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フリーズ

ゆいと(仮)くんは、最近フリーズしてることが多い。
すべてを拒否して固まっている、というよりも、
内面で必死に情報処理をしていてフリーズしている、という方がしっくりくる。

ある時は、授業がはじまって20分くらいたっているのに、
自分の席(一番窓側)の横に立ったままだった。
たぶん、座りそびれちゃったんだと思う。
座る直前でフリーズしてしまった、というか。
担任の先生や友達に何回か声をかけられたが(私もかけたが)、
生返事をするばかりで座る様子がなかったので、
とりあえず、そのままになった。そのまま20分。

ある時は、走っている途中でフリーズしてしまったらしく、
これには、本当に周りが困ってしまった。
なにせ、リレーの途中だったからね。
同じチームのみんなにものすごい勢いで文句を言われて(罵声を浴びた)、なんとか続きを走ったけど、その後は、何を聞いても、しばらくとんちんかんな答えしか返ってこなかった。

ある時は、着替えの途中でそれが起きたので、
体操着から洋服に着替えるのに、昼休み全部を使うことになった。
中途半端な格好でフラフラしているので、
Tシャツを、
「これ、着て!」
と、お母さんが幼児にするように、スポッと頭からかぶせてみたら、
条件反射のように腕を通したけど、たぶん本人に着替えた実感はない。

フリーズしている(内面で情報処理が行われている)んだろうな、と私が思うのは、
フリーズが解けた後のゆいとくんが、
「あ、俺、トイレにいきたかったんだ!」
と、授業の真っ最中なのに、いきなり言ったり、
「右側から反時時計回りってどういう意味?」
(カラーコーンを回ってバトンを繋ぐリレーだった)
って、聞いてきたり、
「え?昼休みもう終わり?」
と、驚いていたり、
フリーズした時の状態に、どうやら戻っているように見えるからだ。
タイムラグが生じている。

情報処理に時間がかかる子なんだな、というのは学習の面でも感じていた。
例えば、算数。

◆78÷6
という問題。4年生は筆算でこれを解く。

6「78 (算数記号がうまく出せなくてごめんなさい・・・)

7の上に立つのは、1である。
  1
6「78
  6
ーーーーーー
  18

というように解いていく。

◆56÷4
という問題でも、

4「56

5の上に立つのは、やっぱり1で、
  1
4「56
  4
ーーーーーー
  16

というように解いていく。
勘のいい子は、次に、
◆65÷5
という問題が出てきたときには、迷うことなく、6の上に1を立てる。
  1
5「65
練習問題では、こんな感じの、はじめに1を立てる問題がしばらく続くので、5問目くらいには、たいていの子が、迷いなく1を立てるようになる。

だけど、ゆいとくんは、毎回熟考する。
「えーっと、78÷6。まず、7÷6だよね。
6なんだから、2にすると12になっちゃうから、
ああ・・・1だね、ここは。」
「56÷4。
5÷4だから、えーっと、しにがはち・・・だと過ぎちゃうから、
これは、1だな」
「65÷5?
5の段で6になるやつ・・・は、ないから、えーっとお、
あ、1か!合ってる?」

という具合。
計算自体は、間違いが少なく正確。かけ算九九も問題がない。
算数が嫌いでもなさそう。正しく解けると、とても嬉しそう。

ただ、ゆっくりなだけである。
もともと困っているように見えることも多かったのだけど、
そこまで目立つことはなかった。
わりと、自分でも困っていることが言語化できたし、
苦手なことを無理強いしなければ、みんなに溶け込んで過ごせていたのだ。

しかし、どうやら、今年は、周りのスピードとのずれが大きくなってしまったようである。
それで、たぶんそういう彼らにとっての忌まわしい言葉、
「早く!」
「急いで!」
を連発されるようになった。
ので、さらに処理スピードが遅れてしまうようになったのだと思う。
PCやスマホでいうところの、処理が遅いからって、
バックスペースキーやエンターキーを連打したら、余計に動かなくなるように。

ゆっくりは悪いことではない。
だから、待てるといいなあ、と思っている。

なんでも、速いことがいい、みたいな世の中で、
「待つ」って難しいんだよね。すごく。
でも、黙って待つほど、子どもに信頼されることもない。

だから、明日も、待つ。
フリーズ?
よっしゃ、こい!大丈夫だ!と言えるくらいの余裕を持って☆


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