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アニメ「Kanon」第12話を5つの視点から分析する👀

引き続き、アニメ「Kanon」を分析します。本記事で取り上げるのは第12話。第11話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!


分析対象


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あらすじ


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【ポイント①】<普通の世界>と<異形の世界>の間で揺れ動く舞


<1>

本話は、【<普通の世界>と<異形の世界>の間で揺れ動く舞】を描いたエピソードである。


まずは、舞がどのようなキャラなのか確認しておこう。彼女の特徴を列挙すると……

・1:超絶ぶっきらぼう

・2:極端に無口

・3:感情をほとんど表に出さない

・4:夜な夜な学校にやってきては、剣を振り回している(じつは魔物と戦っているのだが、魔物を視認できるのは舞のみ。また、<舞が魔物と戦っている>ということを知っているのは祐一だけである)


そう、一言で言うならば<変人>だ。


<2>

舞は紛うことなき変人である。学校で疎まれるのも無理ないだろう。また、久瀬のように攻撃的に接する人がいるのも、まぁ理解できる。


で、祐一はそんな舞を心配している。「皆と打ち解けられればいいのだが……」と思っている。

そして前話、彼は名雪の助言を得て閃いた。そうだ、学園舞踏会だ!舞踏会で普段とは違う舞をアピールすれば、皆と打ち解けられるかもしれないぞ!


<3>

ここまでの流れをまとめると、

・Point1:舞は、皆から<異形の世界の住人>と認識され疎まれている

・Point2:そんな舞を<普通の世界>に溶け込ませようというのが今回の作戦だ

……となる。


<4>

そして、この作戦は上手くいった……少なくとも最初の内は。

舞踏会。ドレスに身を包み、薄化粧を施した舞は普段とはまるで別人。大変に美しい。さらに、彼女は祐一と華麗にワルツを踊った。

かくして、皆の視線が集まる。「すごい!」「きれい!」と感嘆の声があがる。


祐一は内心ガッツポーズした。やったぜ、作戦成功だ!

この時、舞は<普通の世界>に包摂されつつあったと言えるだろう。


<5>

ところがである。

間もなく、目に見えぬ魔物が出現。佐祐理が傷つけられたことをきっかけに舞は激昂、魔物と戦い始めた。


皆は呆然とする。

何しろ、魔物を視認できるのは舞のみ。皆には<舞が1人で暴れ回り、会場をメチャクチャにしてしまった>としか見えないのだから。


こうして作戦は失敗した。

というよりも、事態はむしろ悪化した。舞はいまや完全にヤバい奴、頭のおかしな奴と認識されてしまったのだ。


<6>

ところで……【舞が祐一とワルツを踊り始める場面】と【舞が魔物と戦い始める場面】には、ユニークな演出が用いられている。


・【1】舞が祐一とワルツを踊り始める場面祐一が床を軽く蹴って前進するところから、ダンスが始まる

・【2】舞が魔物と戦い始める場面が床を全力で蹴って駆け出すところから、戦いが始まる


つまり、

・【1】舞は、祐一に導かれて<普通の世界>に向かって進み始めた

・【2】ところが魔物が登場すると、自ら<異形の世界>に突っ走っていってしまった

……というわけだ。


【ポイント②】舞は2度ダンスする


本話後半には、【舞が祐一とワルツを踊るシーン】と【舞が魔物と戦うシーン】が描かれている。

そして【舞が魔物と戦うシーン】は、見ようによっては、舞が目に見えぬ何かとダンスを踊っているように見える(正確には<そう見えるように演出されている>。例えばBGMなど)。


つまり、

・Step1:舞踏会が始まる

・Step2:舞は、祐一と共に華麗に優雅にダンスする(踊る)

・Step3:目に見えぬ何か(魔物)が出現する

・Step4:舞は、その目に見えぬ何かと共に、激烈に超高速でダンスする(戦う)

……というわけだ。


コントラストの効いた印象的な構成である。


【ポイント③】舞がドレスを着て、化粧を施す意味


<1>

舞踏会のシーンでは、舞はドレスを着てうっすらとメイクを施している

はて、彼女はなぜそんなことをしているのだろうか?


答えは明白、もちろん舞踏会だからだ。舞踏会でオシャレをするのは当然である。

……が、本記事ではもう少し深く考えてみたい。


<2>

さて、ここで思い出していただきたいのが【古来より、何か大事を為そうという時には人は特別な衣装に身を包み、化粧を施してきた】ということだ。


古代エジプトの王もそう。

戦国武将もそう。


<3>

で!

本話は、【<普通の世界>と<異形の世界>の間で揺れ動く舞】を描いたエピソードである。<世界を越境する(複数の世界を行き来する)>といえばこれは大変なことだ。

つまり、舞が特別な衣装に身を包み、化粧をしているのは、表面的には【舞踏会に参加するから】だが、より本質的には【世界を越境するという大事に挑むから】なのだ。


【ポイント④】デレる舞!!


<1>

本話最大の見どころは、ずばり<舞のデレ>である。

あゆも栞も名雪も秋子も佐祐理もかわいいが……本話のMVPは舞だ。

<無感情キャラの舞が、次第に感情を露わにしていく。そして祐一にデレていく>というこのプロセス!これがたまらない。


<2>

以下、<舞のデレ>のプロセスをざっくり整理してみよう。


▶ シーン0

舞が初登場したのは第1話

彼女は、初っ端から無感情キャラであった。常にぶっきらぼうで、ほとんど言葉を発しない。


▶ シーン1

本話序盤の登校シーン、舞は祐一に教えられた通り、YESの時に「はちみつくまさん」、NOの時に「ぽんぽこたぬきさん」と言った。ところが、である。祐一は苦笑した「却って引かれるかな」。するとその直後、舞は早足になった(恥ずかしかったのだろう)。

この時、舞は無口・無表情のままだ。だが、<祐一の言葉に対して感情的な反応を示した>という点で、これ、見逃すことのできぬ重要なシーンである


▶ シーン2

舞踏会で、祐一は仰天した。ドレスアップした舞が別人のように美しかったのだ。

祐一は軽口を叩く「どちらのお嬢様で?」。すると舞は、無言・無表情のまま頬を赤く染めた(このシーン、舞の頬はじわじわっと桜色に染まるのだが……これが最高にかわいい!)

そして舞は、祐一の頭にチョップした(無論照れ隠しである)。

さらに、佐祐理が「アハハ。照れることないのに」と笑うと、舞は佐祐理にもチョップ。


▶ シーン3

シーン2の直後、祐一は改めて言った「本当に驚いたぞ。一瞬、マジで別人かと思った」。

舞は恥ずかしそうに俯き、再び頬を染めた(ついに俯いた!)。


▶ シーン4

久瀬から嫌味を言われた後……祐一が提案した「誰かと踊ってこいよ。北川なんてどうだ?」。

すると舞は、いつもの抑揚のない口調で「祐一……私は祐一がいい」「私、こういう場所は不慣れだし……祐一に傍にいてほしい」

なお、このシーンの舞は頬を染めていない


▶ シーン5

祐一と舞が華麗にワルツを踊る。

舞は無表情のままダンスしていたが、途中で……なんと!驚くべきことに!ついに!舞の口角が!持ち上がった!

そう、舞が微笑んだのだ!!


▶ シーン6

やがて、皆の視線が舞に集まる「すごい!」「きれい!」。

祐一は喜んだ「好評だぞ!やったな!」。すると舞は……嗚呼、頬を染め、恥ずかしそうに俯いた。そして上目遣いになって「ありがとう、祐一」。

なお照明のせいか、あるいはカメラの角度のせいか、このシーンの舞は目が潤んでいるように見える

これにはさすがの祐一も照れる。


※シーン6の直後に魔物がやってきて、<舞のデレ>は終わる。


<3>

以上、<舞のデレ>のプロセスをご覧いただいた。

ご注目いただきたいのは、<一口にデレと言っても様々なバリエーションがある>ということだ。


例えば……

・バリエーション1:いきなり頬を染めたり、微笑んだりするのではなく、まずは【シーン1:早足になる】というところからスタートする

・バリエーション2常に頬を染めているわけではない。途中、染めていないシーンも挟まる

・バリエーション3視線も様々。祐一をまっすぐ見つめたり、俯いたり、あるいは上目遣いになったりする


こうしたバリエーションがあるからこそ、私たち鑑賞者は途中で飽きることなく、何度も何度も舞にドキドキさせられるのだろう。

すごい!


【ポイント⑤】あゆと名雪


<1>

前話を分析した記事で、私は以下のように申し上げた。

・あゆと名雪が出会い、2人は友だちになった

・だが、この2人は本作のメインヒロインである。そして本作は、祐一を中心としたハーレムもの。つまり、片方が祐一と結ばれれば、もう片方は失恋するのが宿命だ。2人が同時に幸せになる未来は、まぁ訪れそうにない


<2>

で、本話序盤にこんなシーンがある。

---

深夜、あゆと祐一はベランダに出た。

あゆは、星空を見上げて言う「ねぇ、名雪さんってきれいな人だよね」「きれいだし、優しいし、すごく素敵な人だと思うよ」「僕も大きくなったら、名雪さんみたいにきれいになるかなぁ」

※この後、あゆは名雪が自分と同い年だと知って仰天する。

---


おお、このあゆのセリフ!

<あゆが、同じ女として名雪を意識しているのが見て取れる>と言っていいだろう。



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(担当:三葉)

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