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私はカルト教団に洗脳されていた!!|『ボーン・スプレマシー』(2)

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テーマ発表!!


 前回に引き続き、映画「ボーン・スプレマシー」をベースに新しい物語を妄想します。

※「ボーン・スプレマシー」のストーリーなどについては、前回の記事をご参照ください。


妄想開始!


嘉村 それではまいりましょう!

三葉 はい。

嘉村 「ボーン・スプレマシー」は、「復讐」を果たさんと奮闘する主人公が、その途中で「過去の自分の罪」に気づき、「復讐」と「贖罪」の両方をこなす物語ですが、「設定を思いっきり変えても面白くなるのでは?」ということで……さて!どんな物語にしましょうか?


案①


三葉 まずは、「ボーン・スプレマシー」風の物語を作る時に注意すべきポイントを確認しておきましょう。


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三葉 ……ですね(より詳しくは前回の記事で)。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて上述の通り「ボーン・スプレマシー」は、「『復讐』と『贖罪』の物語」です。しかし……「贖罪」の物語って、一歩間違えるとアレになりかねないおそれがあると思うんですよね。

嘉村 「アレ」……?

三葉 例をあげてご説明しましょう。例えば、こんな物語。……主人公は、「中学生の息子を持つ母」です。

嘉村 ふむふむ。

三葉 ある日、主人公の愛児が自殺した。

嘉村 ほぉ。

三葉 主人公は強いショックを受ける。呆然自失。そしてしばらくして……愛児がいじめを受けていたことが明らかになります。主人公は激昂する「ぶっ殺す!あの子をいじめた連中を皆殺しにする!」。かくして主人公は、「誰がいじめたのか?」を明らかにするために情報を収集し、敵を仕留めるための作戦を練り、やがて敵討ちを開始しました。……これが「復讐」パートです。

嘉村 ふむ。

三葉 ところが「復讐」開始と同時に、主人公の脳裏にとある記憶が蘇り始めます。彼女は驚き、ショックを受ける。じつは……中学2年生の一時期、彼女は同級生をいじめていたのです。

嘉村 えー、加害者側ですか?

三葉 ええ、そうです。殴ったり蹴ったりしたことこそないものの、彼女を無視するよう他の生徒に命じたり、教科書に落書きをしたりした記憶がある。いま思えば、随分と酷いことをしたものだ。それにしても私は……一体なぜ、今日まですっかり忘れてしまっていたのだろう?

嘉村 ふーむ……。

三葉 ホラ、よく言うじゃないですか。「いじめの被害者はいつまでもそれを忘れない。一方加害者は、あっという間に忘却する」って。

嘉村 あー、確かに。

三葉 まさにそれですね。主人公はすっかり忘れていた。しかし、「復讐」を進める内にどんどん記憶を取り戻していく。そして「復讐」完了後、彼女はかつての被害者のもとを訪れ、謝罪した。……これが「贖罪」パートです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 以上、主人公が「復讐」と「贖罪」の両方をこなす「ボーン・スプレマシー」風物語ですが……いかがでしょう?「復讐」パートはいいとして、「贖罪」パートに難があると思いませんか?

嘉村 難?

三葉 ええ。つまり、イラッとしません?

嘉村 うーむ。

三葉 いや、だって……「10年以上も、自分が加害者だということを忘却してのうのうと生きていた」って、酷すぎるでしょ!

嘉村 まぁ……確かに。

三葉 「愛児がいじめを受け、その復讐をする中でようやく記憶を取り戻した」って……お前は自分が被害者にならないと相手の気持ちがわからないのかよ!

嘉村 ふーむ……。

三葉 さらに、「10年以上経っていまさら謝罪に行く」って……そりゃ謝罪すれば、お前はスッキリするかもな!わだかまりが消えたりするのかもな!でもな、相手はお前に会いたくねぇよ!お前の顔を見ると、嫌な記憶が蘇るんだよ!

嘉村 なるほど。おっしゃる通りですね。

三葉 とまぁ要するに、この物語はダメだと思うんですよ。こんな主人公は、読者に愛されない。共感されない。反感を買う可能性が高い。

嘉村 確かに。

三葉 一方……「ボーン・スプレマシー」!

嘉村 ええ。

三葉 「ボーン・スプレマシー」は、いま申し上げた「母の復讐譚」と似たようなストーリー構造の物語です。では、「ボーン・スプレマシー」も鑑賞者に愛されぬクソ作品なのでしょうか?……いいえ、そんなことはありません。

嘉村 ふむ。

三葉 はて。この差は一体何なのでしょうか?

嘉村 ふむふむ。

三葉 端的に言って……「主人公に責任がある(ように見える)か否か」がポイントでしょう。

嘉村 ほぉ。「責任」ですか。

三葉 「ボーン・スプレマシー」の主人公(ボーン)は、罪を犯した時、洗脳状態にありました。さらに洗脳が解けた後、ボーンは記憶喪失に陥ります。彼が記憶を取り戻すのは、被害者に謝罪するほんの少し前です。つまり、「洗脳されていた」「記憶喪失だった」……いかがでしょうか?

嘉村 ふーむ。罪を犯したのは確かにボーンですが……彼は洗脳されていたんですよね?つまり、自分の意志で凶行に及んだのではない。したがって、「ボーンの責任」とは言えないかなぁ。

三葉 ええ。

嘉村 そしてまた、被害者からすれば「いまさら謝罪かよ!」と感じるかもしれませんが……何しろ、彼は記憶喪失だったわけですからね。謝罪が遅れたのも無理ないでしょう。

三葉 ですよね!

嘉村 ええ。むしろ……。

三葉 ふむ。

嘉村 ボーンは洗脳されていた。つまり、彼にはほとんど責任がない(ように見える)。それなのに、わざわざ被害者を探し出し、そして謝罪するとは……「うーむ、立派なヤツだ!あっぱれ!」なんて印象すらありますね。

三葉 そうなんですよ!まさにそこがポイントだと思うんですよね。

嘉村 ふむふむ。

三葉 つまり、「ボーン・スプレマシー」風物語においては、「主人公は罪を犯しており、しかも長きに渡って贖罪していない」……が、しかしその一方で「主人公にはほとんど責任がない(ように見える)よね!」「この人、悪人じゃないよね!」「むしろ、いいヤツじゃん!」と読者・鑑賞者が感じてくれるように仕上げる必要があるというわけです。

嘉村 なるほど。

三葉 以上を整理すると……


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嘉村 「補正」!

三葉 ええ。そしてこの補正に失敗すると、「『ボーン・スプレマシー』風ではあるものの……しかし読者に愛されぬ失敗作」になってしまうでしょう。

嘉村 ふむふむ。

三葉 ということで、以上を踏まえて「案①」は……ズバリ!「『ボーン・スプレマシー』 ~『カルト教団』編」です。


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嘉村 カルト教団!

三葉 ストーリーをご紹介しましょう。主人公は、若い女性です。ある日、気がつくと……彼女は病院のベッドの上にいた。さらに、ここ5年ほどの記憶がない!一体どういうこと!?

嘉村 ほぉ。

三葉 じつは彼女は……とあるカルト教団の信者でした。

嘉村 カルト!

三葉 失恋やリストラ、両親の死去などが重なり、心が弱っていた時期に……主人公は勧誘を受けた。相手は口八丁。彼女はフラフラっと入信してしまい、そして強烈な洗脳を受けたのでした。

嘉村 ふむふむ。

三葉 主人公は、それから5年ほど熱心な信者として活動していたようです。しかしある日……1人で街を歩いている時に、職務質問を受けた。明らかに目つきがおかしい。さらに奇声を発し、警官を突き飛ばした。かくして警察に保護され、精神病院へ。それから数ヶ月経ち、いまようやく洗脳が解けたという次第。

嘉村 なるほど。

三葉 医師曰く、「あなたは、かなり強く洗脳されていました。薬物を使い、どうにか解くことができましたが……記憶喪失はその反動でしょう」。

嘉村 ふむ。

三葉 その後、主人公は失われた5年間の記憶を取り戻すべく、カウンセリングを受けたり、教団に詳しいジャーナリストから話を聞いたりしました。そして明らかになったのは……彼女は教祖の性奴隷の1人でした。

嘉村 性奴隷!

三葉 また、代議士や官僚、企業経営者など、ぜひとも入信させたい男性に対してハニートラップを仕掛けるのも、彼女の仕事だった。


嘉村 ほぉ。

三葉 さらにまた……彼女の財産、すなわち両親が遺してくれた家や土地、貯金などはすっかりなくなっていた。彼女は仰天する。経緯を調べると……彼女自身が全額、教団に寄付していたことがわかりました。

嘉村 ふーむ。洗脳は恐ろしいですねぇ……。

三葉 主人公は思う。私はすべてを失った。20代の貴重な5年間。女性としての誇り。そして財産。ヤツらは、心の弱っていた私につけ込み、すべてを奪っていった。クソー!こうなったら……こうなったら……ぶっ殺してやる!教祖をぶっ殺す!それから、幹部の連中もぶっ殺す!……かくして、主人公の「復讐」が始まりました。

嘉村 ふむふむ。

三葉 彼女の記憶はまだまだ不完全です。教祖や幹部連中の相貌ですら、ボンヤリとしか思い出せぬ。ましてや、彼らが普段どこにいるのか、そして教団施設の警備状況はどうなっているのか……まったくわからない。したがって、まずは情報収集です。彼女は洗脳が解けていないフリをして、教団に接触しました。そして警戒の目を向けられつつも……内部に潜入した。

嘉村 おー……バレたらおそろしい目に遭うでしょうねぇ。これはドキドキだ。

三葉 主人公は信者を装いながら、情報を集めていく。そしてその中で……ショッキングな過去を知った。

嘉村 ほぉ。

三葉 彼女が、新入信者の教育係だった時のことです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 新人には、「毎月○○人以上、信者を勧誘せよ」というノルマがあるのですが、これがなかなかしんどい。特に気が弱く、人付き合いが苦手な者には地獄です。ある時、教祖が命じた「勧誘ノルマは、絶対に達成しなければならぬもの。達成できぬ者は地獄に堕ちると心得よ。よろしいですね。未達成者には厳しい指導を。それが彼らのためなのです」。教祖直々のお言葉です。主人公はハッスルする。ノルマ未達成者を呼び出し、殴る蹴るの暴行を加えた。すると……嗚呼、悲劇。とある男性信者(以下、A氏)を殺してしまったのでした。

嘉村 あー……。

三葉 紛うことなき殺人です。しかし、教団はそれを隠蔽した。A氏の死は、事故死として処理された。主人公が逮捕されることはなかった。そして彼女には改めて強い洗脳が施され……主人公は、自分がA氏を殺したことをすっかり忘却していたのでした。

嘉村 なるほど。

三葉 さて、物語は進み……主人公は必要な情報をすべて手に入れた。いよいよ「復讐」決行の日です。彼女は、教祖や幹部らが一堂に会する日を狙って爆弾を仕掛け……ボカン。全員まとめて吹っ飛ばしてやった。かくして、「復讐」は終わった。しかし、彼女にはまだやることがある。そう、A氏への「贖罪」です。

嘉村 ふむ。

三葉 彼女は、A氏の息子を訪問。そして事情を説明し、謝罪した。息子は絶句する「そんな!オヤジは事故死したのだとばかり……」。主人公がうなずく「遅くなってしまったけれど……そして、事故死だと誤解していた方があなたの気分は楽だったかもしれないけれど……でも、たとえそれがどれだけ悲惨なものだとしても、私は真実を知るべきだと思う。だから、こうして今日お邪魔しました」。主人公は改めて謝罪し、去っていった。……で、おしまいです。

嘉村 ふむふむ。

三葉 さて、最後に確認しておきましょう。

嘉村 はい。

三葉 主人公は、A氏を殺めた。罪を犯したことは明白です。しかも、長年贖罪をしていなかった。彼女は悪人です。……が、しかし!彼女は長きに渡って洗脳状態にありました。また洗脳が解け、記憶を取り戻すと、早々に遺族に謝罪した。

嘉村 ふむ。

三葉 その結果、「ボーン・スプレマシー」のボーン同様、「非悪人 ≒ 善人」キャラに補正されたと言えるでしょう。

嘉村 確かに。

三葉 以上、「『ボーン・スプレマシー』をリスペクトした物語」のアイデアをご紹介しました!


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 最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。

(担当:三葉)

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