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2023年の映画興行に見る「アニメ映画への人気集中」と「大ヒット作消滅」傾向

早いもので、2023年も半分を余裕で過ぎてしまいました。
今年は例年以上に幅広いジャンルの話題作が公開され、盛り上がりを見せている映画興行ですが。

数字を実際に見ていくと、ある傾向が顕著であることがわかります。

2023年 興行収入ベスト10(7/26時点)
①149.0 THE FIRST SLAM DUNK
②134.4 名探偵コナン 黒鉄の魚影
③132.2 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
④44.9 劇場版 TOKYO MER ~走る緊急救命室〜
⑤43.0 アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
⑥43.0 映画ドラえもん のび太と空の理想郷
⑦40.7 「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ
⑧37.9 ワイルド・スピード/ファイヤーブースト
⑨36.2 君たちはどう生きるか
⑩30.9 リトル・マーメイド
※数字は億円表記

基準を何となく解説すると、興行収入が100億円を超えるのは大体社会現象に近いような超大ヒット作です。
昨年で言うと、新海誠監督の「すずめの戸締まり」「トップガン:マーヴェリック」がそれぞれ140億円前後の数字をマークしていますね。
宮崎駿監督が10年前に作った「風立ちぬ」は120億円。
ちなみに、ウルトラスーパー特大大ヒット「鬼滅の刃 無限列車編」が400億、「君の名は。」は250億円です。

そして、50億円から100億円ぐらいに位置するのが大ヒット作。
わかりやすい例でいうと、2010年代に人気を博した「海猿」シリーズは大体これぐらいの数字でした。

30〜50億円も、映画興行としては立派な数字。十分にヒット作と言えるでしょう。邦画で言うと「るろうに剣心」シリーズ、洋画だと「ワイルド・スピード」シリーズは大体この辺をウロウロしています。

15〜20億円ぐらいがボーダーラインで、これぐらいから評価が分かれてくる。大規模公開で興行収入10億円以下となると、採算が取れていない作品も出てくるイメージです。

2023年のランキングをご覧頂いてわかるのが、1~3位までと4位以下の異常な数字の差。
3位の「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は現在も公開中でおそらく数字を150億円付近まで伸ばしてくるため、この後2位以上に上がることが確実な状況。

実質的な3位である「名探偵コナン 黒鉄の魚影」と、4位「TOKYO MER」の差はおよそ90億円。この差は非常に大きい。
2023年は、50〜100億円の間に入るような大ヒット作が消滅しているということになります

実は、この現象は昨年ぐらいから徐々に表面化。
2022年も50~100億円の作品は3つだけで、逆に130億円は3作。
30~50億円の作品は8作と、上位集団と水を空けられています。

ちなみに、昨年の年間TOP3は「ONE PIECE FILM RED」「すずめの戸締り」「呪術廻戦 0」であり、すべてアニメ作品。
そして、2023年の暫定ランキングもトップ3は全てアニメ作品なのです。

2020年の「鬼滅の刃 無限列車編」を皮切りに、日本の映画興行は完全にアニメ映画が主役になりつつあります。
マリオはイルミネーションの作品だけど米日共同制作だし、そもそもマリオは日本のキャラですからね。

このアニメ激強の傾向には、サブスクサービスの浸透と日本人の国民性が大きく反映されているんじゃないかと思います。

アニメ作品をこれまでより手軽に追いかけられるようになったし、続きなら誰でも観たいですよね。
サブスクでは実写ドラマも配信されていますが数が限定的。
利用者自体も若年層の方が多く、実写のドラマよりアニメの方がランキング上位に入っているのをよく見ますよね。

それに、日本人は何より無難を求める生き物です。
未知の作品を観に行くより、実績のある監督やシリーズの続きの方がある程度楽しめることが担保されている。

こういった要素が、アニメ映画への人気集中と興行格差を生んでいるのでは?と思います。

まあ、順当にいけばサマーシーズンの作品で「キングダム3」「ミッション・インポッシブル」あたりは50〜100億円には入ってきそうですけどね。

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