見出し画像

メガネを取って!

るい(仮)くんは1年生。
なかなか授業には、ついていかれない。
※これは、前回の続きのようなお話です。

ある日、オレ専用の先生が来た。
おじいちゃんみたいな先生だ。

オレのクラスにはいろんな先生が来て、めんどくさいけど、オレの先生、ならいい。
だって、オレ専用だもん。

オレの先生は、いつもそばに居てくれて、困ると助けてくれる。ノートを書くのを手伝ってくれたり、キョウリュウの本を見せてくれたり、手品みたいにどんぐりを回して見せてくれたりする。
時々、怒られて、怒られるとムカつくから、
『お前なんて大っきらい!』
と、叫ぶんだけど、オレの先生は、
『そうか、そうか』
と言うだけ。

それから、オレの先生は時々休む。いない時がある。
おじいちゃんだから、しょうがないんだって言うんだけど、なんでなのかな、、、?
オレは毎日来てくれたほうがいいんだけど。

この間も、オレの先生は休みだった。
休みだったというか、朝は来たんだけど、途中で帰ったんだ。担任の先生が、
『具合が悪くなったんだって』
と言ってたけど、オレにはそうは見えなかったけどな。

最悪なことに、その日は、避難訓練があった。
オレは、避難訓練なんて大っきらいだ。
ウソの地震の練習なんて、やってどうするんだよ。
わざわざ怖い音を出して、喋っちゃいけなくなって、机の下に潜って、それから防災頭巾を被って上履きのまんまんで外に出るんだ。
いつもはしちゃいけないこと、ばかりやるんだ。
防災頭巾は授業中に触っちゃいけないんだぞ。
上履きで外に出たら怒られるんだ。
トイレに行きたくても、戻っちゃいけないって言われるんだ。
意味が分からな過ぎる。

だから、オレの先生がいないと困るのに。

忙しい昼休みが終わって、五時間目になったとたん、
突然、地震速報の音がした。
みんなが、ガタガタっと音を立てて、机の下に潜った。
オレはびっくりしたから言った。

『これって嘘なんだよ!ホントじゃないんだ』

誰も何も答えない。
担任の先生は、ヘルメットを被って怖い顔をしている。
なんで?!嘘なのに?

机の下に潜って
『嘘だからな!嘘なんだからな』
って叫んでいたら、たまにオレのクラスに来るメガネの女の先生が横に来て、
『そう、嘘だから大丈夫だよ』
と、言った。

それで、そいつが防災頭巾を被せようとしたから、
『オレは被らない!』
って言ってやった。
そしたら、そいつは一瞬困った顔をしたけど、
『ま、いいや!じゃ先生が持っとく。付けたくなったら言って。行くよ!』
って。
周りを見ると、みんな廊下に並んでいる。
他に先生はいない。
こいつと行くしかないのか?
『ねえ!』
と、オレは言った。
『何?』
と、そいつが静かに答えた。
『メガネ取って見せてよ』
と、オレは言った。
誰だか分からないやつと一緒には行かれない。
『は?今?!』
と、そいつは言ったけど、すぐに、パッとメガネを取って顔を向けできた。
まだ安心は出来ない。
『じゃ、今度は目をつぶって!』
そいつは目をつぶる。
『メガネかけて、目をつぶってみて!』
『分かった!こう?』
と、そいつがメガネをかけて目をつぶったのを見て、
『はやく行こう!』
と、手を引っ張った。
遅れたら大変なんだ。
こいつと行くことに決めた。
『うわっ』
と、そいつが何かに躓いたような気もしたけど、かまっちゃいられない。
『静かに!いそげー!』
と、言って手を引っ張って外に出た。

外では、みんなが列になって、座っていた。
やっぱりな。
避難訓練の時はいつもこうだ。
オレはこういうのキライ。

だけど、一緒に行った先生が、1番後ろにドスッと座ったので、オレはその先生の膝の上に座ることにした。ここなら安心だから。
先生はびっくりしたみたいだったけど、なんにも言わなかった。まあまあいいやつだと思う。

あとから、担任の先生に褒められた。
『るいくん、今日は避難できたじゃない。お砂いじりもしなくて偉かったよ』
って。

何言ってんだし?
避難訓練なんて嘘なんだから、怖くもなんともねーんだし!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?