「安倍晋三元首相の死」からわれわれは何を学びうるか

昨日、奈良市内で銃撃された安倍晋三元首相が逝去しました。享年67歳でした。

首相経験者であるか否か、あるいはどのような理由による犯行か否かを問わず、政治活動を暴力によって妨げることが政治家の自由な活動を阻止することに他ならないのであり、それゆえに遭難したのは安倍氏であってもその影響を受けるのは政治活動に携わる者一人ひとりであるという点については、昨日の本欄で指摘した通りです[1]。

また、公衆の面前で狙撃され落命したことは日本の憲政史上の惨事であり、主義主張や党派を超えて長逝に弔意を示すのは当然のことです。

その一方で、その死によって安倍氏を英雄視したり神格化することは、今回の出来事そのものとは関係ありません。あるいは、不慮の落命が政権担当時の事績の評価に影響を与えることもありません。

むしろ、その死と評価とを結び付けることには慎重であるべきであり、安易な態度は事柄のあるがままの姿を分かりにくいものにします。

さらに、警察当局が予断を排し、事実に基づいて容疑者の捜査に臨むことは当然ですし、報道機関が興味本位で取材を行い、報道することは、かえってわれわれが安倍元首相の死か様々なことを学ぶ機会を奪いかねません。

その意味からも、われわれは様々な事柄から必要な事項を弁別するという意味における理性を発揮して、今回の出来事についてそれぞれの観点や立場から考え、行動することが重要となります。

もし予期せぬ事態に際会するときに内なる自己が立ち現れるとするなら、われわれには、そのような状況に置かれることを理解し、いつにも増して目の前の出来事そのものに囚われず、事柄の背後を注意深く眺めることが求められます。

今回の安倍元首相の遭難を巡り、われわれが学ぶべき点は決して少なくないのです。

[1]鈴村裕輔, 「安倍晋三元首相襲撃事件」が許されないのはなぜか. 2022年7月8日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/5a93952d2c217ca2b028067bd7d4f4d2?frame_id=435622 (2022年7月9日閲覧).

<Executive Summary>
What Are Our Important Lessons of the Assassination of Former Prime Minister Shinzo Abe? (Yusuke Suzumura)

Former Japanese Prime Minister Shinzo Abe was assassinated during a campaign speech for the House of Councilors Election 2022 at the City of Nara on 8th July 2022. It is a very miserable incident and a remarkable event for the history of parliamentary politics in Japan. In this occasion we examine some important viewpoints from which we can study some remarkable lessons.

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