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支援員の役割

授業中、一番前の席の子が、そぉっと後ろを振り返った。3年生である。
その目は私をまっすぐにとらえていて、
手先がわずかに動いたので、
私は呼ばれたことが分かった。

その子に、はっきり頷いて、
OK!いま行くよ!
という意志を示した後、
何気なさを装って、
他の子にもそっと声をかけながら、
少しずつ前に進む。

そぉっと振り返ったということは、
友達や、目の前にいる担任の先生には言いにくい用事なのだ。

授業中、子どもたちは、静かに座っているように見えても、
本当は様々な困りごとを抱えている。

・先生の言っていることが分からない、
・問題が分からない、
というのはもちろんだが、

・暑い(寒い)、
・(まぶしかったり、妨げるものがあって)見えない、
・(何か大きな音がした時の話が)聞こえない、
・(あるはずなのに)ものが見つからない
・体調不良
・友達とのトラブル
などなど。

そして、それを言い出せない。

1人1人の小さな困り事を全て聞いていたらキリがないので、
担任の先生は、授業に大きく関わること以外は相手にしない。
もちろん先生方は、授業にかかわることはすぐに対応するし、個別の訴えも聞くが、
内容による言い出すタイミングと言い方は厳しく指導する。

勘のいい子どもたちは、それらをはじめの何回かで理解して行動できるが、
私が付いているお子さんたちのほとんどは、そういうことを理解するのがとても苦手。

例えば、
「寒い!」
と、先生の説明の最中に言っても聞いてもらえない
(あとから対応してもらえることがほとんどではあるが、その場では「今言うのは違うでしょ!」と言われることになる)が、
説明が区切れ、それぞれの活動が始まったタイミングで、
「先生、エアコン効きすぎて寒いです!」
と言えば、すぐに対応してもらえる。

逆に、
「○ちゃん、鼻血!」
というのは、大切な説明の最中でも、気が付いた人が言わなければならない。
説明が区切れるまで待って、友達が手も顔も真っ赤になってから、
「先生、○ちゃん、少し前から鼻血出てます」と、言ったのでは、
「気が付いたらすぐに言って!」と、言われてしまう。

難しいのである。
内容が日々の状況によって変わるわけだから、言語化するのも難しい。
きっちりルールを作ると、双方にとって苦しい。
曖昧なところは、毎日毎日、先生やクラスのみんなとのやり取りを積み上げて、
お互いのやり方をすり合わせていくのだ。

私は大人で、そういうことは子どもたちの何倍も積み上げている上に、
何クラスもの先生のやり方を見ることが出来ているけれど、
それでも、はじめてのクラスに入ったときは、
そのクラスの、先生の、子どもたちのやり方を読むのに、何日か、かかるもんな。
分からないときは、黙って見ている。
私でも、だ。

『ちょっと困ったけど、これって今、言っていいのかな?』

子どもたちも、言い出せないのである。
私が付いているお子さんたちは、余計にそうだと思う。
何十回も失敗しては、叱られた経験も積み上げてしまっている。

それでだ。
授業を進めている担任の先生には言えないが、
後ろで見ている支援員には言えることがある。

言えるけど、でも、他の人にはあまり知られたくない(内容も。今、聞こうとしたことも)から、できれば内緒で来て欲しい。

と、いうときの合図が、
そぉっと振り返る、
なのである。

何気なくその子のそばまで寄り、
プリントを確認するふりをしながら小声で聞く。

「呼んだ?何?」

ひそひそと小声が返ってきた。

「ええっとさ、これ、やりたくない。めんどくさい」

「!?!?!?!?!?」

心の中は、
(🤣🤣🤣🤣🤣🤣🤣)
であるが、
目の前には、黒板を指差し、滔々と計算の説明をしている担任の先生。

仕方ないので、また小声で、

「正直でよし😉」

と、言ったら、
ニヤッとして、課題に取り組み始めた

私は、また、さりげなく他の子を見て回りながら、後ろに戻る。

支援員の仕事ってなんなんだろう😂😂😂
毎日、刺激的で楽しくて苦しくて混乱して、
そして、本当に本当に、超面白い❤❤❤

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