ego
わたしが相手に何かを望むのは、わたしが成し遂げることができないものを、ただ誰かに肩代わりしてほしいだけかもしれない。
欲しいと願ったものでさえも、そのすべてが自分のエゴで塗り固められたものだと、わたしは気づいてしまったんだ。
それなら、何も、望まなければいい。
ただ、傘も持たず、雨に打たれてみればいい。
そのとき嫌でも気づいてしまうんだ。
私たち人間が、地球上では、あまりにも無抵抗な存在だってことに。
もう何も考えたくないな。
そう考えながら、わたしは目を閉じた。
ねえ。キミにはなにが聴こえているの?
ねえ。キミにはどんな世界が見えているの?
たとえばこんな世界かな。
朝10時なんかに、キミは目を覚まして、猫のように伸びをするんだ。まるでほんとうに、「ニャ〜!」とでも言ってしまいそうに。
そしてそのままの格好で、近くの川辺まで、後ろに腕を組みながら、歩いていく。何も飾らない、ありのままのキミは、ほんとうにきれいだよな。
キミは急に立ち止まって、ふわふわとタンポポの綿毛の前にしゃがみこむんだ。すべてを温かく包み込むような笑顔で、綿毛をそーっと見つめて、何かを考えてる。
キミは何も言わないけれど、
「すべて、うけとめてあげるからね。」
そんなことを、思っているのかな。
でも、どこか寂しそうなキミの横顔が、わたしの心を、ぎゅっ〜!!ってしめつけるんだ。
そしてキミは、わたしの顔を見て、
とびっきりの、かわいい笑顔を見せる。
そう。キミならいいんだ。
キミになら、何かを望んでもいい。
キミに、好きでいてほしい。
キミに、愛してほしい。
そんなキミを、わたしはegoと呼んだ。
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