マガジンのカバー画像

評論

633
運営しているクリエイター

2024年2月の記事一覧

岸田文雄首相の衆議院政治倫理審査会への出席が持つ3つの大きな意味

本日と明日、自民党の政治資金問題を巡り、衆議院の政治倫理審査会が開催されます。

今回は、いわゆるパーティー券の収入の還流問題について、自民党の安倍派及び二階派の幹部5人とともに、岸田文雄首相が自民党総裁として全面公開の下で線稟申に出席します[1]。

岸田首相が現職の首相てして政倫審に出席するのは、衆参両院をあわせて初めてのこととなります。

それでは、岸田首相はなぜ異例の対応を決めたのでしょう

もっとみる

佐々木麟太郎選手のスタンフォード大学への進学が日本の学生スポーツ界に与える副次的効果は何か

花巻東高等学校で野球部に所属する佐々木麟太郎選手が米国のスタンフォード大学に進学することについて、私の見解は日刊ゲンダイの関連する記事にまとめられているとともに、本欄でもご紹介している通りです[1]-[4]。

また、こうした内容に基づき、テレビ番組などでも佐々木選手の進学の意義などについてお話しています。

一連のお話の中で特に私が取材される方に強調する点が、スタンフォード大学も所属する全米大学

もっとみる

ロシアによるウクライナへの侵攻開始から2年を経て思ういくつかのこと

今日、2022年2月24日(木)にロシアがウクライナに侵攻してから2年が経ちました。

侵攻したロシアの側にはロシアなりの理由があるとしても、侵攻されたウクライナの側に非がないだけでなく、武力によって他国の領土を併呑しようとする行為が到底受け入れられないことは論を俟ちません。

従って、欧州の安全保障の中核である北大西洋洋条約機構(NATO)や政治の中心である欧州連合(EU)だけでなく、NATOの

もっとみる

石橋湛山は首相を辞任しなければなかったのか

2月23日は、石橋湛山が1957(昭和32)年に首相を辞任した日です。

2か月の療養が必要という医師団の診断を受け、書簡を通して退陣を表明した石橋の判断は「まことに淡々として、一身の感情や利害を棄てて、政治の停滞を避けようという行動」[1] 、「せっかく待望の地位をえながら、その志を果たせなかった気持ちは、まったく同情にたえない」 [2]、「石橋書簡は保守党再建の捨石となるために、正しいと思って

もっとみる

「日経平均株価の最高値更新」はいかなる意味を持つか

本日、東京株式市場の日経平均株価は終値で前日より836円高い3万9098円68銭を記録し、従来の最高値である1989年12月29日の3万8915円87銭を更新しました。

1990年の大発会から値を下げ始めた日経平均株価は、日本企業の業績回復や物価下落からの脱却への期待から海外の買いが進み、34年1か月と24日ぶりの新記録達成となりました。

前回はいわゆるバブル景気のさなかであり、土地や株式への

もっとみる

期待される佐々木麟太郎選手のスタンフォード大学における学業とスポーツでの活躍

現地時間の2月13日(火)、花巻東高等学校で野球部に所属する佐々木麟太郎選手が米国のスタンフォード大学に進学することが発表されました[1]。

佐々木選手が米国の大学に進学することに関する私の見解は、日刊ゲンダイの関連する記事にまとめられている通りです[2]-[4]。

記事の中でも指摘したように、卒業するためには日々の積極的で主体的な学修が必要な米国の大学に入学することは、たとえ当初の所属が語学

もっとみる

トランプ前米国大統領による米国のNATOの防衛義務に関する発言はいかなる意味を持つか

現地時間の2月10日(土)、米国のドナルド・トランプ前大統領が北大西洋条約機構(NATO)について防衛義務を遵守しない可能性があることに言及しました[1]。

トランプ氏の発言はNATO加盟各国の反発と同氏が今年11月の大統領選挙で勝利した場合の米国の対外政策の変更を懸念させる一方、欧州側にとっては織り込み済みの内容でもあります[2]。

ところで、米国が「世界の警察官」ではないと明言したのは20

もっとみる

改めて考える小澤征爾さんの社会的な存在感の高さ

2月6日(火)に逝去した指揮者の小澤征爾さんについて、私が思い出したいくつかのことについては2月9日(金)の本欄でもご紹介した通りです[1]。

訃報が発表されてからの国内外の様々な媒体の報道は、新聞、テレビ、ラジオ、インターネットを問わずその足跡を丹念に紹介するだけでなく、あるいはレコード店の追悼特集を報じ、あるいは聴衆の声を取り上げるなど、一人の指揮者の長逝という枠組みを超える扱いがなされてい

もっとみる

アジアカップ準々決勝での日本対イラン戦について思ういくつかのこと

去る2月3日(土)、カタールのアルラヤンでサッカーのAFCアジアカップの準々決勝が行われ、日本はイランに1対2で敗れました。

最新のFIFAランキングで17位の日本と21位のイランが対戦した今回の試合は、アジアサッカー連盟(AFC)における二強の顔合わせでした。

前半に守田英正選手が先制点を挙げたものの後半はイランが同点に追いつき、最後はペナルティーキックにより逆転したことは、今大会の実質的な

もっとみる

武藤敏郎さんの「私の履歴書」が描き出した東京五輪の「問題の構造」

2024年1月期の日本経済の連載「私の履歴書」を担当したのは元財務次官の武藤敏郎さんでした。

「自分に向いていないようなら弁護士に転身する」と大蔵省に入り、接待汚職事件や2001年の省庁再編による金融と財政の分離による大蔵省の解体と財務省の誕生といった時代の転換点に当事者の一人として関わりつつ、財務次官として官界での栄達を極めた前半生と、「将来の日銀総裁」と目されながら衆参両院で多数党が異なる「

もっとみる