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アニメ「Kanon」第14話を5つの視点から分析する👀

引き続き、アニメ「Kanon」を分析します。本記事で取り上げるのは第14話。第13話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!


分析対象


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あらすじ


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【ポイント①】言葉が足りず悲劇が起こる


<1>

第11話から始まった舞ルート(舞をヒロインに据えた専用ストーリー)も、いよいよクライマックスが近づいてきた。

と同時に、舞ルートに通底するテーマも見えてきたように思う。すなわち、<言葉が足りず悲劇が起こる>である。


<2>

例えば、

彼女は佐祐理のことを大切に想っている。普段何に対しても「嫌いじゃない」としか言わぬ舞が、佐祐理については「大好き」と表現する。それほど特別な存在なのだ。

だから舞は、佐祐理を魔物との戦いに巻き込みたくない。ゆえに魔物のことを隠し、遠ざけようとする。


ところがその結果……佐祐理は除け者にされていると感じ、寂しがっているのだ!


<3>

あるいは、過去の佐祐理

彼女は一弥(弟)を大切に想っていた。だから厳しく接した。それが一弥のためだと信じていたのだ。


ところがその結果は……?

一弥は佐祐理を恐れるようになった(<佐祐理が近づくと一弥が顔をこわばらせる>という描写がある)。さらに、一弥は早世してしまった。姉弟で遊ぶという夢はもう決して叶わぬのだ。


<4>

そして、現在の佐祐理

彼女は舞をとても大切に想っている。また、祐一のことも友人と感じている。だから2人に気を遣い、2人が何か隠していることに気づきながらも知らないふりをしていた。


そしてその結果……佐祐理は寂しい想いをしている。また、これが夜の学校で魔物に襲われるという悲劇にもつながっている


<5>

さらに、祐一

彼もまた言葉が足りない。

何しろ、舞を探しに学校に行く前に、佐祐理に1本電話をかければよかったのだ。彼が「舞を探してくるからちょっと待っていてください」と一言告げるだけで、佐祐理が魔物に襲われるという悲劇は防ぐことができただろう。


<6>

なお、彼らの<言葉の足りなさ>は本話に限ったことではない

・そもそも、舞は致命的に言葉が不足しているキャラだ。クールといえば聞こえはいいが、とにかく無口。必要なことしか言わない。というか、必要なことすら言わない

・また前話では、祐一の言葉の不足が原因で、祐一と舞が衝突するという事件も起きている(詳しくは第13話を分析した記事をご覧ください)


【ポイント②】<カノンについて説明する佐祐理のセリフ>を解読する


<1>

本話中盤、<佐祐理がパッヘルベルのカノンについて説明するシーン>がある。


佐祐理曰く、「この曲、パッヘルベルのカノンです。同じ旋律を何度も繰り返しながら、少しずつ豊かに、美しく和音が響き合うようになっていくんです。そんな風に、一見違いのない毎日を送りながら、でも少しずつ変わっていけたらいいですよね」


ところで、本作のタイトルは「Kanon」。

つまりこれ、<本作全体に通底するテーマに関して言及している重要なシーン>と考えて間違いないだろう。


<2>

以下、佐祐理のセリフの意味をじっくり検討することにしよう。


ということで改めてセリフを見ると……いかがだろうか。何だかわかるようなわからぬような。「どうも抽象的で曖昧模糊としており、理解しづらい」と感じないだろうか?

こういう時には、具体的に考えてみるのが得策だ。


そこで、まずはセリフに沿って佐祐理の経験・境遇を整理してみた。

・STEP1:佐祐理は一弥を喪い、心に傷を負った。そして、いまも苦しんでいる

・STEP2:昨日も苦しかった。今日も苦しい。明日も苦しいだろう!同じ毎日の繰り返しに見える

・STEP3だが……じつは少しずつ変化しているのかもしれない。というか、そうであってほしい。そして、いつか一弥のことを涙なしで思い出せる日がくれば嬉しい


<3>

「要するにこれ、<時が解決してくれるのを待とう>という意味かな?」と感じた方は少なくないと思う。

なるほど、確かにそう言えるかもしれない。だが私は、<時が解決してくれるのを待つ>という表現では消極的すぎるように感じる


というのも……ここでご注目いただきたいのは、【<作品全体のテーマを口にする>という大役を担ったのが佐祐理である】という点だ。

佐祐理はメインヒロイン(名雪、あゆ、真琴、栞、そして舞)ではない。あくまでも<舞ルート>のサブキャラだ。そんな佐祐理が、なぜ大役を担ったのか?


私はこれ、佐祐理が過去を覚えているキャラだからだと思う。

佐祐理は心に傷を負った。傷はいまも癒えていない。日々苦しい。なぜ苦しいのか?ずばり、過去を忘れていないからだ。一弥のことを、そして「もっと一弥に優しくしてやればよかった」という後悔を忘れてはいない。だから苦しいのだ。


翻って、祐一はどうか?彼は……過去の記憶の一部を失っている!つまり何かを忘れている!

では、あゆは?舞は?真琴は?彼女たちも過去の記憶を失っている!

※補足:名雪については、本話時点では明言されていない。


<4>

つまり、苦しくても過去と向き合い続けること。「昨日も苦しかった!今日も苦しい!いつまでも苦しいままだ!」と感じても、決して絶望しないこと。癇癪を起こすことなく毎日を生きていくこと。その先に、<癒し>がある(かもしれない)のだ。

佐祐理のセリフには、こうした意味が込められているのだと思う。


となると、だ。

この先の展開が何となく見えてくるだろう。

すなわち……祐一たちは過去の記憶を取り戻さなければならない。そして佐祐理のように、どれだけ辛くても過去を直視し続けなければならない。それが癒しへと至る道なのだから。


【ポイント③】<カノンについて佐祐理が説明するシーン>には、なぜ納得感があるのか?


<1>

引き続き、<カノンについて佐祐理が説明するシーン>について考えてみよう。


このシーン、多くの鑑賞者が舌を巻いたことと思う。

というのも……多くの物語では<キャラが物語のテーマに言及するシーン>はぎこちなくなりがちだ。「えっ。なんか急に多弁になったけど(笑)」「急に語り始めたよ(笑)」「お前、そんなことを言うキャラだっけ?(笑)」なんて風に鑑賞者を白けさせてしまうことも少なくない。

ところが、本話は一味違う。じつに巧いのだ!


<2>

まずご注目いただきたいのは、<佐祐理がお嬢様キャラである>という点だ。これはかなり以前から明かされていたことだし、本話内でも繰り返し強調されている。

佐祐理はお嬢様キャラだ。それゆえに、「この曲、パッヘルベルのカノンです」と語り出しても違和感がない。


では、もしこれがあゆだったら?真琴だったら?

……台無しである!「きみたちそんな教養あるキャラじゃないでしょ!(笑)」とツッコまざるを得ないだろう。


<3>

続いて、構成面に注目しよう。


当該シーンは、

・STEP1:佐祐理が辛い過去を語り、いまも苦しんでいることが明かされる

・STEP2:カノンの説明

・STEP3:佐祐理が微笑む「いつか一弥のことも悲しい気持ちだけじゃなく……思い出せるようになるかもしれない」

……と進む。


つまり、カノンに関する説明は、佐祐理自身の体験談の間に挟まれているのだ。

だから違和感がない。「なるほど、いまも苦しんでいる佐祐理だったらこういうセリフを口にするかもなぁ」という納得感があるのだ。


【ポイント④】繰り返し


<1>

本話には、<繰り返し = 物語の中に似たようなシーン(鑑賞者が「似ている」と感じるシーン)を複数回描く>という演出が使われている。

まぁ、【カノン = 同じ旋律を何度も繰り返す】というタイトルを冠した作品である以上、<繰り返し>を活用するのは当然のことだろう。


<2>

以下、私が気づいた<繰り返し>を列挙してみよう。


▶繰り返しの例1:ニンジン

・シーン1:冒頭の朝食シーン。寝ぼけなまこの名雪が寝言(?)を言う「ちなみに、ニンジンだってちゃんと食べられるよぉ」

・シーン2:佐祐理の回想シーン。幼い一弥はニンジンが苦手なようだ。なかなか食べられない


▶繰り返しの例2:ホラー映画風の演出

・シーン1:冒頭の朝食シーン。【秋子が謎ジャムを取り出す → 祐一と名雪が怯える】という場面で、ホラー映画風の演出が用いられている

・シーン2:祐一が学校に到着し、血だまりの中に倒れる佐祐理を発見したシーン。ここでも、ホラー映画風の演出が使われている

・補足:<ホラー映画風の演出>とは、①キャラの顔にやたらと濃い影が落ちている、②恐ろし気なBGMや効果音が流れる、③キャラの顔がどアップになる、④ここぞという場面を敢えて映さないことで恐怖を煽るテクニックが用いられている(あゆが謎ジャムを口にする場面は映っていない。同様に、血だまりの中に倒れる佐祐理は下半身しか映らない)……を指す。


▶繰り返しの例3:周りの人が心配する

・シーン1: 祐一が木刀を素振りするシーン。 祐一は「最近の俺は、夜中に学校に行くなど奇行が目立つ。名雪が心配しているかもしれないなぁ」と考える

・シーン2:祐一が舞を探して学校に向かうシーン。名雪は「こんな時間にどこに行くんだろう……」と心配している

・シーン3:本話全体を通じて、佐祐理は舞(と祐一)が何かしていることに気づいており、密かに心配している


▶繰り返しの例4:宙を舞う剣

・シーン1:祐一と舞が稽古をするシーン。【佐祐理がやってきて「私にもやらせてください」を剣を握る → 舞が佐祐理の剣を弾き飛ばす→ 剣は宙を舞い、雪に突き刺さった】という場面がある

・シーン2:佐祐理を病院に運んだ後、舞が大暴れするシーン。【舞は自身の喉を剣で突こうとする(自殺する気だ) → 祐一が剣を弾き飛ばす → 剣は宙を舞い、雪の上に落ちた】という場面がある


▶繰り返しの例5:自殺(自殺未遂)

・シーン1:祐一と佐祐理が百花屋で話すシーン。佐祐理の左手首にリストカットの跡が見える

・シーン2:佐祐理を病院に運んだ後、舞が大暴れするシーン。上述の通り、舞は喉を突いて自殺しようとする


【ポイント⑤】舞は、いつだって祐一のことを想っている


<1>

最後に、私が好きなシーンをご紹介したい。ずばり、<祐一と舞が稽古をするシーン>だ。


ご注目いただきたいのは、

前話中盤:祐一が素振りをしている。そこに舞がやってきて「そんなんじゃ全然ダメ」。<祐一が魔物と戦うのは到底無理。諦めなさい>といった感じ

・本話:祐一が素振りをしている。そこに舞がやってきて稽古をつけてくれる

……この相違である。


<2>

なぜ舞の対応は変化したのだろうか?

理由は明白だ。


そもそも……舞は、魔物との危険な戦いに祐一を巻き込みたくなかった。だから前話では、敢えてやる気を削ぐような発言をしたのだろう。

ところが前話終盤、どうやら魔物は祐一を狙っているらしいと明らかになった。つまり、祐一は当事者だったのだ。いつまた狙われるかわからぬ。ゆえに本話では、舞は稽古をつけてくれた。


要するに、舞は前話でも本話でも、祐一の安全を最優先に考えているのだ!なんと優しいキャラなのか!


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(担当:三葉)

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