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もうちょっとやりたい

ゆうき(仮)さんは、1日のほとんどを教室の外で過ごしている。
(ゆうきさんは、「チーム」というお話にも出てくる子です。よかったらそちらもお読みください)

書字の苦手はあるが、計算などは出来る。
でも、教室でみんなと学習する事はほとんどない。
学習していないので、理解力はあるのだが、少しずつみんなよりも出来ない学習が増えてきている、とのこと。
教室の外でもよいから、少しでも学習の積み上げを、というのが、今の学校の先生たちの願いである。

ある日も、私が教室に着くと、
廊下にいたゆうきさんに、
「先生遊ぼう!外で鬼ごっこしよう!」
と、誘われた。
教室では、国語の授業がはじまるところであった。
「え?次、国語みたいだけど?」
と言うと、
「いいの!早く行こう!
じゃんけんだよ!ほら!最初はグー!」
と、強引に手を引く。

この展開は前にもあって、
前回は言われるがままに外に出て、
彼の様子を観察したり、一緒に遊んだりしたのだけど、
今回は、ちょっと変えてみた。

「鬼ごっこねえ。いいけど、今日は、先生、ゆうきさんとやろうと思ってカードのゲーム持ってきてるんだ。図書室が空いていたら、一緒にやらない?あと、ゆうきさんがどのくらい数字が読めるか知りたいんだけど、プリント1枚やってくれないかなあ?」

「ゲーム?なんの?
プリントはやらないけど、ゲームは見る!」

「プリントはすごく簡単だから、計算が出来るゆうきさんなら大丈夫。まず見てみてよ」

「えー!プリントはいいよ!
ゲームはやる!」

「えー、プリントもやってよぉ」

と、まあ、ちょっと押し問答した後に、
うまいこと空いていた図書室に入り込み、
カードゲームとプリントを見せた。

カードゲームは、色を繋いでいく単純なルールのものだけど、ゆうきさんは前にやったことがあるらしく、ものすごく喜んだ。
そして、プリントは、1-60までの数の点をつなぐと動物の絵が出てくる、点つなぎのプリントだったのだけど、見たら出来そうだったからか、
「1枚ならやってもいい」
と、応じてくれた。

カードゲームでは、
順番やルールが分かるか、
それを守ることが出来るか、
勝ち負けにこだわる様子はどうか、
点数の計算が出来るか、
などを見ていく。

ゆうきさんは、そのどれにも問題を感じなかった。
しっかり順番も守れるし、
ルールも分かるし(勝てそうな時には喜んで、負けそうになると悔しがる)、
負けても、怒ったりせずに、
「もう一回やりたい!」
と、言っていたし、
計算もバッチリ。

点つなぎのプリントでは、
多少迷うところがあっても、
最後までクリアし、なんの動物が出たか当てられた。
鉛筆の扱い方や取り組む姿勢にも問題は見られない。
年齢相応に私には感じられた。
点つなぎ、面白かったようで、
「もうちょっとやりたい」
と、続けてあと3枚取り組み、20分ほど座って集中していた。

結局その時間は、鬼ごっこはほんの5分。

次の時間も、
その次の時間も、
ちょっとプリントやドリルをやってから→遊ぶ、という流れで1日過ごした。
まったく何も学習しない、と聞いていたのだけど、
(確かに、必ず、やだ!とは言うが)
そんなことはなさそうだなあ、という印象。

パターンを作ったら、意外とのれるのかもしれない。
でも、まだ、私との関係も作れていないし、
単に目新しいものに反応しているだけ、なのだと思う。
少しずつ、少しずつだな。














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