見出し画像

空白

これは、私は、前に立って指示するとき、
やらねばならないと分かっているのに、なかなか出来なかったし、
やったとしても徹底できなかったところだ。
今日、ゆうき(仮)くんを見ていて、
あー、なるほど!
子どもたちの集団を動かすためには、やらねばならないのだと痛感した💦
私の担当する子どもたちには、おそらく、ほぼみんな、必要なことである。

その日の体育では、準備運動に縄跳びが入っていた。
先生が、
「前跳びを20秒します。30回跳べたらいいかなー」
と、言った。
そして、
「よーい、スタート!いーち、にー、さーん・・・・」
と、数え始めた。

クラスの子どもたちは、一生懸命に前跳びを始めた。
20秒終わったところで、次に、
「後ろ跳びをします。20秒ね。20回かな?」
と、担任の先生は言った。
そして、スタート。
その調子で、あや跳び、かけあし跳び、最後に二重跳びが行われた。
手順は同じ。

ゆうきくんは、縄跳びが苦手である。
体育の時に、縄跳びは持って行かない。
エアー(縄なし)を教えたら、それでやるようになった。
それまでは、縄跳びがあると分かれば、準備運動からやらず、遊んだり、友達にちょっかいをかけたり・・・その態度のせいで叱られたり拗ねたり怒ったり、その後の体育に全く参加出来なかった。

出来ないことは、例え些細なことでも心を圧迫し、その後の活動に影響する。もちろん、そこを頑張らせないといけないこともあるんだろうな。
でも、エアーでいいからやろう、と言ったら安心してやるようになった。エアーなら引っかからないからね😁
私としては、縄跳びが出来るよりも、みんなと体育全般が出来る方がいいと思っているので、そっちを優先した。それに気が付いて、それでいい、と言って下さる担任の先生にも感謝している。

と、いうわけなので、
ゆうきさんは、エアーだとしても最低限の縄跳びしかやらない。(でも、やるようにやったんだからものすごく頑張っている)
「前跳びを20秒やります。30回出来たらいいかな。よーい、スタート!」
と、始まった縄跳びに対して、
ゆうきくんは、一生懸命エアーで跳び始めた。
手の動きも足の動きも、目や口を見ていても一生懸命やっていることが分かる。真面目なんだなー、と思う。

でも、しばらくやると、目の前のボールカゴから、勝手にボールを出して遊び始めた。
担任の先生の目の前である。
先生は、ボールを取り上げて怒り、次の指示を出す。

「後ろ跳び20秒。20回。よーい、スタート!」
ゆうきくんは、再びエアーで一生懸命、縄跳びを始めた。
後ろ跳びなので、前跳びとはエアーでも手の動かし方が違う。
本当に縄があったら、後ろ跳びの方が苦手なんだろうな、跳べてないな、と分かるくらいに、である。

しかし、途中で、また、ボールを取りに行き、遊び出す。
その後も同じことの繰り返しで、
かけあし跳びも、二重とびも、
担任の先生の指示で、エアーで見事に(? 本人なりに真剣に?)やるのだが、途中でボールで遊び出す。
その都度叱られている。

なるほど、と私は思った。
そして、自分は出来ないことが多いのに、少々イライラしてしまった。



私がイライラしたのは、先生の指示の仕方である。
「前跳び20秒。30回跳べたらいいかな」
これは、複雑な指示なのである。

20秒間跳ぶ。目標が30回。
20秒間跳べば、30回に届かなくてもよい。
ただし、早く30回跳び終えたとしても、20秒間は跳ばなければならない。

先生の意図はそうだと思う。
目標の回数があることで、数を数えながら跳ぶ、という行動を引き出すことも出来る。
けれど、縄跳びが苦手で、やるべくやりたくない子は、どうするか?

20秒間、ゆっくり跳ぶか、
さっさと30回跳んで、終わりにするか、だと思う。

例えば、
「20分間走をやります。目標はグランド10周」
と、言われたら?
10周走ってやめないまでも、スピードまで落とすことくらいは、私もやりそう。(笑)

ゆうきくんは、エアー縄跳びだから、いくらでも早く終わらせることが出来た。
ちゃんと、彼なりに毎回目標の回数を跳んだのでしょう。
でも、時間が余った。
目の前にボールがある。→遊ぶ。
を、繰り返したのだと、私には感じられたのである。
ほんの数秒、何もしなくてよい時間、空白の時間が生まれてしまっていた。

集団で同じことをするとき、個人の活動には、それぞれ差があるから、
このような時間はしょっちゅうあらわれる。
縄跳びなら数秒だけど、計算でも作文でも、絵や工作でも。
授業中、空白の時間をうまく過ごすのは、とても高度な技である。
指示がないと動けない、のとは少し違うと私は思う。

何も言われていないけれど、
見えない枠がある。
どこまではよくて、どこまでがだめなのか。
その枠を読まないとならない。

そして、それが、ゆうきくんは、とても苦手。
他にも苦手な子はたくさんいるので、
なるべく空白の時間を作らないように、
また、
出来るとしたら、その時間をどう過ごすのがよいのか、
ということを先生方は常に考えて指示を出している。

例えば、今回先生の指示が、
「前跳び20秒間。数を数えておいてね」
もしくは、
「前跳び30回。早く終わった人は座って待つ」
だったら、空白の時間はなくなるように思う。
第3者として見ていたら気が付くけど、
授業をしている時だと、なかなか難しい💦
授業の上手な先生は、そのあたりをきちんと押さえて指示を出している。

気が付いたものを、どうやって、先生に伝えるのか、そこが私の仕事で、
それは、やっぱり難しい😂


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?