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#安倍晋三

安倍晋三氏の逝去から1年を経て考える「派閥の長としての安倍氏」の姿

去る7月8日(土)、安倍晋三元首相の逝去から1年が経ったことを受け、増上寺(東京都港区)において一周忌法要が営まれました[1]。

法要には安倍首相の夫人である安倍昭恵氏や岸田文雄首相、安倍派の国会議員などが参列したほか、一般献花にも多くの人たちが訪れました。

首相として日本の憲政史上最長の在任期間を記録し、退任後も現職の国会議員として活躍していた安倍氏が銃撃により逝去するとはだれにも予想できな

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安倍晋三元首相の没後1年に際して考える「目的と手段の関係」

明日、2022年7月8日(金)に安倍晋三元首相が銃撃され逝去してから1年が経ちます。

現職の国会議員が選挙期間中に殺害されるという出来事が、日本国内だけでなく国際社会に大きな影響を与えたことは周知の通りです。

一方、安倍元首相に対する凶行の背景に、安倍氏と旧統一教会との関係があったとされたことから、旧統一教会が選挙協力や資金提供といった点を通して日本の政界に一定の影響力を行使していることが明ら

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野田佳彦元首相による安倍晋三元首相への追悼演説はいかなる意味を持つか

昨日、衆議院本会議において安倍晋三元首相への追悼演説が行われ、立憲民主党の野田佳彦元首相が演説しました。

追悼演説の中で、野田氏は自らの首相在任中に野党第1党の自民党総裁であった安倍氏との間で行われた2012年11月14日の党首討論を最も鮮烈な印象があった出来事して回想するとともに、同年12月の総選挙を受けて野田氏が退陣した際に安倍氏から「自分は5年で返り咲いた、あなたにもその日が来る」と声をか

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「安倍元首相の国葬終了後」に岸田文雄首相に求められるのは何か

昨日行われた安倍晋三元首相の国葬儀について、実施を決定した岸田文雄内閣が十分な説明を行ってこなかったことが賛否の対立を深めた一員であるという点を本欄で指摘しました[1]。

しかし、当事者にとってこうした見方は、たとえその通りであると了解されていても認めることが難しいのは明らかです、何故なら、ひとたび説明の不十分さを認めれば、国葬の正当性そのものが失われかねないからです。

それだけに、昨日自民党

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安倍晋三元首相の国葬を巡る重要な問題点は何か

本日、日本武道館において安倍晋三元首相の国葬儀が執り行われました。

安倍氏については、首相在任中、とりわけ2012年12月に第2次内閣が発足して以来の政権運営の方法や各種の政策に是非の意見があるのは周知の通りです。

そのため、首相としての安倍氏の手腕や事績については、当時だけでなく現在、そして今後も不断に批判され、検証されることが必要となります。

一方、今回の国葬を巡っては、安倍氏の政治手法

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支持率低下に直面する岸田文雄首相に勧める「菅流」からの脱却

各種世論調査での支持率の低下に直面する岸田文雄内閣がどのような方法で苦境を脱すべきかという点については、一昨日の本欄で指摘した通りです[1]。

すなわち、海部俊樹内閣のように政治改革を標榜し、そのためにあらゆる努力を惜しまない方法が岸田文雄首相にとって重要な方策となります。

ところで、岸田内閣に対する世論の批判の背景となる事柄の一つとして挙げられるのが、安倍晋三元首相の国葬の問題です。

安倍

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「安倍元首相の国葬を巡る閉会中審査」はいかなる意味を持つか

昨日、衆参両院の議院運営委員会で閉会中審査が開かれ、安倍晋三元首相の国葬を巡る審議が行われました[1]。

衆議院議院運営委員会の冒頭で岸田文雄首相は安倍元首相の国葬について、以下の5点から適切な判断であるとしました[2]。

行政府の判断において安倍元首相の国葬を決定することは、例えば「行政権は、内閣に属する」という日本国憲法第65条の規定を根拠とすると考えれば、一定の合理性が存すると言えるでし

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岸田文雄は内閣改造と党役員人事でいかなる手腕を発揮するか

昨日、岸田文雄首相が訪問先の広島県広島市で記者会見し、内閣改造及び党役員人事を行うことを表明しました[1]。

今回の人事は新型コロナウイルス感染症対策、ウクライナや台湾の情勢への対応、あるいは安倍晋三元首相の国葬の準備などが理由とされており、連立与党である公明党の山口那津男代表が岸田首相から8月10日に実施する旨の話を伝えられたことを明らかにしました[1]。

7月10日(日)執行の参議院議員選

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What Is a Meaning of the Death of Former Prime Minister Shinzo Abe?

Former Prime Minister Shinzo Abe passed away at the age of 67 after being shot in the City of Nara on 8th July 2022.

To prevent political activity by violence, for whatever reason, is nothing less th

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「安倍派の集団主導体制への移行」が示す安倍晋三元首相の組織統治の特徴

去る7月21日(木)、自民党安倍派が総会を開き、7月8日(金)に逝去した安倍晋三元首相の後継者は置かず、9月27日(火)の国葬まで会長代理である塩谷立氏と下村博文氏を中心とする集団指導体制により派を運営するとともに、名称も維持することを決めました[1]。

派内に一派を率いるだけの知名度や集金力を備えた人物をにわかに見出すのが難しいこと、あるいは安倍元首相の不慮の死に対して国民各層からの同情が寄せ

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「安倍晋三元首相の国葬」を閣議決定したことの意味は何か

本日の閣議で、7月8日(金)に銃撃事件に遭難して急逝した安倍晋三元首相の国葬を9月27日(火)に日本武道館において実施することが決定しました[1]。

天皇や皇族を除き、国葬が行われるのは日本国憲法下では1967年の吉田茂元首相以来55年ぶりのこととなります。

今回は、吉田元首相の国葬の際に当時の佐藤栄作首相が葬儀委員長を務めた故事に倣い、岸田文雄首相が葬儀院長になるとともに、森昌文総理大臣補佐

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「安倍晋三元首相の国葬」の何が問題か

昨日、岸田文雄首相が記者会見を行い、7月8日(金)に逝去した安倍晋三元首相の葬儀を国葬として今秋に行うことを表明しました[1]。

日本国憲法下で国葬が行われるのは1967(昭和42)年の吉田茂元首相以来2例目となります。

安倍元首相の葬儀を国葬とするか否かについては、賛成と反対の双方の観点から意見が呈されています。

国葬であれ他の形式であれ政府が主催する葬儀に国費が投じられる以上、納税者とし

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岸田文雄首相の「改憲発議をできるだけ早く」発言は何を意味するか

昨日、岸田文雄首相は自民党総裁として党本部で記者会見を開き、改憲に前向きな勢力が参議院での発議に必要な3分の2以上の議席を維持した結果を巡り、「出来る限り早く発議に至る取り組みを進める」と表明しました[1]。

衆参両院で改憲のための発議を行える状況にあり、しかも7月8日(金)に逝去した改憲派の安倍晋三元首相の「思いを受け継ぐ」という岸田首相の発言からは、いよいよ憲法改正のための発議の可能性が高ま

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「安倍晋三元首相の死」からわれわれは何を学びうるか

昨日、奈良市内で銃撃された安倍晋三元首相が逝去しました。享年67歳でした。

首相経験者であるか否か、あるいはどのような理由による犯行か否かを問わず、政治活動を暴力によって妨げることが政治家の自由な活動を阻止することに他ならないのであり、それゆえに遭難したのは安倍氏であってもその影響を受けるのは政治活動に携わる者一人ひとりであるという点については、昨日の本欄で指摘した通りです[1]。

また、公衆

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