「安倍晋三元首相の国葬」の何が問題か

昨日、岸田文雄首相が記者会見を行い、7月8日(金)に逝去した安倍晋三元首相の葬儀を国葬として今秋に行うことを表明しました[1]。

日本国憲法下で国葬が行われるのは1967(昭和42)年の吉田茂元首相以来2例目となります。

安倍元首相の葬儀を国葬とするか否かについては、賛成と反対の双方の観点から意見が呈されています。

国葬であれ他の形式であれ政府が主催する葬儀に国費が投じられる以上、納税者として国税の使途に深い注意を払い、是非を論じることは重要です。その意味で、安倍元首相の葬儀を巡り議論が起きることは、税金の適切で適正な使用という観点からも大いに評価されます。

一方で、2度にわたり政権を担当し、その間に行われた様々な政策への評価がいまだ定まらず、肯定的な見解のみではなく否定的な意見が示されているのも事実です。あるいは、支持者の結束のために対立する勢力を過度に批判するといった国会の内外での態度がしばしば人々の顰蹙するところとなったことも、記憶に新しいものです。

従って、こうした生前の姿から安倍元首相の国葬に反対することは、心情の面では理解しえないものではありません。

また、安倍元首相を支持する人々が遭難し非業の死を遂げたことを悼み、国葬こそふさわしいとすることも、当然の反応でしょう。

ただし、問題はそれぞれの意見が「安倍さんだから支持する」あるいは「安倍さんだから反対」といった形を取りやすいことで、これでは議論がかみ合わなくなり、双方が何らかの了解を得ることを難しくします。

それだけに、今回の問題について議論する場合には情緒ではなく事実に基づいてそれぞれの意見が示されることが不可欠です。

それとともに、問題の一端が国葬に関する法的な根拠がなく、どのような種類の葬儀を行うかがその時々の政権の裁量にゆだねられるという点にあることを考えるなら、今回の一件を契機に国葬を含む政府が葬儀に関与する場合の規程を速やかに策定することが重要となります。

これは、あたかも福田赳夫内閣で始まった元号の制定に関する法律が大平正芳内閣で元号法として成文化したように、根拠規程があれば回避できる対立を問題としないためにも、必須の措置です。

その意味でも、岸田首相には主体性を発揮し、政府による危機管理の一環としても国葬等に関する法律の制定が望まれます。

[1]安倍元首相秋に国葬. 日本経済新聞, 2022年7月15日朝刊1面.

<Executive Summary>
What Are Problems of the State Funeral for Former Prime Minister Shinzo Abe? (Yusuke Suzumura)

Yesterday Prime Minister Fumio Kishida says that the Japanese Government will hold the State Funeral for Former Prime Minister Shinzo Abe in this Autumn. In this occasion we examine problems of Government's idea to do such funeral.

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