ダメダメっぷりがかわいいセイラは、なぜ影が薄いのだろうか?|『えんどろ~!』(3)
本記事は、アニメ「えんどろ~!」を徹底分析する特集の……第3回である★
第2回:【キャラ分析】ユーシャの「圧倒的主人公感」の源泉を探る
第3回(本記事):ダメダメっぷりがかわいいセイラは、なぜ影が薄いのだろうか?
第1回からご覧になることをオススメします!
「セイラ」を分析しよう★
前回は、「明るく元気でポジティブで、みんなのために戦う……主人公らしい主人公・ユーシャ」を分析した。
そして今回は……セイラ!
彼女の人となりを詳しく見ていこう!
※著作権者によるキャラ紹介動画(セイラ編)です。
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セイラの性質を表すキーワードは、以下の5つである。
【1】学力優秀
【2】家事ができない
【3】ポンコツ
【4】外見に悩みを抱えている
【5】一見すると、生真面目で面倒見がよくて、メンタルが弱い……がじつは普通
※あなたがクリエイターで、「セイラのようなキャラ」を作りたいとお考えの時には、この5つの条件を満たすとよいと思います★
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「学力優秀」とは?
「優秀な新人はいるか?」と同僚に問われた教師(マオ)は、「首席入学のエレノワール・セイランは高い見識を持っておる」と回答している(第2話)。
首席入学!
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「家事ができない」とは?
彼女は料理が作れず、掃除もできない。
彼女の「汚部屋」っぷりは、作中何度もネタにされている。
なお、他の3人は家事ができる。
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「ポンコツ」とは?
彼女は、一番まともそうに見えて、じつはかなりミスの目立つキャラである。
例えば4人でクエストに出かけた時には、食糧担当でありながら持ってくるのを忘れる(第3話)。
あるいは、雪山で遭難しかけ、「寝たら死んでしまうぞ」と話している中、真っ先に眠りに落ちる(第10話)。
……いや、他の3人だって負けず劣らずのポンコツなのだ。
しかしユーシャらは、そのポンコツを補って余りあるアビリティを持っている。
ユーシャには「直感力・幸運」!
ファイには「野性の力」!
メイには「カルタード・家事」!
セイラには……何もない。
※設定上はヒーラーのようだが、回復役として活躍するシーンは描かれていない。
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「外見に悩みを抱えている」とは?
セイラは、胸が小さいことに悩んでいる。
また、本当は視力が低いのだが、「ガリ勉に見られるのが嫌だから」という理由で普段はメガネをかけていない。
なお、主要4人の中でこうした悩みを抱えているのは彼女だけだ。
例えばユーシャの腹回りには贅肉がついているように見えるが、彼女はまったく意に介していない!朗らか!!
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「一見すると、生真面目で面倒見がよくて、メンタルが弱い……がじつは普通」とは?
彼女は生真面目で面倒見がよい!……一見すると。
例えば第1話のしょっぱな、セイラがユーシャらを起こすシーンがある。
セイラ「ユーシャ、起きて。もう朝だよ」
ユーシャ「んー……むにゃむにゃ……もう眠れないよぉ……」
セイラ「また変化球な寝言を……ハァ。もう!入学早々遅刻する気?」
ユーシャ「んー……あと5年寝かせて……」
セイラ「5年!?眠れないんじゃなかったの!?」
ユーシャ「ううっ……おはよう……セイラちゃん……」
セイラ「ファイとメイも起こしてくるから、着替えて顔も洗うこと。いいわね?」
ユーシャ「はぁい……」
また、忘れっぽい3人のために、彼女はいつも予備の教科書を持ち歩いている(第7話)。
ユーシャ「なんかセイラちゃんって、いつも予備の教科書持ってるよね?」
セイラ「あなたたちの誰かが必ず忘れるからでしょ」
3人「エヘヘー」
セイラ「おかげで教科書2セットずつ持ってるよ」
……まるで「お母さん」である。
ユーシャ「セイラちゃんって、なんだかんだで面倒見いいよねぇー」
ファイ「ファイたちのお母さんだねぇ!」
セイラ「私、まだそんな歳じゃないから!」
あるいは、「オカン」。
(誰がこのパーティのリーダーなのか、話し合う中で……)
メイ「セイラさんの『オカン力』も、ある意味リーダーに相応しいっす」
セイラ「だから、誰がオカンか……!」
ファイ「ううん!自信を持って!セイちゃんはファイたちの立派なお母さんだよ!おっぱいはちっちゃいけど!……おっぱいはちっちゃいけど!」
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また、セイラはメンタルが弱い!……一見すると。
例えば、第1話。
屋外実習中に、なぜか古代遺跡のトラップにハマってしまう4人。
セイラは取り乱す!
セイラ「なっ……なっ……なんなの、これぇ!?」
しかし他の3人は微笑しながら、
メイ「いやぁ、見事に閉じ込められたっす」
ファイ「やられちゃったねぇ」
ユーシャ「古代の遺跡は奥が深いね」
……と感心している。
セイラ「あぁ……最初の実習も合格できず冒険者学校を退学なんて……家族になんて言えばいいのよぉ!」
ユーシャ「セイラちゃん……泣かないで!」
ファイ「涙は心の栄養だよ!きっとセイちゃんを強くしてくれるよ!」
メイ「その涙を無駄にしないよう、自分も今やれることをやるっす。占いのカルタード!天啓よ、我らを導きたまえ!フォーチュン!……セイラさん、自分たちがやるべき行動が見えたっす」
セイラ「……本当?」
メイ「はいっす。明日は雨になるので、決して傘を手放してはいけないっす!」
セイラ「それ天気予報ぉ!あーもーあーもー!やっぱり私たち退学なんだぁ!」
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ご覧の通り、セイラは生真面目で面倒見がよく、そしてメンタルの弱いキャラだ!……だが本当に?
まずは以下のシーンをご覧いただきたい(第3話)。
クエスト実習中、4人は、飼い猫がいなくなったと泣いている少女と出会う。
猫探しを手伝ってやりたいと思うユーシャ。しかし、いまは授業中だ。
彼女は他の3人に訊く。
ユーシャ「ダメ……かな?」
それに対して、最初に反応するのが……セイラ。
セイラ「大丈夫!お姉ちゃんたちは猫探しのプロだから!」
もちろん、ファイとメイもすかさず同意する。
……違和感を覚えないだろうか?
もしもセイラが本当に生真面目だとしたら、「でも……授業中だから……」なんて躊躇するはずでは?
なにしろ、「生真面目」というのは「真面目すぎて融通が利かないこと」なのだから!
考えてみれば、「世話焼き」というのも言いすぎな気がする。
放っておけば平気で寝坊するし、教科書も忘れてくる。……そんな友だちがいたら、世話の1つも焼きたくなってくるのが人情ではないだろうか。
そしてまた、「メンタルが弱い」というのも……どうだろう?
先ほどご紹介したエピソードを改めて見ると……トラップにハマれば誰だって焦り、悲嘆するものではないだろうか?
なにしろ、彼女らは冒険者学校の新入生なのだ!
つまり、セイラは「生真面目」「世話焼き」「メンタルが弱い」……というほどではない。
「普通」なのだ!
多少真面目でお節介なところもあるようだが、あくまでも「普通」の範疇に収まると考えられる。
一方、他の3人は「普通」ではない!
普段は病的にボケている。一方、非常時には鋼のメンタルを発揮する。じつに異常である。
そんな異常な連中と比較してみるから、「生真面目で世話焼きで、メンタルが弱い」キャラに見える。
そう解釈した方が実態に沿っていると思うのだ。
まとめ
以上、「セイラ」というキャラの特徴をご紹介してきた。
【1】学力優秀
【2】家事ができない
【3】ポンコツ
【4】外見に悩みを抱えている
【5】一見すると、生真面目で面倒見がよくて、メンタルが弱い……がじつは普通
まとめよう。
セイラは、学力は優秀だ。
……が、それだけ。他に秀でたところはない。
首席入学というからには知識はあるのだろうが、いざ実践となると……まず、家事ができない。
そして、ポンコツでミスが目立つ。それを補うほどのアビリティもない。
さらに、メンタルが特別弱いわけではないが、他の3人のような鋼のメンタルではない。
一見すると生真面目で世話焼きだが……他の3人が破天荒すぎるからそう見えるだけで、例えば包容力のあるタイプではない。
そして、外見にコンプレックスがある。
結論。
セイラはダメダメである。
優等生なのにダメ!
そこがいい♥
……のだが、どうもその「ダメっぷり」があまり描かれていないように思うのだ。
あるいは彼女は、破天荒すぎるユーシャらに対するツッコミ役である。
ところが、そのツッコミもあまり描かれていないように思う。
その結果、主要4人の中で最も影が薄く、目立たないキャラになっているように見える。
……ということで、最後に、なぜセイラは(せっかくダメダメっぷりがかわいいし、ツッコミ役にもなり得るのに)影が薄くなっているのかを考えてみたい。
なぜ彼女は影が薄いのか?
はて。
なぜもっとダメっぷりを強調したり、ツッコミシーンを増やしたりしなかったのだろうか?
その方がキャラが立つと思うのだが……。
結論から言おう。
本作のゆるふわな雰囲気を維持するためではないかと思う。
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そもそも、本作のキャッチコピーは「ありそでなかった日常系ファンタジー、はじまるよ〜!」である。
一言でいえば「日常系」と「RPG風ハイファンタジー」の融合作だ。
ところで、「日常系」といえば、ゆるふわな雰囲気を楽しむ作品である。
そこに勇者だの魔王だのを登場させようというのだから、従来の「日常系」作品、すなわち「女の子たちが平穏な日常の中でダラダラする作品」と比べれば、どうしたってゆるふわ感は薄れてしまう。
何か工夫が必要だ!
そこで、主要4人の関係から、一切のギスギス感を取っ払ったのではないかと思うのだ。
例えば『らき☆すた』には、柊かがみがいる。
彼女は名ツッコミとしてよく知られている。
また、『らき☆すた』には、かがみの「じつはダメダメなところ」(ダイエット失敗、ツンデレetc.)もしっかり描かれ、笑いどころになっている。
セイラもまた、かがみ風のキャラになり得たと思うのだ。しかし、そうはしなかった(おそらくは意図的に)。
なぜならば、かがみのようなキャラが登場すると、たとえ一瞬とはいえ、ギスギス感が生まれてしまうからだ。
ごく普通の日常を舞台にした『らき☆すた』においては、それがよいスパイスになっている。
しかし本作には、既に勇者だの魔王だのがいる。これ以上のスパイスは不要なのだ。辛口になりすぎてしまう。
その結果、セイラのダメっぷりはあまり描かれず、ツッコミシーンも抑えられたのだと思う。
だから彼女は、比較的目立たないのだ。
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補足:「セイラはヒーラーだが、回復役として活躍するシーンは描かれていない」と上述した。その理由もここにあると思うのだ。つまり、誰かを回復させるということは、事前に、誰かが傷つかねばならない。……ゆるふわを目指す本作には難しい話だ。
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(担当:三葉)
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