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無理難題を”夢”で乗り越えた!実写版「ONE PIECE」全話感想

ブラボー尾田っち、Netflix。
よくぞここまでやってくれた。

というわけで、観る前はちょっとパンドラの箱に開くような不安があった実写版「ONE PIECE」ですが。
いやはや、実によくできていました。
ハリウッドによる日本漫画実写化においてはベスト作品なんじゃないですかね。


"夢"にテーマを絞ったことが成功に繋がった

実写版「ONE PIECE」では、頻繁に"夢"の話が出てきます。
”海賊王になる”という夢に向かって進むルフィは、メインとなる登場人物みんなに聞きます。「お前の夢は?」と。

仲間たちは彼の言葉で過去の自分を思い出し、自分の夢を再認識する。
彼についていく道を選ぶものもいれば、別の方向に進んでいくものもいる。
しかし、みんなルフィの影響を受けて自分の”夢”に向かって進んでいく…

どんどん派手な能力バトル作品になっていく原作マンガとは切り分け、ルフィとその仲間たちの”夢”を目指す姿勢にしっかりフォーカスしたこと。
それが、本作に揺るぎのない”芯”を作っています。

アクションが思ったより地味な部分や、割愛された名シーンもたくさんあります。

ただ、それにも全部納得感があって。
登場人物の夢を描くために必要なのは、派手なバトルシーンでも泣けるシーンでもない。
主人公たちの夢に繋がるシーンがどうかで取捨選択をかけているのがすごくわかるので、物語にブレがないんですよね。
この一貫性が、本作が成功した一番の秘訣だと思います。


物語の再構成が非常に上手い

基本的には原作のストーリーを踏襲している訳ですが、前述の通り主人公たちの”夢”に絡まないシーンを順番に削ぎ落して再構成してあります。

例えば、原作ではバラティエ編のラスボスだった首領・クリークはミホークにボコられ出番が30秒で終了。ルフィと直接戦うことはありません。
他にも、原作ファンからは人気が高いガイモン絡みのエピソードもありません。他にも、細かいシーンがかなり数多くカットされています。

その代わりにフュ―チャーされたのが、コビーの存在です。
海軍将校を目指す彼は、海賊王を目指すルフィの対比として本作の裏主人公とも言える立ち位置におり、単独のシーンが非常に多く描かれています。
ルフィとは違う立場で大きな”夢”を目指す彼は、この物語の裏回し的な存在となっていくのかもしれません。

主要キャラの回想シーンはかなり丁寧に描かれており、それぞれが”夢”を志した理由がちゃんと描かれているのも感情移入しやすくて良かったですね。

原作の設定をなぞりながらも改変されたつくりは所見の人にはテンポよく映るだろうし、原作履修勢からするとどの場面をどうアレンジしたかという別の見どころもあって。様々な楽しみ方ができます。


キャスティングはぴったり、多様性にも配慮

尾田先生肝入りのキャスティングは、前編通して本当に見事でしたね。

ルフィ役のイニャキ・ゴドイは、本当もう全部ルフィでびっくりします。
自然に笑い、自然に飛び、自然に叫ぶ。
ネタにならないギリギリの範囲で、それらすべてをこなす。
もうナチュラルボーンルフィというか、彼以外の主人公は考えられないですね。
顔が似てないとか言った奴、本当一回観てから判断した方が良いと思う。

真剣佑は、本作のイケメン担当。もう、登場シーン全部カッコ良い。
眼光、剣捌き、立ち振る舞い。全部カッコ良い。
原作より寡黙なのがリアルだし、人の善悪を本能で嗅ぎ分ける感じが実にゾロ。アニメや漫画のキャラにそのまま近づけるのではなく、本質的なゾロの部分を引き寄せているというか。そんな感じがしましたね。
アクションに関しては、「るろうに剣心 The final」で雪代縁を演じたのが活きていましたね。マジでカッコ良かった。

ナミ、サンジ、ウソップの3名もそれぞれハマってるし、5人並んだ時のバランス感も最高です。
ウソップや赤髪海賊団のルゥに黒人を配して、ちゃっかりそっち対策しているのもぬかりないですよね。ちゃんと世界市場を意識しているのが分かる。

ガープやミホーク、シャンクスのイケオジ勢や、コビー、ヘルメッポ、バギーもそれぞれ原作にそっくり。素晴らしい再現度でした。
特にヘルメッポは良かったですね。序盤のクソ野郎演技から後半の熱いシーンまで魅力的に演じてました。

まあ、少し言うならマキノやくいなが全然可愛くなかったのはどうかと…あ、まさかそれはそっち対策か?…これ以上は言うまい。
そうだとしたら、これ以上ないうまい采配ですね。
まあ、シーズン2があったとしてあのくいなそっくりのたしぎが出てきたらちょっと萎えますけど。


アクションシーンはちょっとショボいけど、他の描写でお釣りが返ってくる

ひとつだけ文句をつけるなら、アクションシーンはショボめです。
やっぱ、ゴムの描写はちょっと違和感ありましたね。
「ゴムゴムの鞭」とか「ゴムゴムのガトリング」は頑張ってましたけどね。

あと、クロのハイスピード移動もちょっと笑っちゃった。笑
まあ、実写で表現しようとするとああなっちゃうのは仕方ないんですけども。「X-MEN2」(2003)のナイトクロウラーみたいな動きでしたけど、あっちの方が良かった。笑

ゾロの殺陣も良かったですが、正直「るろうに剣心」の方が上。やっぱ、あの作品は殺陣だけなら間違いなく世界基準だな。

サンジの足技と、バギーのCGの動きは結構文句なく良かったです。
アクション的にはこの2人がMVPかも。

まあでも、ぶっちゃけアクションシーンなんてオマケですよ。
それより、雄大な海を進むゴーイング・メリー号や楽しそうに叫ぶルフィの姿、チラっと見えるゾロの笑顔や本編最後に張られる麦わらの一味の帆…こういう描写がサイコーですからね。


さあ、というわけで。
評判も上々な本作、うまくいけばシーズン2もある訳ですが。
チョッパーがどう描写されるか、期待して待ちましょう。

まあ、ハリウッドにはヒーローに混じって戦う二足歩行のアライグマがいますし、人語を操って普通に暮らしているクマもいるのであんまり心配していないんですけどね。

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