ゆきこ

ユニークなお子さん達のことを、物語として。

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ユニークなお子さん達のことを、物語として。

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支援員の役割

授業中、一番前の席の子が、そぉっと後ろを振り返った。3年生である。 その目は私をまっすぐにとらえていて、 手先がわずかに動いたので、 私は呼ばれたことが分かった。 その子に、はっきり頷いて、 OK!いま行くよ! という意志を示した後、 何気なさを装って、 他の子にもそっと声をかけながら、 少しずつ前に進む。 そぉっと振り返ったということは、 友達や、目の前にいる担任の先生には言いにくい用事なのだ。 授業中、子どもたちは、静かに座っているように見えても、 本当は様々な困り

    • メガネを取って!

      るい(仮)くんは1年生。 なかなか授業には、ついていかれない。 ※これは、前回の続きのようなお話です。 ある日、オレ専用の先生が来た。 おじいちゃんみたいな先生だ。 オレのクラスにはいろんな先生が来て、めんどくさいけど、オレの先生、ならいい。 だって、オレ専用だもん。 オレの先生は、いつもそばに居てくれて、困ると助けてくれる。ノートを書くのを手伝ってくれたり、キョウリュウの本を見せてくれたり、手品みたいにどんぐりを回して見せてくれたりする。 時々、怒られて、怒られるとム

      • おまえとはやらないからな

        るい(仮)くんは、1年生。 なかなか授業についていかれない。 先生の言っていることが分からない。 クラスは、みんな嫌なヤツばかりだ。 いちいちムカつくことを言ってくる。 ふと気がつくと、たいてい、お腹が減っている。 だから、大声で叫ぶんだ。 「おなかへったー!」 と。 そして、そこら中のモノを噛みちぎってやる。 先生たちは言う。 「あと少しで給食だよ」 とか、 「朝ご飯食べてこなかったの?」 とか、 「食べて良いのは給食だけだから我慢」 とか。 オレは我慢はできない質

        • 自分でできたことなのに

          えいと(仮)くんは、 一度、本を読み出したり、絵を書き出したり、タブレットを見出したりしたら、授業も給食もすっ飛んでしまう。本人の区切りがつくまで、なかなか終わりに出来ない。 そして、人から言われると余計に長引く。 というのを、この間実感した。 「書写の課題が早く終わった人から、タブレットをしていていいよ」 という指示があり、 えいとくんは、課題をきっちり終わらせて、嬉しそうにタブレットをはじめた。 タブレットは、本当に何でも出来るので、子ども達はそれぞれ、 お絵かきアプリ

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        支援員の役割

          けんかの仲裁

          けんかの仲裁というものが、本当に苦手。 なんか、どうやっても、双方に不満が残るような気がして。 先日も、後ろの席から前の席の子を、思い切り蹴っ飛ばしている子がいて、 「どうしたの?」 と、そばに寄ったら蹴った方が泣き出した。 どちらが先なのか、よく分からないのだけど、 何か言い合っているうちに、 ついに、手足が出たらしい。 こういうときの私の、非常にざっくりした結論は、 (結論なんてないんだけど、いや、そのけんかの数だけあるんだけど?その場の決着をつけるための結論として)

          けんかの仲裁

          やりたい気持ち

          子どもたちの机間巡視をしていたら、 りえこ(仮)ちゃんが、算数のプリントに取り組んでいた。 りえこちゃんは、ほとんど授業に参加しない。 絵を描いているか、寝ている。 体育や図工はやるけれど、それも気が向かなければ教室にいる。 無理に誘うと暴れてしまう。 4年生になって、算数に、しかもプリントに取り組んでいるところを見たことがなかったので、私はすごくビックリした。 それで、彼女のそばを通って、やっているのに気が付いたときに、思わず、 「お」 と、声が出てしまった。 でもな

          やりたい気持ち

          ひらがな

          2年生の時から付き合っている、こうたろう(仮)くんは、平仮名が書けない。4年生である。 そうか、書けないんだ! と、知ったのは最近で、なぜ分からなかったかというと、書かせなかったから、である。 体育以外、ほぼ、全ての授業に参加していなかったので、 どの先生とも、関わりは個別、となり、 個別で関わると、 気持ちを表現できないから書かないのか、文字を書けないのか、が分かりにくい。 本当は分からないといけないのだけど、分からないこともある。 どうしてかっていうと、本人のプライドを

          ひらがな

          わざとじゃない!

          りん(仮)くんと、りえこ(仮)さんは、今、席が前後でならんでいる。 ある日の昼休み、ふと気が付くと、りえこさんがりんくんの胸ぐらをつかんでいた。目は怒りに燃えている。 りんくんは、完全にパニックになっていて、 「せんせいーーー!!!たすけてたすけて!!!」 と、叫び出した。 りえこさんの口から、小さく 「死ね!」 と、聞こえた。 さっきまで、りえこさんは窓際の自分の席に座って絵を描いていたし、 りんくんはその近くにはいなかった。 なんでそんなことになっているのか、誰にもわ

          わざとじゃない!

          フリーズ

          ゆいと(仮)くんは、最近フリーズしてることが多い。 すべてを拒否して固まっている、というよりも、 内面で必死に情報処理をしていてフリーズしている、という方がしっくりくる。 ある時は、授業がはじまって20分くらいたっているのに、 自分の席(一番窓側)の横に立ったままだった。 たぶん、座りそびれちゃったんだと思う。 座る直前でフリーズしてしまった、というか。 担任の先生や友達に何回か声をかけられたが(私もかけたが)、 生返事をするばかりで座る様子がなかったので、 とりあえず、そ

          フリーズ

          反省しなさい!

          授業中に教室内外で、他の児童にちょっかいを出して叱られて、 その間に、活動グループのの話し合いが進んでしまったのがイヤだったと、 筆箱を投げ、ドアと給食ロッカーを蹴り飛ばした、なお(仮)くん。 担任の先生に気が付かれるやいなや、すごい勢いで怒鳴りつけられ、隣の部屋でさんざん叱られた。 今年度の担任の先生が、本気で怒鳴るのを、私もはじめて見た。怖い💦 散々叱ったあと、 「ゆっきぃ先生(私)とここで反省しなさい!」 とな😲 おいおいおいおい💦 この後、私かよ😭 なおくんは

          反省しなさい!

          せっかく決めたのに!

          その日の体育はリレーだった。 10人ほどのBチームの、ゆうな(仮)ちゃんはリーダー的存在で、走順を決めるときも彼女がグループを仕切っていた。 なお(仮)くん、という、毎日いろんなことをしでかすトラブルメーカー(クラスメートにとっては面倒くさい。でもたぶん面白がっている😁)がメンバーいても、 いつも他のチームに負けず劣らずのリレーができるのは、ゆうなちゃんの功績が大きい、と私は常々思っている。 Bチームがなにやらもめていたので、近寄ってみると、 案の定(という気持ちになるの

          せっかく決めたのに!

          ある日

          『ガシャーン!!!』 と、廊下で音がしたので、見に行くと、 給食のお皿が割れて(私の勤める地域ではお皿は全て陶器)、 破片の間におかずとご飯が散らばっていた。 「離れて離れて!触らない! 誰か、ほうきとチリトリ取ってきて! あと、トイレットペーパー!」 と、声をかけながら、片づけをはじめた。 低学年ではしょっちゅうなので、 (不注意ではあるが悪気はない。ちなみに私も割ったことがあります 💦) 子どもたちも慣れている。周りで見ていることはあっても、破片に手を出したりはしな

          コントロール

          怒りのコントロール。 なお(仮)くんが、謂われのない恨みを買って、 なんと、目の前で、鉛筆をボキッと一本折られてしまった。 「は?なんで?」 と、言ったなおくんの目は完全に据わっていて、 止めるまもなく、 パッと筆箱と厚みのある本を掴んでその子に投げた。 「なおくん!」 と、思わず大声をあげてしまった。 鉛筆を折った子には、担任の先生がササッと近寄ったのが見えた。 なおくんが、大声で止まることはない。 余計に興奮させてしまう。 分かっているんだけど、つい、出てしまう💦

          コントロール

          空白

          これは、私は、前に立って指示するとき、 やらねばならないと分かっているのに、なかなか出来なかったし、 やったとしても徹底できなかったところだ。 今日、ゆうき(仮)くんを見ていて、 あー、なるほど! 子どもたちの集団を動かすためには、やらねばならないのだと痛感した💦 私の担当する子どもたちには、おそらく、ほぼみんな、必要なことである。 その日の体育では、準備運動に縄跳びが入っていた。 先生が、 「前跳びを20秒します。30回跳べたらいいかなー」 と、言った。 そして、 「よー

          もうちょっとやりたい

          ゆうき(仮)さんは、1日のほとんどを教室の外で過ごしている。 (ゆうきさんは、「チーム」というお話にも出てくる子です。よかったらそちらもお読みください) 書字の苦手はあるが、計算などは出来る。 でも、教室でみんなと学習する事はほとんどない。 学習していないので、理解力はあるのだが、少しずつみんなよりも出来ない学習が増えてきている、とのこと。 教室の外でもよいから、少しでも学習の積み上げを、というのが、今の学校の先生たちの願いである。 ある日も、私が教室に着くと、 廊下にい

          もうちょっとやりたい

          先生はやったことないの?

          黒板を消そうとした私の手を掴んで、りえこ(仮)さんは、言った。 (りえこさんは、「そういう子なんだもん!」というお話に出てくる子です。よかったらそちらもお読みください) 「先生は、黒板に落書きしたことないの?」 「あるよ」 と、私は答えた。 「じゃあ、いいじゃん、私たちが書いても。 先生だって、やったことあるんでしょ?」 あるけどねえ・・・ と、私は思った。 私が消そうとしていたのは、 クラスの友達の悪口を下品な絵と一緒に書きなぐった落書きだった。 ちなみに、りえ

          先生はやったことないの?