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しょぼくれた老人がeスポーツ選手になって「誇り」を取り戻す話!!|『クール・ランニング』(2)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「クール・ランニング」をベースに新しい物語を妄想します。

※「クール・ランニング」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「クール・ランニング」は、ジャマイカ(常夏の国!)の男たちが、ボブスレー(氷上のスポーツ!)の選手になり、金メダルを目指して奮闘するコメディ作品ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「クール・ランニング」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて以上を踏まえて「案①」ですが……ズバリ!「ジャマイカの短距離走の選手が、剣道の国際大会で優勝しようと奮闘する物語」です。


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嘉村 「クール・ランニング」と同じく、主人公は「ジャマイカの短距離走の選手」なんですね。

三葉 ええ。「ボブスレーで金メダルを目指す」というのを「剣道で優勝を目指す」に置き換えただけで、あとは「クール・ランニング」とまったく同じ設定です。

嘉村 なるほど。

三葉 さて、ストーリーをご紹介しましょう。……主人公は優秀なスプリンターで、オリンピック出場が有望視されていました。ところが、ふとしたことでトラブルに巻き込まれ、代表選考会で敗北してしまう。

嘉村 ふむ。

三葉 しかし金メダルを諦めきれない彼は、「短距離走者は剣道に向いているらしい」と聞き、「よっしゃ!それなら剣道で世界チャンピオンを目指すぜ!」と決意を固めます。

嘉村 ふむふむ。

三葉 とはいえ、舞台はジャマイカ。剣道が普及しているはずもなく、「……で、剣道って何?えっ、日本の武道?……日本ってアレだっけ?カンフーの国?」なんてところから始まります。

嘉村 「クール・ランニング」同様、ゼロからのスタートというわけですね。

三葉 彼はまず仲間を集めるべく、自分と同じく不運にもオリンピック出場を逃した陸上選手に声をかけます。「クール・ランニング」では、ボブスレーに挑戦する4人の内3人が短距離走の選手でしたが、もう少しバラエティがあってもいいと思うので……ここでは、主人公は短距離走、他の3人はそれぞれ砲丸投げ、走り幅跳び、フルマラソンの選手ということにしましょう。

嘉村 おー!スピード系、パワー系、ジャンプ系、持久力系!バトルマンガっぽいチーム編成!

三葉 仲間が集まったら、次はコーチです。彼らは噂を頼りに、場末の怪しげな飲み屋に向かいます。そこにいたのは小汚い東洋人。……どう見ても、武術の達人には思えません。主人公らは落胆しますが……彼こそは伝説の剣豪・ムサシ!

嘉村 ムサシって……ベタな名前ですねぇ。

三葉 ちょうどその時、屈強な男が10人ほど店にやってきて、「ショバ代を払え」だの「この女はもらっていくぜ」だの大騒ぎします。ムサシはすっと立ち上がると、1本の棒を掴み、あっという間に男たちを追っ払う!

嘉村 おー!映画によくある「ちょっとご都合主義的な、そのキャラの力量を示すためのシーン」ですね!

三葉 主人公らはその圧倒的な強さに仰天し、「ソード・マスター……」と呟く。そして弟子入りを志願しますが……ムサシは「もう剣の道は離れた身ゆえ……」とかなんとか言って拒否する。

嘉村 ほぉ。

三葉 主人公は、何とかしてムサシを口説き落とそうと考えを巡らせる。ムサシは、見るからに自堕落な生活を送っている……そうだ!金に困っているに違いない!

嘉村 ふむ。

三葉 主人公は「週10ドル支払いましょう」と切り出す。ムサシは首を横に振るが、飲み屋のマスターが「ミスター・ムサシ、あなたに選り好みする余裕はないはずでは?いまこの瞬間にも利子が増え続けていることをお忘れなく」と援護射撃。かくしてムサシは、「背に腹は代えられぬ」とコーチに就任します。

嘉村 ふむふむ。

三葉 ところで……このムサシというのは、映画「キル・ビル」で千葉真一さんが演じたようなキャラがいいと思うんですよ!


嘉村 つまり、「『サムライ』、『ニンジャ』と聞いて外国人が思い浮かべる妙ちきりんキャラ」というか……。

三葉 ええ、そうです。唐突に「武士道とは仏の道なり」なんていかにも意味ありげなことを呟いたりするキャラですね。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、いよいよ特訓が始まりますが……もちろんスムースにはいきません。

嘉村 ほぉ。

三葉 例えば……特訓開始当初、ムサシが「剣の道は仏の道なり。仏の道は慈悲の道なり」なんて講釈していると、砲丸投げの選手がしびれを切らす。「よぉ、ソート・マスター。どうでもいいけどさぁ、まずは竹刀ってのを握らせてくれよ」。ムサシはカッと目を見開いて一喝「この痴れ者め!剣の道を究めるのに剣は不要なのだ!」「……いや、いるだろ。剣がなきゃ始まらないだろ」「貴様は何もわかっておらん!」「竹刀で引っ叩かれすぎて、頭おかしくなってんじゃねぇの?」「なっ、なんと無礼な!」……みたいなやりとりがあったり。

嘉村 ふむ。

三葉 主人公らが防具を身に着けて、「蒸れる!顔が蒸れる!手も蒸れる!」、「大変だ!汗をぬぐえない!汗が目に入る!!」、「うっ!このニオイ……鼻がもげそうだ!」なんて悲鳴を上げたり。

嘉村 ふむふむ。

三葉 練習試合が始まってからも大騒ぎで、「テメェ!いまわざと肩を打ったな!?」、「どさくさに紛れて膝蹴りすんのは止めろ!」、「なぁ、マスター!足裏が床にこすれて痛ぇよ!」……なんて具合です。

嘉村 なるほど。

三葉 とまぁ、こうして腕を磨き、いよいよ決戦の地・日本へ旅立ちます……が、日本に到着してからも騒ぎは続きます。「なんて醤油臭い国なんだ!ファック!」と叫んだり、間違ってメイド喫茶に入って萌え萌えジャンケンを体験したり、じつはムサシが日本の剣道界の爪はじき者で、そのために主人公らが嫌がらせを受けたり、そんなアレコレがありまして……そして試合が始まります。

嘉村 いよいよですね!

三葉 彼らは特訓の甲斐あって善戦しますが……敗北。チャンピオンにはなれませんでした。しかし、彼らの表情は明るい!

嘉村 ほぉ!

三葉 負けはしたものの、彼らは全力を尽くしたのです。やるべきことはすべてやった。悔いはない!観衆も、そんな彼らに惜しみない拍手を送って……おしまい!

嘉村 なるほど!

三葉 さて最後に、以上のストーリーを「クール・ランニング」と比較する形で整理してみましょう。


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三葉 基本的には「クール・ランニング」同様のストーリーですが、「剣道」ならではのエピソードを盛り込んだことで、「クール・ランニング」とは大きく異なる物語になったのではないかと思います。


案②


嘉村 続いて、「案②」にまいりましょう。

三葉 はい。「案②」は、「ごく普通の老人が、eスポーツの大会で優勝しようと奮闘する物語」です。


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嘉村 ふむふむ。

三葉 早速ですが、「クール・ランニング」と比較してみましょう。


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嘉村 「ジャマイカの短距離走の選手」の代わりに「ごく普通の老人」、そして「ボブスレーで金メダルを目指す」に対して「eスポーツ大会で優勝を目指す」ですね。

三葉 はい。

嘉村 なるほど。

三葉 「クール・ランニング」を現代日本風にアレンジするとして、一体どんな作品になるか考えてみたのですが……。

嘉村 ええ。

三葉 「老人 × eスポーツ」がいいかなぁと思いまして。

嘉村 確かに「2019年」感がありますね。

三葉 さて、「案②」のストーリーをご紹介しましょう。

嘉村 承知しました。

三葉 主人公は仕事を引退し、悠々自適……といえば聞こえはいいのですが、実際はハリのない毎日を送っている。

嘉村 ふむ。

三葉 ある日、娘夫婦が孫を連れてやってきます。久々に孫に会えて大喜びの主人公ですが……ふいに孫が訊く「ねぇ、お爺ちゃん。お爺ちゃんは何ができるの?」

嘉村 おおっ!なかなかきつい質問ですねぇ。

三葉 主人公は思わずビクッと頬を震わせます。無論、孫に他意はありませんが。

嘉村 ふむ。

三葉 孫が続ける。「幼稚園のみんなで話したんだ。羅衣音(らいおん)くんのお爺ちゃんは会社の社長さんなんだって」「ほぉ……」「輝(てりー)くんのお爺ちゃんは英語がペラペラで、英語の先生をやっているんだよ」「そりゃすごい」「心蘭(みらん)ちゃんのお爺ちゃんは元サッカー選手で、いまもお爺ちゃんばかりのサッカーチームで活躍してるんだって」「ふーむ……」「里澄(りずむ)ちゃんのお爺ちゃんはピアノが弾けるんだよ。外国で演奏会をしたんだって」「……」「ねぇ、お爺ちゃん。お爺ちゃんは何ができるの?」。

嘉村 キラキラネームっぷりが気になりますが……なるほど。

三葉 孫は、期待に満ちたまなざしを主人公に向けている……主人公は耐え切れず、そっと視線をそらします。

嘉村 ふーむ。

三葉 彼は想う。オレは平凡な会社員だった。英語は苦手だ。スポーツも得意ではない。音楽なんてサッパリだ。オレの人生は……オレの人生は一体何だったのだろう……。

嘉村 いや、そこまで悲観しなくていいと思いますが……。

三葉 まぁ、孫の前ですからね。カッコつけたいんですよ。

嘉村 なるほど。

三葉 かくして、「六十の手習い」ならぬ「古稀の自分探し」が始まります。

嘉村 ふむ。

三葉 彼は決意する……アレコレ考え込むのはオレの悪いクセだ。考える前に動こう。ドシドシ挑戦するんだ!

嘉村 ふむふむ。

三葉 彼はまずYouTuberを志しますが、カメラの前で沈黙してしまう……喋ることがない!嗚呼、オレの人生はなんと薄っぺらいものだったのか……。

嘉村 どうも落ち込みやすい主人公ですね……。

三葉 続いてゴルフに挑戦しますが……1ホール目にして腰を痛めてしまう。キャディーが気まずそうに「ゴルフよりもゲートボールの方が向いてそうですね……」と呟く。

嘉村 ほぉ。

三葉 それならばと今度はゲートボールに挑戦すると、開始5分で肩を痛めてしまう。先輩ゲートボ―ラーは「家でのんびりするのが向いてそうですな……」と苦笑する。……嗚呼、オレの人生は一体!!とまぁ、こんな具合に「挑戦 → 挫折 → ショックを受ける → 孫に尊敬の目で見られたいという一心で再び挑戦……」を繰り返す主人公。

嘉村 うーむ……。

三葉 さて、しばらくして再び娘夫婦がやってきます。

嘉村 ふむふむ。

三葉 「お爺ちゃんと一緒にゲームをしたいな!」と孫が言う。主人公はテレビゲームなんてちっともわかりませんが、孫に教わりながら必死にプレイ。すると……「あっ、お爺ちゃん上手!」と孫が歓声を上げる!

嘉村 おっ!

三葉 娘も言う「本当に上手ね。そういえばお父さん、昔から指先が器用だったもんね」。妻も言う「反射神経もいいのよ。車の教習所で褒められたって言ってたものね」。そして、娘婿が言う「eスポーツってご存知ですか?最近にわかに盛り上がっているんですが、シニアの部もあるそうですよ。お義父さんも挑戦してみてはいかがです?」。

嘉村 おー!

三葉 こうして、彼はeスポーツの道を歩み始めます。

嘉村 ふむふむ。

三葉 ゴルフやゲートボールで知り合った老人をチームメイトに誘い、YouTubeで見かけた凄腕のプロゲーマーにコーチを依頼する。

嘉村 これまでの「自分探し」の旅がここで報われるんですね!スティーブ・ジョブズの言う「Connecting The Dots」ってヤツだ!いやぁ、よかった……。

三葉 その後、主人公とチームメイトたちは腕を磨き、eスポーツの大会に出場。善戦しますが……最終的に優勝は逃してしまいます。

嘉村 ふむふむ。

三葉 しかし試合後、孫が駆け寄ってきて主人公に飛びつく「お爺ちゃん、超カッコよかった!」……で、おしまい!彼らは勝利を逃したものの、全力を出し切ったし、素晴らしい仲間も手に入れました。そして何よりも……そう!主人公は「誇り」を取り戻したのです!

嘉村 まさにハッピーエンドですね!


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(担当:三葉)

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