Yuuki Ota

静岡の大学で会計学とコーポレートファイナンスを教えています。

Yuuki Ota

静岡の大学で会計学とコーポレートファイナンスを教えています。

最近の記事

フードバンクに関する海外研究①

今回からはフードバンクに関する海外研究についてみていきます。 フードバンクの定義は以下のサイトを参照ください。 「全国フードバンク推進協議会」のサイトを引用します。 現在、ゼミ活動の一環で「食品回収会」と「食品配布会」を実施しております。NPO法人POPOLO様のご支援を賜って、何とか開催できております! 今後、活動について適宜アップしていけたらと思います。 An et al. (2019)のレビューゼミ活動の先駆けとして、今回からフードバンクに関する海外研究を数本レ

    • eスポーツの教育効果③

      前回に引き続きLemcke and Weh(2018)を読んでいきます。 前回の内容はこちら。 https://note.com/yukkyota0402/n/n419ee2c39f18 前回はeスポーツの教育効果に関するLemcke氏とWeh博士のやり取りが展開されていました。今回はその続きです。 Lemcke氏の発言 ・私たちはStiftung Digitale Spielkultur(レジャースポーツとしてのデジタルゲームのための財団)と共同で、記録コンテスト

      • eスポーツの教育効果②

        前回からえらく日が経ちました。 気が付けば1月も終わろうとしています… 今回はLemcke and Weh(2018)を読んでいきます。 まずは「要旨」について全訳しますと・・・ ・相互接続された自由でグローバルな世界において、eスポーツは着実に勢いを増している ・しかし、スウェーデン、米国、アジアと異なり、ドイツではこれまでeスポーツの社会的利益を認識しながらも、公式なスポーツとして宣言することに躊躇してきた ・eSchool-projectは、平和なデジタル社会にお

        • eスポーツの教育効果①

          23年2回目の投稿になります。 前回の記事において、eスポーツが不登校支援に一定の効果が認められる事例が存在することを指摘しました。 今回から数回にかけて、アカデミックサイドでの証拠を確認することにしたいと思います。 今回は望月先生の以下のレビュー論文を取り上げました。 論文の要旨 研究の目的:研究蓄積がない日本において、今後eスポーツに対するどのような研究が必要かを明らかにする 方法:先行研究のシステマティックレビュー 研究動機:eスポーツに対するポジティブな

        フードバンクに関する海外研究①

          note投稿における2023年の目標

          noteの投稿を放置したまま、すっかり23年となってしまいました。 本年も何卒宜しくお願い致します。 目標として…今年は定期的にnoteを更新していく所存です(本当かな?) しばらくは以下の記事に関連して、eスポーツについて考えていく機会にしたいと思います。 大学のゼミでeスポーツに関心がある学生が何人かいます。彼ら彼女らと今後記事と関連した活動をしたいね、と話していたところでした。 記事の要約 ・シューティングゲーム「ヴァロラント」をプレーする5人は元不登校の児童

          note投稿における2023年の目標

          取材記録:静岡県立大学学生有志団体「おつかいし隊」

          今回は取材記録を書きます。 私はこれまでも時間を見つけて気になる社会人起業家の方に取材をしてきました。noteに書くのは今回が初めてになりますが, 今後は定期的に書いていこうと思います。 今回は静岡県立大学の学生有志団体「おつかいし隊」を取材しました。 当団体は「募金だけでなく消費で熱海を応援したい」という学生の想いから結成された団体です。周知のとおり熱海はCovid-19と先日の土砂災害で大きな被害を受けています。「お土産屋さん」も例外ではありません。 私がこの活動

          取材記録:静岡県立大学学生有志団体「おつかいし隊」

          ファンダメンタル分析と将来業績:キャッシュフロー計算書を用いた企業のライフサイクル

          財務諸表と言われたら何を浮かべますか? 貸借対照表と損益計算書を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。 今回取り上げるのはキャッシュフロー計算書です。 日本では2000年3月期からキャッシュフロー計算書の作成が義務付けられました。今では貸借対照表や損益計算書と並んで重要な財務諸表とされています。 利益は出ているのにキャッシュがないから倒産する・・・ いわゆる黒字倒産です。 キャッシュフロー計算書の意義は利益ではなくキャッシュの状況を明らかにできることです。

          ファンダメンタル分析と将来業績:キャッシュフロー計算書を用いた企業のライフサイクル

          ファンダメンタル分析と将来業績:のれん

          会計処理の方法は各国で異なる場合があります。 とくに「のれん」をめぐる会計処理は日本基準と国際会計基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)とで大きく異なります。 日本基準は「のれん」を規則償却することを要求します。対照的にIFRSでは「のれん」は規則償却せずに減損処理の対象となります。 日本の中にはM&Aにより大規模な「のれん」を貸借対照表に計上する企業が存在します。 今回は『会計情報のファンダメンタル分

          ファンダメンタル分析と将来業績:のれん

          ファンダメンタル分析と将来業績:設備投資と将来業績

          前回に引き続き『会計情報のファンダメンタル分析』(桜井先生・音川先生編著)の中からファンダメンタル分析と将来業績に与える影響を検討していきます。 今回は第3章の「設備投資と将来業績」です。 設備投資の会計処理が丁寧に整理されている!この書籍で個人的に好きなのが34~35ページの内容です。設備投資の会計処理が整理されています。以下に要約します。 ・設備投資時点ではキャッシュアウトフローが生じるにもかかわらず期間損益計算上は資本的支出を費用として認識せずに繰延処理が行われる

          ファンダメンタル分析と将来業績:設備投資と将来業績

          ファンダメンタル分析:棚卸資産と将来業績

          前回のnoteで将来業績に影響を及ぼすファンダメンタルズシグナルについて先行研究レビューを基に考察しました。 今回からは数回にわたり以下の書籍から1章ずつ将来業績に影響を及ぼすファンダメンタルシグナルズを整理したいと思います。 この書籍の特徴は財務諸表から取得可能な様々な情報が将来業績に影響を及ぼすかを実証的に検証していることです。 また日本企業を対象にしており得られる結果は証券投資に有用であると考えます。 今回は上記の書籍の2章「棚卸資産と将来業績の関連性」をレビュ

          ファンダメンタル分析:棚卸資産と将来業績

          ファンダメンタル分析と将来業績:Abarbanell and Bushee (1997)のレビュー

          今回はファンダメンタル分析と将来業績の関連性を検証した著名な論文であるAbarbanell and Bushee (1997) をレビューします。 ※Abarbanell, J. S. and B. J. Bushee. 1997. Analysis, future earnings, and stock prices. Journal of Accounting Research 35 (1): 1-24. 最近、筆者が企業の投資水準と将来業績の関連性を日本の上場企業を

          ファンダメンタル分析と将来業績:Abarbanell and Bushee (1997)のレビュー

          経営者のタイプと取締役会のガバナンス:ジェンダー&ダイバーシティ

          21年8月6日、米証券取引所ナスダックが米国の上場企業に対して黒人など人種的マイノリティーやLGBT、女性の取締役登用を義務づけることを発表しました。取引所を監督する米証券取引委員会(SEC)は上場ルールの改定を承認したようです。 日本企業のジェンダーやダイバーシティに関する話題もよく目にするようになりました。例えば以下の記事。 東証1部上場企業の約4割が「女性役員ゼロ」のようです。女性役員の積極的投与を求めるコーポレート・ガバナンス・コードの規定とは対照的な事実です。機

          経営者のタイプと取締役会のガバナンス:ジェンダー&ダイバーシティ

          経営者のタイプと取締役会のガバナンス:CEOの二重性

          前回に引き続きFedero et al. (2020) から取締役会の構造の要素についての先行研究のレビューを検討します。 今回はCEOの二重性 (CEO duality) です (p. 356)。 ここで二重性とは例えば経営者が代表取締役社長と会長職を兼任することです。日本でも兼任はよく見られる事象です。 それではFedero et al. (2020) の内容を要約していきます。 CEOの二重性が見られるのは経営者が創業者のとき?Filatotchev (2006

          経営者のタイプと取締役会のガバナンス:CEOの二重性

          経営者のタイプと取締役会のガバナンス:取締役会の人数と社外取締役

          前回からFedero et al. (2020) をレビューしております。 本日から数回にわけて「取締役会のガバナンス」について見ていきます。 論文で提示されている「取締役会のガバナンス」は数が多いので、今回は取締役会の人数と社外取締役の部分を取り上げます (pp. 355-356)。 取締役会の人数(board size)取締役会の人数と経営者のタイプについては様々な証拠が報告されています。いくつか紹介してみます。 ・インド企業の機関投資家や欧米企業のVCは取締役会

          経営者のタイプと取締役会のガバナンス:取締役会の人数と社外取締役

          経営者のタイプと取締役会のガバナンスについて:家族経営と孤高な創業者の違い(SEW)

          前回はFedero et al. (2020) の表4を整理しました。そして①経営者のタイプと②取締役会のガバナンスが相互に関連しており、それらが③経済的帰結に影響を与えることを示しました。 今回は①経営者のタイプについて検討を加えることにします。Federo et al. (2020) は経営者のタイプとして以下の6つを挙げています。 ・家族 ・孤高の創業者 (Lone Founder) ・企業 ・機関投資家 ・ベンチャーキャピタル ・国家 今回は「家族」と

          経営者のタイプと取締役会のガバナンスについて:家族経営と孤高な創業者の違い(SEW)

          経営者のタイプと取締役会のガバナンスについて:先行研究におけるキーワード(Federo et al., 2020)

          今回もFedero et al. (2020) をレビューします。 今回は論文中の表4 (p. 355) を見ていきます。表4には経営者のタイプと取締役会のガバナンス、ならびにそれらの経済的帰結が非常にわかりやすく整理されています。 ①経営者のタイプについて ・家族 ・孤高の創業者 (Lone Founder) ・企業 ・機関投資家 ・ベンチャーキャピタル ・国家 ②取締役会のガバナンス ・構造 取締役の人数 (size)、独立性(independenc

          経営者のタイプと取締役会のガバナンスについて:先行研究におけるキーワード(Federo et al., 2020)