見出し画像

せっかく決めたのに!

その日の体育はリレーだった。

10人ほどのBチームの、ゆうな(仮)ちゃんはリーダー的存在で、走順を決めるときも彼女がグループを仕切っていた。
なお(仮)くん、という、毎日いろんなことをしでかすトラブルメーカー(クラスメートにとっては面倒くさい。でもたぶん面白がっている😁)がメンバーいても、
いつも他のチームに負けず劣らずのリレーができるのは、ゆうなちゃんの功績が大きい、と私は常々思っている。

Bチームがなにやらもめていたので、近寄ってみると、
案の定(という気持ちになるのは許してほしい😅)、なおくんが、走順についてごねていた。ゆうなちゃんの決めた走順は気に入らない、とのことだった。

ゆうなちゃんは、近寄ってきた私を見ると、諦めたのか、
(たいていの場合、私はなおくんの味方で、それは、必ずしも周りの子にとってプラスではない。本意ではない。でも、そう思われても仕方がない。)
「なおは、何番目に走りたいの?」
と、聞いた。
私も、たぶん、そう聞く。
それが一番スムーズにその後の展開につながるからだ。
(でもたぶん、イヤな子もいる。ゴネたら通るのかよ!一番に意見を聞いてもらえるのかよ、って思うよね)
なおくんは、
「俺は、そうやと同じがいいの!」
ゆうなちゃんは、
「はあ?一緒に走れるわけないじゃん」
と、口調が強くなった。

「同じってどういう意味?」
と、私は聞いた。
なおくんは、朝礼台を前としたグランドの遠くを指差して、
「そうやがあっちがわから走るなら、俺もあっちから走りたい!一緒がいい!」
と、言った。
「あー、なるほど。
じゃ、同じ1.3.5.7の奇数の番号か、2.4.6.8の偶数か、そこを同じにすればいいのね」
(リレーなので、グランドを半分ずつ走る。半分のところでバトンパスをする)
私が確認すると、ゆうなちゃんがすぐに言った。
「そうやは何番目に走りたい?」
「おれ、4番がいい」
そうやくんが答えると、ゆうなちゃんは(こういうところが彼女のリーダーたる所以だと思うんだけど)、またなおくんに問いかけた。
「そうやは4番だって。なおは、そうやより先に走りたい?それともあとに走りたい?」
「そうやより先!」
「じゃ、なおは2番目ね。他に2番目走りたい人はいる?いない?いい?」
「分かった!」
というわけで、なおくんの問題は解決。
ゆうなちゃんが、なおくんにも選択肢を出してくれたので、なおくんは自分の意見も聞いてもらえた、という気持ちになっている。
ゆうなちゃんは、4年生。大人顔負けである。

その後も、どうしても最初(1走)を走りたい別の女の子の意見や、
ゆうなちゃん自身はアンカーを走りたい気持ちなどを、やりくりして、なんとかグループの走順が決まった。
先生の笛の合図で集合したとき、Bチームはやる気満点だった。

ところが、である。

実はBチームには、その時点で、1人見学者がいた。
見学者というか、準備運動の時に、あまりにふざけていて先生に叱られ、強制見学にされた子がいた。よしお(仮)くんという。

集合し、各チームの走順を確認し、バトンを渡したその後で、
担任の先生はこういった。
「よしお、来なさい!リレーからは参加。そうだな、ちな(仮)(賢い。ムードメーカー。なおとよしおに挟まれても大丈夫)の後ろに入りなさい!」

私は思わず、息をのんだ。

◆現時点のBチームの走順は、以下の通り。

1 最初を走りたかった女子
2 なお
3 ちな
4 そうや



8 ゆうな

◆ここに、よしおを入れると、どうなるか。

1 最初を走りたかった女子
2 なお
3 ちな
4 よしお
5 そうや



9 ゆうな

よしおが、ちなの後ろに入ることで、
なおは、2走のままだが、
そうやは、5走になる。

つまり、ゆうなちゃんをはじめとするBチーム全体で決めた、こだわりの走順、
なおくんとそうやくんが、同じ方向からスタートする、が、かなわなくなる💦

Oh,NOOOOO!
と、叫びたかった!!!
し、
ちょっと待って下さい!
と、
言いたかったのだけど、

躊躇しているうちに先生の話は終わり、他のチームが動き出した。
威圧的な(それは、よしおくんに対しての態度なのだけど)先生の様子に、誰も何も言えず。

こういうとき残酷なことに、なおくんは周りが見えないし、理解もゆっくりなので、
「そうや、行こうぜ!俺たちあっちから走るんだよな!」
と、そうやと肩を組んでいる。

この状態で、
「よしおくんが後から入ったから、なおくんとそうやくんは違う方向から走ることになったの」
とは、非常に言いにくい。
なおくんは、がっかりするだけでなく、それをもろに行動に出す。
平たく言えば、よしおくんに攻撃するか、リレーはやらない!と言い出すか、ゆうなちゃんを責めるか・・・。そして、さらにそれを止めれば、たぶん、暴れてしまう💦

ゆうなちゃんは、どうしよう、という顔をしていた。気持ちは痛いほど分かった。
先生に、よしおくんの走順を変えたい、と言いたい。
でもそれには、どうしてなのか、を説明しなければならない。
どうしてなのか。
それは、なおがそうやと一緒に走りたいから、なのである。
常々、なおくんのこだわりに手を焼いている先生が、それを認めてくれるとは限らない。
またワガママ言って!と一蹴される可能性は大いにある。でも、それだとBチームは困る。困るんだけど、よしおくんのことで態度が硬化している先生に、今、説明するの勇気はない。

背中を冷や汗がつたうって本当にあるのね、と私は思った。

えぇーい、動いちゃえ!と、心の声がして、私は動いてしまった。

「ええっとぉ、ちなちゃん!ちなちゃん、あなたは3番目じゃなくてもいい?」
と、私は聞いた。
「うん、別にいいよ。でも、先生が、ちなの後ろによし、って言ってて・・・」

「知ってる知ってる!大丈夫。ちゃんと先生に言うから。
じゃ、ちなちゃん、そうやくんの後ろに入って。5番目だよ。ちなちゃんが後ろにいくから、よしくんとそうやくんは前につめて。よしくん3番目ね。そうやくんは4番目。
あとの人は、よしくんの分1つずつ後ろにズレる。大丈夫?ゆうなちゃんはアンカーのまま!
はい、移動!がんばれ!」

◆変更した走順はこう
1 最初を走りたかった女子
2 なお
3 よしお
4 そうや
5 ちな



9 ゆうな

これなら、なおとそうやは同じ方向から走ることが可能。
そして、担任の先生にはこう説明した。

「先生、ごめんなさい。勝手にちょっと変えました。ゆうなちゃんこだわりの走順があって。
ちなちゃんはどこで走っても大丈夫なので。なおくんとよしくん(どちらもトラブルメーカー)は、反対側に並ぶから、くっつかないようにしてます。トラブらないようによく見ておきますね!!(ウインク)」

担任の先生から、
「あー、分かりました。ゆうなの考えもありますよね。なお、よし、お願いしまーす」
と、言われて、ほっ😌
リレーはつつがなく終了。

これで、良かったのだろうか、良かったのだろうか、良かったのだろうか???
と、考えてしまう。
子ども達ならもっといい選択ができたかも知れない。余計なお世話だったかも知れない。
そのときは良くてもさあ💦💦💦
なんとかしようっていう大人のエゴか?!
などと、考え出すと止まらない。

でも、ま、いっか!
リレーは楽しく出来たみたいだった。
次の時間も、なおくんも、よしくんも、ゆうなちゃんも元気そうだった。

そういう1日⭐️

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?