高木優至

観劇好きが高じて2018年4月に劇団ClownCrownに所属。前に出ることを嫌い、ひ…

高木優至

観劇好きが高じて2018年4月に劇団ClownCrownに所属。前に出ることを嫌い、ひたすら照明とか脚本とか裏方に徹する。2020年1月のClownCrownChaos#5公演にて、『人を想う』で作・演出・照明を行う。コロナ禍に入り最近はモノローグを中心に執筆中。

最近の記事

とある家族の物語

とある家族の物語  作:高木優至 ガタッ。 ガタガタガタッ。 建付けの悪い窓を開けて朝の光を浴びる。昨日とは打って変わって風が少し肌寒い。悟は「ふぁ~あ。」と一つ欠伸をすると、二階の窓から庭を見下ろした。そこでは妻の友子が洗濯物を干している最中だった。 こちらに気が付くと、にっこりとほほ笑んで軽く手を振っている。こちらも優しく振り返す。また洗濯物を干し始めた友子から“森のくまさん”が聞こえ始めた。どうやらご機嫌のようだ。 その歌声に誘われるように、小さな影が近づい

    • ポムとクロの物語(約30分)

      ポムとクロの物語   作:高木優至 ポム  僕っ子のヤマネ。 クロ  口が達者なカラス。  ゴリス ヤマネのガキ大将 スネッピー ゴリスの腰巾着 人間 農園の人間。 カラスA・B クロをのけ者にしているカラス達。  ポム、歌いながら登場。 ポム (歌:僕はヤマネ、ヤマネ、ヤマネ。森を駆ける元気な者さ。)うーん。今日も木の葉のざわめきが気持ちいいなー。小鳥さん達もおはよー。あー、やっぱり森は楽しいなー♪ あれ? でもなんか大事なことを忘れ

      • 私の家族

        私の家族   作:高木優至 両親とフランス料理店に来ている。飲み物だけ来ている。ワインが進む。 (間)ふーん。母さんの好きにすればいいんじゃない? 私そういうのよくわからないし。別に父さんが気にならないなら、それでいいんじゃないかな?(間)料理遅いね。フランス料理ってこんなもんなのかな? あー、そうかもしれないね。よくわかんないけど。(間)ん? びっくりした? まあ、私から誘う事なんて今まで無かったし…というかできなかったしね。給料もらって安定してきたから、たまにはこ

        • 婚活リベンジャー

          婚活リベンジャー   作:高木優至   婚活会場に女がやって来る。 あの、婚活会場ってここで合ってますか? え…あ、はい。千葉美幸と申します。千葉県の千葉に、美しく幸せで美幸です。はい。こちらは何回も利用させていただいているので。はい。もう今日という日をどんなに楽しみにして生きてきたことか。はい。 …え? そんなはずはないと思いますよ。もう一度よく探してみてください。いえ、日にちは7月24日金曜日。今日ですよね? はい、千葉美幸です。…え? そんなはずはありません

        とある家族の物語

          理沙とやせトガリのわんこ(第一話)

          理沙とやせトガリのわんこ   作:高木優至 第一話:出会い 「そっか、君も人間が怖いんだね。」 町を横切るように流れる加茂瀬川の橋の下で、白い小さなわんこと出合った。その出会いは一人と一匹にとって偶然であり、必然だった。 窓から差し込む眩しいほどの朝日。小学生の朝は早い。うちは母が起こしてくれないから自分で起きなくてはならない。あーあ、あと1時間遅ければもっと寝ていられるのに。 (あと5分。あと5分…ってもうこんな時間じゃん!) 慌てて顔を洗っ

          理沙とやせトガリのわんこ(第一話)

          幸せになろうね

          幸せになろうね   作:高木優至    娘が実家に帰って来る。 折角の連休に実家にしか来るとこ無いなんてほんと寂しい娘だわ。その若さならもっと楽しい事なんていくらでもあるでしょうに…お茶しかないけどいい?  で、今度は何? あー、はいはい。もう4回目。それ今年入ってから4回目だわ。実咲。健君が休みの日にグータラしてるのは今に始まったことじゃないでしょ? あんね、あんたの父さんなんて家の事なーんにもさっぱり、本当にこれっぽっちもしなかったんだから。それに比べたら

          幸せになろうね

          紫陽花の咲く頃

          紫陽花の咲く頃   作:高木優至 木嶋 こより  高校2年生 福田 裕太   こよりの片思いの相手 瀬尾 麻里奈  こよりの親友 〇こより家玄関    こよりが来て靴を履く。 こより あ、大丈夫。忘れ物なんてしないよ。    こより、傘をちらりと見る。 こより 行ってきます。    こより、玄関を出て空を見上げ雨が降っていないか確認する。 こより よし、大丈夫。    こよりが通学していると麻里奈がやって来る。 麻里奈 おっはよ。 こより おはよう。麻里奈

          紫陽花の咲く頃

          萌えよ好き好き大作戦

          萌えよ好き好き大作戦   作:高木優至 (学校に登校してくる。教室。席に着く。) おはよう。おはよう、美幸。何か疲れた顔してるよ? 朝練? そりゃまあご苦労なこって。折角の華の女子高生のお顔が台無しだよ。あ、今日の保健体育2組だっけ? 移動面倒臭ー。これこれ美幸さんや。隣とは言うてもな、面倒臭いものは面倒臭いのじゃよ。あー、わしゃーもう一歩も動けーん。あーん、嘘嘘私の事見捨てないでよー。うん、じゃまた後でね。 なんだかんだ美幸とも幼稚園からの付き合いなんだよな。 “そん

          萌えよ好き好き大作戦

          ゆうしゃのパーティー

          ゆうしゃのパーティー   作:高木優至 (勇者と戦士と魔法使いが試練の祠に向かっている。) あの。…あの。私、わかってるんです。どこかから。見てるんですよね? あの、神様。先程の戦いも見てましたか? もちろん見てますよね? あの、私ご存じかと思いますが、只今MP0なんです。あの聞いてますか? 試練の祠に着く前に私のMP0なんです。信じられますか? いや、魔法使いがMP0ってもうこの世の終わりじゃないですか。私、まだ3日前に仲間になったばかりなんですよ。なのにMP0で試練

          ゆうしゃのパーティー

          星降りの神社

          星降りの神社   作:高木優至 (満月の夜の神社。) あれ、え、うわ…あ…え? あ、本当だったんだ。あの話。あの、その、なんだ…えっと。あー、その…おかえりなさい、太一。ってなんか違うか。 長々と続く階段の上、小高い丘に建つ御霊守(みたまもり)神社。通称、星降りの神社。星の綺麗な夜に行くと、あたかも自分に星が降り注いでいるかの様に感じる所からそう呼ばれている。あの日の夜も私は、太一に呼ばれて星降りの神社に向かっていたのだった。 今日は曇っていて星が見えないな。せっかく

          星降りの神社

          掴みとったサインTシャツ

          掴みとったサインTシャツ   作:高木優至 (居間で妻の写真を見ている。) ごめん。君が大切にしていたSAGのサイン入りTシャツ…捨てちゃった。どうしてかなぁ。何だか今はもう、とっても清々しい気分で一杯なんだ。心の重荷が取れたっていうか。ああ、ごめん。そりゃ怒るよね。君はSAG親衛隊のナンバー1番なんだから。あ、お笑い番組ちょっとうるさかった?ごめんごめん。サイト・アンド・グレイなんてグループ、君に出会わなかったら一生知ることなんてなかったよ。 覚えてる? 二人で行った

          掴みとったサインTシャツ

          小悪魔とおやすみ天使(2分)

          小悪魔とおやすみ天使   作:高木優至 (自宅。子供を寝かしつけている。) やっと寝てくれたか。寝顔はこんなに天使なのにね。今日も夕飯いらないって駄々こねる駄々っ子ちゃん。どうしてママの言う事聞いてくれないのかなぁ。おもちゃ散らかし放題なのも最早悪魔だよね。君は今日からちびっ子悪魔に認定です。 (イメージ曲:REIN SEKAI NO OWARI) そんな桜月(さつき)ももう6歳か…。子供の成長は早いねぇ。近所の人に会うたびに私の後ろに隠れてさ。そのさっちゃんが小学生

          小悪魔とおやすみ天使(2分)

          好きですハダカデバネズミ

          好きですハダカデバネズミ  作:高木優至 (自宅の飼育部屋。) どうです? 気持ち悪いでしょ? そうなんです。私も最初は「きもっ!」って思ったんですよ。ですがね、小学6年生の時に上野動物園に行ったんですよ。そうしたら出会ちゃったんですよ。この子たちに。ハダカデバネズミ。 もうツンツルテンのぶよぶよで、見るからに負け組ですよね。こうして見ているとなんか、田舎のおばあちゃんを思い出しちゃうんですよ。ほら、このつぶらな瞳なんて正におばあちゃん。あ、別に私のおばあちゃんが出っ歯

          好きですハダカデバネズミ

          ムシマニア

          ムシマニア   作:高木優至 (自宅の昆虫飼育部屋。記者が取材に来ている。) あ、そこ気を付けてくだされ。はい、ここが虫さんたちの別荘でごじゃります。色んな虫さんたちが百数種類ほど暮らしているでごじゃる。全部で数千匹はごじゃろうかのう。 ああ、いたいた。どうじゃ? このニジイロクワガタの見事な光沢。ほれほれ、ハナカマキリの何と美しい佇まい。はあぁあー、眼福眼福。この子たちがいれば記者さんの特集ページでも映えること間違いなしでごじゃろう。 ふむ。ま、確かにこの子達はメジ

          ムシマニア

          はちみつと二人分のコップ

          はちみつと二人分のコップ   作:高木優至 (一人暮らしの部屋。ぼんやりとした女性がじっとこちらを見ている。自撮りを始める。) えっと、あのですね。私、霊感とかそういう物って何も無いんです。というか無かったんですけど。今ですね。ほんとさっきからなんですけど、私の部屋にですね。居るんですよ。女の人が。うわー!って思ったんですけど、今の所何もしてこない様なのでこうして動画回してます。 あれ。見えますかね? あそこ、映ってんのかな? さっきからずーっと私の事見てるんですよね。

          はちみつと二人分のコップ

          お鶴の恩返し

          お鶴の恩返し   作:高木優至 (機織りをしている。) 喜んでくれるかな? あっ、私はお鶴。今訳あって絶賛機織り中なのです。実は「これは何かな~? 何だろ~な~?」と興味本位に覗いてしまったら、枝に頭が挟まってしまって。もきゅー!って感じでもがいている所をこの家の与一さんに助けてもらったのです。 「もう大丈夫だよ。」なんて優しい言葉もかけてくれたこのイケメン与一に、どーしてもどーしても恩返しがしたくなっちゃった私は「ええーい、もう行くしかないっぺさぁ!」ってな感じで、

          お鶴の恩返し