期待をかけた。
嘉村 ふむ。
三葉 主人公は、ある日親に勧められて地元の少年野球チームに入団します。強豪として知られるチームですが……嗚呼、さすがである！入団するやいなや3冠王に輝いた。ベテランの監督もこれには腰を抜かす「言葉を失うってまさにこのことだね」。誰もが一流スポーツ選手になると信じて疑わなかった。……が！主人公は、間もなく不良になってしまいました。
嘉村 あー……。
三葉 何しろ強い！巨漢、そして鋼の筋肉です。同級生や先輩はもとより、街のゴロツキや半グレ連中ですら敵わない。警官もビビッて逃げ出す始末。
嘉村 ほぉ……。
三葉 中学に上がるタイミングで、主人公は野球チームに退団する旨申し出ました。一同惜しむ……かと言えば、そんなことはない。主人公は、最早いっぱしのワルですからね。誰もが「あー、やっぱりな」と思った。監督も内心では「もったいない」と思いながらも、彼の退団届を受理した。
嘉村 ふむ。
三葉 しかし、たった1人だけ激昂した男がいた！主人公の同級生で、同じ野球チームに所属するAくんです。……彼は名選手でした。「甲子園、そしてプロ選手も夢ではない」と誰もが賞賛した。だが、Aくんはちっとも嬉しくない。なぜなら……そう。彼は、主人公をライバル視していたのです。
嘉村 ライバル視！
三葉 「ライバル視」といっても、恨んでいる、あるいは憎んでいるわけではありません。「『強敵』と書いて『トモ』と読む」というヤツですね。
嘉村 ふむふむ。
三葉 だから主人公が退団すると聞いた時、Aくんはショックを受けました。悔しく、また寂しい。「テメェ、逃げる気か！」「……」「オイ、無視するな！畜生め！お前は野球をするために生まれてきた男だろ！」「勝手に決めるな！」「オレの永遠のライバルだろ！？」「だから勝手に決めるんじゃねぇよ。まっ、せいぜい頑張れや。陰ながら応援しているよ」。主人公は去った。Aくんの頬に涙が流れる「畜生……畜生！」。
嘉村 ふむ。
三葉 そして月日は流れ……主人公は高校に入学します。不良ばかりが集まる荒廃した高校ですが、主人公は屁の河童。彼は入学初日に番長を殴り倒し、あっという間に王座に就いた。
嘉村 ほぉ……。
三葉 そんな主人公に、体育教師が声をかける「噂にたがわぬデカい男だな。ふむふむ。筋肉もよく締まっていやがる。なるほど、これは逸材だ」「何だ、テメェは」「ハハッ。そう睨むなよ。オレは新任の体育教師、そして野球部の顧問だ。よぉ、オレと一緒に甲子園を目指そうぜ」「……死ね」「そんな冷たいことを言うなよ！なぁ、オレの夢を聞いてくれ！」「……普通、逆じゃねぇか？」「オレの夢は甲子園に出場することだ！オレとお前が組めば夢が叶う！」「いや、知らねぇよ。大体、この学校に野球部なんてあったのかよ？」「いや、知らん」「……死ね！」。彼はしつこく主人公を勧誘する。しかし主人公は無視する。
嘉村 「ROOKIES」で言うところの、川藤先生キャラですね。
三葉 ええ、その通りです。ところで話変わって……そんなある日のこと。主人公が道を歩いていると、彼の背後に影が迫った。主人公に恨みを抱くチンピラです。チンピラはナイフを持ち、突っ込んできた！主人公は気づいていない。嗚呼！主人公は心臓を一突きされ、死んでしまうのでしょうか！？……いや、その直前に誰かが主人公を突き飛ばしました。
嘉村 まさかそれは……。
三葉 はい、Aくんです。Aくんは主人公を突き飛ばした。代わりに、腹を刺されてしまう。主人公が驚く「おっ、お前！一体どうして！？」。Aくんが弱々しく微笑む「どうしてって、そりゃお前はライバルだからな。ライバルのピンチを見かけたら放っておけねぇだろ。体が勝手に動いたんだよ」。主人公は犯人を一撃で気絶させると、Aくんを抱えて駆け出した。病院へ担ぎ込むのだ！Aくんが言う「相変わらずすげぇパワーだな。だが、負けねぇぞ。オレだって腕を上げたんだ。早く戻ってこいよ。そして勝負だ……」。それがAくんの最期の言葉でした。彼は死んだ。
嘉村 ほぉ……。
三葉 さて、ここで改めて「スパイダーマン」のストーリー構造を確認しておきましょう。
嘉村 えーと……なるほど。まず、主人公はせっかく授かった「力」を善用しなかった（上図の【1】、【2】に該当）。不良になり、私欲のために使った。だから「罰」を受けた（【3】）。……つまり、Aくんの死は「罰」というわけですね。
三葉 はい、その通りです。「スパイダーマン」でいえば、ピーターの叔父が殺されるシーンですね。
嘉村 ふむふむ。
三葉 そして……ピーターが叔父の死をきっかけにスパイダーマンとして活躍し始めたように、「案①」の主人公も、Aくんの死を契機として己の「力」を善用するようになります。
嘉村 なるほど。
三葉 すなわち……彼は、幼き日のAくんの言葉を思い出した。「お前は野球をするために生まれてきた男だろ！」「オレの永遠のライバルだろ！？」。主人公は野球部に入部する。
嘉村 ふむ。
三葉 顧問は驚き、喜ぶ。そして仲間を集め、練習を始める。ブランクが長い。腕が鈍っている。仲間もパワー自慢のポンコツばかりだ。しかし……「オレはやるぜ！」。主人公らは、来る日も来る日も練習に励みます。
嘉村 ふむふむ。
三葉 ところが……彼らの前には多くの障害が立ちはだかった。例えば、「お前ら不良が、甲子園を目指すって？バーカ！無理に決まってんだろ！」と揶揄されたり。
嘉村 あー。
三葉 あるいは、練習試合を申し込んでも片っ端から断られてしまう。「これまで散々悪いことをやっておいて、罪を償うでもなく野球かよ！勝手なもんだ！」「どうせダーティプレイを連発するんだろ？怖くて試合なんてできるかよ！」という具合ですね。
嘉村 ははぁ……。
三葉 さらに、他校の不良や街のチンピラが練習を妨害する「野球だと？いい子ぶってんじゃねぇよ！」「何ダセェことしてんだよ」。
嘉村 ふーむ……。
三葉 主人公は悩みます「彼らの言うことはもっともだ。果たしてオレに野球をする資格があるのか？」。……しかし最終的に、彼は腹を固める。「それでも、オレは野球をするぜ！だって、オレは決めたんだ。生まれ持った『力』をすべて野球に使うってな！」。
嘉村 ふむふむ。
三葉 主人公は他校の野球部に頭を下げて事情を説明し、どうにか練習相手になってほしいと懇願する。より一層激しい練習に励む。そんな日が続き……やがて努力は実を結ぶ。彼らは、練習試合で初白星を上げるに至りました。
嘉村 おー！
三葉 さて、ここで再び「スパイダーマン」のストーリー構造をご覧いただきましょう。
嘉村 えーと……【4】→【5】→【6】と進んできたわけですね。
三葉 ええ、その通りです。そして最後に【7】ですが……初白星を上げた日の夜、主人公は女子マネジャーから愛を告白されます。
嘉村 ふむふむ。
三葉 主人公が野球部に入部したばかりの頃、まだ誰もが彼を揶揄し、バカにしていた頃から、ただ1人応援し続けてくれた女の子……じつは主人公も恋心を抱いていました。しかし、彼は振ってしまう。
嘉村 あー……。
三葉 理由は言うまでもないでしょう。
嘉村 彼の目標は、甲子園を制覇すること。そのためなら、野球以外のすべてを犠牲にする覚悟があるということですね。
三葉 その通りです。「スパイダーマン」のピーターがそうであったように、この主人公もまた「『力』を持つ者の『責任』」を真っ正面から受け止めたと言えるでしょう。
嘉村 なるほど。
三葉 以上、「『スパイダーマン』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました！
続きはこちら！！
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クリエイター向け：「スパイダーマン」の構造を使って、オリジナルストーリーを考えよう！！【スパイダーマン、甲子園を目指す！の巻】
— 100%ツールズ@創作の技術 (@100_tools) February 27, 2020
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（担当：三葉）
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