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東京という街の、憧れの先にあったもの。

26歳で上京して早いもので10年経つ。


瀬戸内海の田舎で育った私は、当たり前に東京に憧れた。

だってテレビをつけると、朝のニュースや土曜日の午前中はどこも東京の飲食店や最新スポットの情報ばかりでうんざりする。

テレビの報道は東京とその他の地域。東京以外の地域は全てその他の1つとして、ひとくくりされてるように感じた。

まるで東京が日本の全てで、東京に憧れるように仕組まれて報道されている感覚に陥った。ローカル以外の民放でも、もう少し地方の情報を流していいんじゃない?地方もいい所が沢山あるんだぞ。同時にそんな寂しさも感じながら…


東京に住みたい気持ちはあったけど、大学などの進学で上京を逃すときっかけが難しいよね、そんな風にいつも誰かや環境のせいにして自分自身を納得させる。そして、もうそんな自分にもうんざりだった。

「親が東京の大学を進めてくれて、一人暮らしをしていたら今頃どんな人生だったろう?」


そう、いつだって私は他力本願。


地元で歯科衛生士の専門学校を卒業後、就職してすぐに2歳年上の彼氏もできた。

その彼に聞いた事がある。

『東京に憧れたりせんの?』

『ない。わいは、生まれ育った瀬戸内海が大好きや。友達と家族のそばにいる事が何よりも大切やから。早く仕事で一人前になって、結婚して、子供が欲しい。都会に行ってる暇なんてない。』そう彼は言い切った。

自分にとって何が幸せか、明確に言い切れる彼はとても強い。

私にとっての幸せは何?


結局、答えを出せなかった私は同棲していた彼とは別れて、26歳で上京する。


憧れを1つ1つ消して自分の幸せを定義しよう。

だけど、私の憧れの先にあるものは、きっと虚無感だろう。  

そんな事は容易く想像できた。


環境などで自分の心が満たされていてもいずれ飽きがくる。人は欲深い生き物だから…

もっともっといい生活を、もっと上を目指して。そして、その先にはきっと虚無感が待っている。

きっと彼が言うように、人が根本的に幸せを感じるのは、環境や物ではない、人と人との繋がりと温かさなんだ。


早く心の底から、憧れの先にある虚無感を抱いて他者を求め、幸せになりたいと思った。


そう、私は地元にいた時は幸せだった。家族、友達、彼氏、長く続いた職場、温かい人の繋がりに恵まれすぎていた。だからあえて、幸せだったことを気づくためにリセットしたかったのかしれない…

引っ越した場所は中目黒。そして、縁があったのか今もこの土地に住んでいる。   



住んで分かった事。  

当たり前だけど、東京は人によっては生活するだけの、ただの街だという事。

キラキラしてるのはメディアの情報や、東京が遊び場である人のSNS という事。


家にたどり着くまで沢山の行列ができているお店がある。そのお店は本当に美味しいお店もあるだろう。だけど、大人の事情で誰かが意図的に仕掛けたお店も沢山ある。

東京という、何が本当で嘘なのか識別できない街で、せめて本当の事を話せる家族を心の底から欲しいと思えた。 


夫との出会い


夫とはマッチングアプリで出会う。

3回目くらいのデートで代官山で待ち合わせした時、夫の服装を見てびっくりした 。

「げっ。」

チェックのズボンにボーダーのシャツを合わせていたのだ。


 私は一緒に歩くのが恥ずかしくなってしまい、早歩きで知り合いに見られてないかな?そんな事を考えてしまった。 

あぁ。せめて下はユニクロの無地のズボンだったらどんなによかったか…。そしたらこんな冷や汗をかく必要はなかったのに。

あまりにも服装の衝撃が大きく、早歩きしながする彼との会話は全く頭に入ってこなかった。


上下を柄×柄にする夫は、他人の目を一切気にしない証拠だ。 

ただ、不思議とそんな所が彼の素敵な所だなと思ったのを今も鮮明に覚えてる。  

だって東京にいると、最先端な物に触れていつだって自分のセンスを磨けるのに‥ そんな中、独自の価値観を持ち続ける彼。 それって逆に凄くない?難しくない?むしろ流行りの服を着たほうが楽じゃない?

『自分を良く見せる』ことに興味がない夫。

 そんな人と一緒にいるとホッとして、

私も取り繕う事のない
ダサい自分と本音を夫にさらけ出せた。

*
 
 田舎から上京してあっちかなこっちかなとフラフラして都会に浮かれて、人の目を気にしていた私に、東京なんてただの街じゃない。買い物する街が沢山あるだけ。人が根本的に幸せに感じる部分はそんな所じゃないよと言い切る夫。


そして私もやっと自分の幸せの定義をだせた。 


現在の私の生活はとても地味である。中目黒に住んでるからと言って、セレブ御用達の高級マンションには住んでないし、スターバックスリザーブに行くのは年に1,2回だし、インスタグラムもしてない、テレビも見なくなった。 

メディアが紹介した流行りのスポットを通りすぎ、楽しそうにおしゃべりしながら並ぶ若者にエネルギーを貰い、心の中で若者にエールを送り、スーパーのライフに寄って、決して広いとは言えない家に帰宅して、料理をする。

そして、オシャレではない服装で街をブラブラして、時には空いてるカフェでお茶をする。

 

そんな私の生活は映えてないけど、本音で話せるパートナーと慎ましい暮らしがある。私がご飯を炊いて、夫が残ったご飯を分けて、ラップに包んで、冷凍する。そんな、慎ましい、淡々とした暮らし。


憧れと好奇心の先に出会ったのは、そんな生活だった。 

ある日、夫が服を選びながら私に聞いた。

「もう少し服のセンスよくした方がいいかな?」

「自分の好きな服を着たらいいんじゃない?」


あの時の衝撃を思い出し、少し笑いながら、そう答えるわたし。

「ねぇ、何ニヤニヤしてるの?」

「いや、別に。ただの思い出し笑い」

自分の幸せの定義を見つけれた私はもう大丈夫。表面的な取り繕ったものに惑わされない。

大切な人と、その人の価値観をずっとずっと大切にしよう。


あの時みたいにもう後悔はしたくないから…


*


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