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《思考の柔軟性が弱いタイプ》のアセスメントとその支援の方法   その11 実例の細部から、支援の方法の本質を学ぶ-⑤ 「行動で要求する子ども」

 事例5 行動だけで「自分の要求」を伝えよう
     としている《自分言葉》

 6年生の算数の授業。円柱の体積の求め方の説明のあと、練習問題のプリントが配られた。E君は、配られるとすぐ課題を丸めて捨ててしまった。そのあと、机にうつ伏せになって寝たふりをしている。
 先生が近づいて「どうした、捨てたらダメじゃないか」とプリントのシワを伸ばして机の上に広げてあげた。すると、今度はプリントを破って紙吹雪にした。

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【解説】丸めて捨てて寝たふりをしたのは、先生を呼ぶためでした。分からないから、教えて欲しいのです。先生には「教えて欲しい」まで理解が及びません。優しい先生は、プリントを拾ってシワを伸ばしてあげています。
 しかし、E君の思いと先生の行動は大きくずれています。だから、E君は紙吹雪をすることで「真意を分かって」と訴えているのです。でも、それでは先生に、返って真意は伝わりません。

 このあと、この優しい先生は、さすがに「僕が昨日、一生懸命作ったプリントを破るなんて」とかなり激怒していました。やはり、E君にも『頼み方』のコミュニケーションを教えてあげる必要があります。

【セリフ】
 近づいていって、丸めたプリントを机の上に載せながら、

先生「どうした、E。プリントを捨てるなんて。君はそんなことする人間じ
   ゃないよな。」

E君「・・・」

先生「分かったぞ。円柱の体積の求め方が分からなかったから、嫌になって
   捨てたな(「想像」)。そうだろう。」

E君「そう。」

先生「分からないとやる気にならないな(「共感」)。分かるよ。だからと
  言って、プリントを丸めても、何の意味か全然先生には分からないぞ。
  E、本当は教えて欲しいんじゃないのか(「想像」)。そうだろう。」

E君「教えて欲しい。」

先生「それなら、紙など丸めないで『先生、ちょっと来てくだい』と先生を
  呼んで『すみません。先生、もう一度円柱の体積の出し方を教えてくだ
  さい』と言わないとダメだな(「覚えて」)。分かったか?1回、練習
  してみなさい。」

E君「すみません。先生、もう一度円柱の体積の出し方を教えてくださ
   い。」

先生「よし、分かった。もう一度教えよう。その前に、そのプリントを広げ
   てシワを伸ばしてくれるか。そのプリントを使って説明するから。」

E君「分かりました。」

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