アニメ「Kanon」第4話を5つの視点から分析する👀
引き続き、アニメ「Kanon」を分析します。本記事で取り上げるのは第4話。第3話以前を分析した記事については、最下の「関連記事」欄をご参照ください!
分析対象
あらすじ
【ポイント①】<構成で示唆する>というオシャレなテクニック♥
<1>
「Kanon」の各話冒頭には、謎のモノローグが入っている。
第1話以来、初見者にはチンプンカンプン、何の話かさっぱりわからぬ状態が続いていたが……本話に至り、ついに大きなヒントが提示された。
といっても、モノローグの内容自体は相変わらず掴みどころのないポエミーなものである。ご注目いただきたいのは、構成(エピソードの順番)だ。
<2>
すなわち……
・1:まずは、いつも通りモノローグが流れる。あゆの声で「だけどいまは……夢に終わりがなくなったのは、いつからだったろう?」
・2:OP
・3:幼い頃(7年前)の祐一とあゆのエピソードが始まる
そう、「いつからだったろう?」というモノローグの直後に、幼い頃のエピソードが入るのだ。
かくして、初見者も察するだろう。「なるほど。『夢に終わりがなくなった』のは、幼い頃(7年前)なんだな。その頃、祐一とあゆの身に何かが起きたに違いない。その結果として、いまもあゆは夢を見ている……?」という風に。
<3>
モノローグと幼い頃のエピソードの間にはOPが入る。ゆえに、<露骨なネタバレ感/わざとらしさ>はない。しかし、注意深く見ていれば「おや」と感じるだろう。
こうした<構成で示唆する>というテクニック、いいですよねー!じつにオシャレ!
【ポイント②】真琴の嫉妬心
<1>
本話は、【あゆと真琴が初めて会うエピソード】である。
まずは、2人の出会いから別れまでを大雑把に整理してみよう。
・Step 1:あゆが来訪。真琴は、重度の人見知りっぷりを露呈する
・Step 2:あゆがたい焼きを分け与える。これをきっかけに、2人は距離を縮める
・Step 3:かくして2人は笑顔で談笑したりしつつ、祐一の荷解きを手伝う
・Step 4:2人は完全に打ち解けたように見えた……のだが、しかし。荷解きが終わると、真琴は自室に引っ込んでしまった。祐一は「疲労困憊したのだろう」と考える。だが、どうやらそう単純な話ではないようだ。というのも、この時、真琴は祐一やあゆの様子を物陰から伺っている
・Step 5:帰宅時、あゆは真琴が窓から覗いていることに気づく。あゆが手を振る。すると、真琴は嬉しそうに手を振り返した
<2>
さて、上述の展開には1つ奇妙な点がある。
お気づきだろうか?
ずばり、【<Step 4>で真琴が自室に引っ込んでしまう】という点だ。だって、2人は<Step3>で打ち解けたはずではなかったのか?
真琴は、祐一やあゆの様子を物陰から伺っている。そんなに気になるのなら自室に戻ったりせず、皆でお茶を飲んだり菓子を食べたりすればよかったのだ。
それなのに、なぜ引っ込んだのだろうか?
<3>
もしかして、打ち解けたように見えたのは演技に過ぎず、本心ではあゆを嫌っていたとか……?
いや、そうは考えづらい。<Step 5>の真琴は笑顔で手を振り返しているのだから。
<4>
となると考えられるのは……そう!嫉妬心である。独占欲と言ってもいい。
記憶を失った真琴にとって、祐一や秋子はこの世界で唯一心を許せる存在だ。そんな安息の地にやってきた少女・あゆ。あゆはたい焼きをくれた。どうやら悪人ではないらしい。が、しかし!やっぱり落ち着かむ!
真琴はこんな心境なのだろう。
つまりは、<自分の居場所が奪われるかもしれぬという漠然とした不安感>に襲われているのだ。
<5>
これ、普通の作品なら【<Step 2>で打ち解ける → 2人はそのまま仲よしになりました♥】という展開を辿っていたと思う。
ところが本作では、嫉妬心や独占欲、言わば<人間の哀しきエゴ>が邪魔をして真琴は素直にあゆと付き合えない……!
こういう一筋縄ではいかぬ展開がいいよなぁ、さすがは「Kanon」だよなぁと思いました。最高ですよね!
【ポイント③】真琴の圧倒的な<弱さ>
本話は、【真琴の<弱さ>が強調されたエピソード】である。
真琴は、祐一に対しては強気で、2人はいつも口喧嘩をしている。ゆえに勝気な少女に見える。しかし……じつは彼女は驚くほど弱い。
・シーン①:祐一に対して復讐を試みるものの、大失敗。祐一には企みがバレ、そして意地悪される。さらに、秋子に夜食を食わされて胃もたれに苦しむというありさまだ。完敗である
・シーン②:あゆが来訪した時には、重度の人見知りっぷりが露呈する
・シーン③:あゆのおかげで2人は打ち解けるものの、今度は嫉妬心・独占欲のせいで、やはり上手く付き合えない
・シーン④:祐一の荷解きを手伝う場面では、すぐにへばる
このように、<真琴はメンタルもフィジカルも弱い>ということが複数のエピソードを通じて強調されている。
【ポイント④】<たい焼きで打ち解けるシーン>がなぜ繰り返し描かれているのか?
<1>
「Kanon」では、【繰り返し = 似たようなシーンを敢えて繰り返し描くことで、鑑賞者に何かを伝える】というテクニックが頻繁に使われている。
例えば第2話には、<裕一が謝罪するシーン>が複数回描かれている。
※詳しくは第2話を分析した記事、第3話を分析した記事をご参照ください。
<2>
そして、本話でも【繰り返し】が使われている。
すなわち……
・シーン①:幼い頃(7年前)、祐一はあゆにたい焼きを買ってやった。これを機に、2人はぐっと打ち解ける
・シーン②:祐一の荷解きを手伝う中、あゆは真琴にたい焼きを分けてやった。これを機に、2人はぐっと打ち解ける
そう、<初対面の2人がたい焼きをきっかけに打ち解ける>というシーンが繰り返し描かれているのだ。
<3>
で、問題はここからである。
はて、この【繰り返し】は何を意味しているのだろう?制作者は、私たち鑑賞者に何を伝えたくてこのシーンを繰り返し描いたのだろうか?
私はこれ、<あゆが7年前から変化していないことを示唆するための演出>だと感じた。
というのも……後々明らかになることだが、じつはあゆは7年前から昏睡状態に陥っている。つまり、彼女には7年前までの記憶や経験しかない。だから、7年前と同じことを繰り返すのだ。
要するに、<この時点ではまだ明かされていない悲劇的現状への伏線>である。
【ポイント⑤】名雪の性質、香里のリクエスト
<1>
本話中盤、香里がこんなこと言う。曰く、「名雪はのほほんとしているようで、無理するところもあるから気をつけてあげてね」。
これ、納得感のあるセリフである。
何しろ、名雪は心優しい少女だ。そして祐一は、そんな名雪に甘えているところがある(詳細は、第3話を分析した記事をご参照ください)。
ゆえに多くの鑑賞者は、「まったくだよ!祐一よ、少しは優しくしてやれよ!」と思ったはずだ。
<2>
ところで……名雪の初登場シーンは第1話の冒頭だった。彼女は祐一のいとこであり、いかにもメインヒロイン然としていた。
しかしその後、第2話、第3話、そして本話と進むに連れて、名雪の存在感は薄れていく。
まぁ、無理もあるまい。あゆ、真琴、舞、さらには秋子といった個性的なヒロインが続々と登場するのだから。
そして、<名雪の存在感が薄れつつある>という現状を踏まえて香里のこのセリフを改めて見てみると……どうだろう?別のニュアンスが感じられないだろうか?
すなわち、「名雪はのほほんとしているようで、繊細なところもあるから忘れないであげてね」。香里が私たち鑑賞者に注意を促しているように感じられるのだ(考えすぎだろうか?)。
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