母へ／ずっと、プレゼントをしたかった華やかなおはぎを贈る。

◇◇◇

わたしの母は、
昔から「おはぎ」が大好きだ。


スーパーで見つけてはその都度買い
夜の楽しみにしているくらいに。

◇◇◇


約2年前。
わたしは、あるお店のおはぎによって
おはぎの概念を覆された。


そのお店は、
おはぎで有名な
『タケノとおはぎ』さんである。



もともとおはぎは
「ご飯とあんこが混ざった不思議なもの」
という認識だったため、

あまり惹かれることもなかった。
そのため食べることも少なかった。



しかし、
芸術作品のようなおはぎと出会い
おはぎに対するイメージが変わった。


また、
いつの間にかそのおはぎに
惹かれ始めていた。



そしてわたしは、
いつかおはぎが好きな母に
この華やかなおはぎをプレゼントできたら
どんなに良いだろうか、と思っていた。


けれど、帰省のタイミングもなく
一人暮らしのお家からお店まで
かなり離れていたこともあり、
諦めていた節がある。



◇◇◇


ちょうど今年のGWに帰省した際、

母が美味しそうなおはぎを見つけたと、

わたしに嬉しそうに
スマートフォンの画面を
見せてくるのであった。

その時わたしは、驚いた。

2年前、
その美しいおはぎを見つけたことを
母には伝えていなかったけれど、


母がわたしとは異なるタイミングにて
そのおはぎと出会い
こうやって話題に出てきていることに
驚きを隠せなかった。



わたしは、
なんだかおはぎを買って
実家に持って帰る使命を
与えられたような気がしてならなかった。



だからわたしは、
こころの中で自分に約束をした。


次の帰省のタイミングで
このおはぎを持って帰ると。


そして
その次の帰省とは、
東京の一人暮らしのお家を引き払い
完全に実家に戻る5月末のタイミングだった。




◇◇◇


東京にいるのだから
買いに行くことは容易に思えた。

けれど、タイミングの問題で
購入までは少し難があった。


わたしは、
人気なお店だからこそ
営業日や予約方法を知ることは
必須であると思った。


予約は電話予約のため
大丈夫だと思ったが、
問題は営業日だった。



営業日と休業日を見てみると
休業日が、
月曜日と火曜日だった。


わたしの引越しは、5月31日の月曜日。


そう、休業日に当たる。

そして、あの美しいおはぎは
賞味期限が短く、
その期限は当日らしい。

そのため、
買ったその日に食べなければならない。

わたしが、
おはぎを購入できる最短の日にちは
6月2日水曜日であった。

一人暮らしのお家を引き払い
実家に戻るまでの空白の2日間。



その2日間、どうしようかと思った。



次に
いつ東京に来ることができるか分からない。

だから
チャンスは今しかないと思っていた。
諦めるわけにはいかない、と。

けれど、
荷物も完全にない状態であるし、
手荷物を増やしすぎると
帰省が大変になる。



迷った挙句わたしは、

気の置けない友人にお願いをして
2日間お家に泊まらせて
もらうことになったのだ。


2日間も泊まらせてくれるなんて
本当にありがたい。

◇◇◇



購入当日、
つまり完全帰省の日。


わたしは
初めて桜新町に赴いた。


後から友人に聞いたのだが、
桜新町はサザエさんの街らしい。


街中にサザエさんがいるとのことだが


わたしは、
サザエさんも見つけられないくらい
おはぎに必死だった。



おはぎを購入するために
ただ前を向いて進んでいた。






念願のおはぎ。




購入できた時は、
嬉しくてうれしくてたまらなかった。



このまま、形を崩さずに
大切にして持って帰ろう、


そう誓った。




友人宅から桜新町、
桜新町から東京駅、
そして東京駅から広島。



その日の移動距離はかなりのものだったが、
無事実家に着いた時は
なんとも言えぬ達成感だった。




◇◇◇


母は、実家でおはぎを楽しみに待っていた。


母に、
買ってきたおはぎを差し出した時の笑顔は
わたしが今まで記憶する中では上位に
嬉しそうで満足そうな笑顔だった。



わたしも
その笑顔を見て
こころの底から嬉しかった。


少しだけだけど
親孝行ができたような気持ちがして、
嬉しかったのだ。



◇◇◇


大人になって
親と過ごす時間はかなり少なくなった。



だからこそ
実家に戻ってきて過ごす今


その時間は、
とても貴重な時間なのだと思える。



わたしが
またいつ旅立つかわからないというのも
理由の一つになるかもしれないけれど、、。


その貴重な時間の中で
楽しく嬉しかった
親との想い出を作っていくことが


今できる最大の親孝行であると思う。



また、それが、
生きてゆく中で
こころの豊かさにつながるのかもしれない、


と最近思うようになった。

◇◇◇

※母は、粒あんが好きだったみたいです。
個人的にはパッションフルーツのおはぎが
甘さと爽やかさが相まって
とても美味しゅうございました。


2021.6.8   Haruka.・*


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