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大恋愛

大切な恋愛を過去にする前にここに来ました。恋愛はひとりとひとりではなくふたりなのに、今わたしはひとりになりました。愛はあるのに、あったはずなのに、どこに置いてきてしまったんだろう。過去を悔やむわけではなく、かといって前に進めるわけでもなく、ここにたたずんでいる、わたしのことを残します。

愛していました。愛が続いて、信頼になって、安心した。ずっととか、永遠とか、そんな言葉が存在しないことは知っていました。だからこそ綺麗だし、特別だし、かけがえのないもの、なんてことも全部知っています。知っているうえで、わたしは、わたしたちは上手くやっていたと思います。わたしたちは確かに「ふたり」だったし、「ふたり」の道を進んでいた。それを日常と呼んでいました。

日常は変化します。日常が変化しても変わらずいられることが愛だと思っていました。愛は続いていたし、限りなく永遠に近づいていました。そう思っていた。

変化したわたしは、わたしのことで精一杯でした。わたしには夢があるし、それに向かって走り続けることが喜びでした。あなたにも夢がありました。あなたは夢に向かって走るわたしの背中を押しながら、自分のペースで夢を追っていました。気づけば、スピードを加速させるわたしの隣で、あなたはのんびりコーヒーを飲んでいた。それが日常になっていきました。少しばかり寂しさもあったけれど、それも一瞬で、わたしはまた走り続けました。

走るわたしと止まったあなたの距離はどんどん開いていって、気づけば見えなくなりました。あなたはわたしの背中を見てくれていたのに、わたしはあなたがいない未来に向かって必死に走り続けていた。途中にあった寂しさも、どこかに落としてしまって、そのままにしてしまった。ふたりの未来は、ひとりとひとりになりました。わたしたちは、ふたりでいる意味を失ってしまった、ということです。

あなたのことが大切で、と言う資格をわたしは失ってしまいました。だって、今のわたしの生活に、あなたの影はどこにもなかった。いつから消えてしまったのか、思い出せないくらいずっと、ずーっと前から、あなたのことを忘れていた。それでもそばに居続けてくれるあなたに甘えていた。そんなわたしに嫌気がさしたというわたしのわがままも受け入れてくれる、そんなあなたを大切にできないわたしのことを、わたしは受け止めきれずにいます。わたしはいつからこんなわたしになってしまったんだろう。あなたがいないと生きていけなかったわたしは、わたしのために、わたしひとりで生きられるようになってしまった気がします。でも、それもきっと、あなたがいてくれるから生まれる自信で、本当にひとりぼっちになってしまったらあっけなく消えてしまうんだと思います。それならどうして、わたしはあなたを大切にできないのでしょうか。わがままなわたしは、わたしのために、あなたを幸せにできないと思ってしまっています。どうして?わたしは、ふたりの幸せのカタチを忘れてしまいました。

愛するということの正解が分かりません。正解がないから愛だったのに、ずっと正解を探しています。正解がないといられないようになってしまったのです。なんとなく一緒にいられたのは過去、今は、現実は、なんとなくなんかじゃ許してくれません。変わらないふたりでいられたら、ずっと一緒にいられたでしょうか。わたしたちは、変えてはいけないものを変えてしまったのでしょうか。変われたことは喜びだったはずなのに、変わったことで悲しみが増えてしまった。ねえ、わたしたちはそういう運命だったのかな。ただ一緒にいるということが、どうしてこんなにも難しいのでしょうか。

わたしの人生がいつ終わるのか分かりません。終わってしまうのか、終わらせてしまうのか、それも分かりません。人生は分からないことだらけです。信じられるものもありません。でも、ただひとつだけ、わたしには信じられるものができました。変わらない過去ができました。最期の日、わたしは今日のことを思い出していたいです。今日までのふたりの日々を忘れないでいたい。でも、あなたは許してくれるでしょうか。

大恋愛。はじめてふたりで終わらせた恋愛。好きでも一緒にいられないということを知りました。これが大人になるということでしょうか。大人になれないわたしは、悲しいという感情に飲み込まれて涙を流しています。この涙でなにか変われるでしょうか。大人になれなかった大人はどうなりますか。また答えを求めているわたしは、まだあなたにありがとうを言えない。




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