《思考の柔軟性が弱いタイプ》のアセスメントとその支援の方法 その16 実例の細部から、支援の方法の本質を学ぶ-⑩ クラスメイトへの頼み方
事例10 「どいてくれませんか」を《自分言葉》
で言うと[どけ。じゃまだ」になる
6年生のJ君。先生に「授業で使ったDVD3台を、職員室まで持っていってください」と頼まれた。張り切って持っていこうとすると、入口で4人のクラスメイトが立話をしている。邪魔で、通れない。そこで、J君は叫んだ。
J君「どけ。じゃまじゃ。」
4人「何でだ。お前が後ろの入口に回れ。」
J君「先生の荷物持ってるのが、見えないのか?」
4人「知るか。俺らの方が、先にここに来たわ。」
J君「うるさわ。殺すぞ。」
このあと、J君はDVDを投げ捨て、4人に殴りかかった。
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【解説】4人のクラスメイトが、意地悪なわけではありません。J君の頼み方が悪かったので、4人が腹を立てて意地悪をしたのです。彼に「人に何かを頼むときには、下手に出てお願いする」ことを教えないけません。
丁寧に頼めば、4人は場所を譲ってくれたでしょう。DVD3台を親が弁償することもなかったでしょう。
これは集団で暮らしていくためのスキルですが、人の気持ちを知ることでもあり「やさしさ」の始まりでもあります。
【セリフ】
先生「J、君はいい人だと思いますよ(「共感」)。先生のお手伝いを積極
的に申し出てくれたりしますからね。じゃ、今回どこが間違ってい
たか分かりますか?」
J君「友達を殴ったこと。」
先生「違いますね。それは間違った結果です。間違ったのは頼み方です。
君は、4人にどいて欲しかっただけだろう(「想像」)。別に、怒っ
ていたわけじゃないだろう。」
J君「そう、どいて欲しかった。」
先生「そうだね(「共感」)。そ言うときは、丁寧にお願いする言葉を使わ
ないといけないんだな(「覚えて」)。」
J君「・・・」
先生「分からないだろう。頼み方を教えておくから、覚えておいてくださ
い。頼むときは丁寧に『悪けど、どいてくないか』と言うんだ(「覚
えて」)。もちろん言えるなら、その後『先生のDVDを、職員室まで
持っていくんだ』と付け加えてもいいけどね。分かった?」
J君「なんとなく。」
先生「なんとなくでいいから、練習してみようか。先生が今、君の前にい
て邪魔です。さぁ、頼んでみて。」
J君「悪いけど、どいてくれないか?(「すみません」)」
先生「それでいいけど、相手は先生だから、そこは『すません。悪いけ、ど
いていただけませんか?』だね(「覚えて」)。」
J君「分かった。」
先生「『分かったじゃ』なく『分かりました』だね。言葉の正しい使い方を
学んでいってください(「覚えて」)。今回は、いい勉強になった
ね。」
J君「はい。なりました。」
先生「そう、それそれ(「共感」)。」
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