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銭湯日記

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各地の銭湯の訪問日記。銭湯の外観、内観の観察から、行くまで、行った後の周辺の散策も含めて記しております。 サブカルネタ、経験談、無駄知識などが混入していることも有りますが、ご愛嬌… もっと読む
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記事一覧

銭湯日記11 小さな屋根の中の大きな特徴 〜南湯〜

銭湯日記11 小さな屋根の中の大きな特徴 〜南湯〜

最寄りは西武の新桜台駅とのことなので、副都心線から一駅だけ西武線に乗る。・・・と考えたが、他社線分の運賃を払うのをケチって、小竹向原駅から歩いていく。
池袋から3駅とは思えないほど静かな小竹向原駅の地上出口から、遊歩道をしばらく歩いていく。4月を迎えても寒々とした雨の夜は、ただでさえ静かな遊歩道をますます寂しい気持ちにさせていく。
環七通りに出て、南下していくと一駅隣の新桜台駅に到着する。新桜台駅

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銭湯日記⑩ 路地裏に広がるマジック空間 〜昭和浴場〜

銭湯日記⑩ 路地裏に広がるマジック空間 〜昭和浴場〜

会社帰りに普段使わない丸ノ内線に乗る。ものの数分で着いた東高円寺駅は、すぐ隣には蚕糸の森公園があり、新宿から近いことも含め豊かな住環境が広がったエリアである。
丸ノ内線が開業する前は、青梅街道の上を都電杉並線が走っており、この辺りには蚕糸試験所前という電停があったらしいが、そんな面影は駅前の小さな商店街に少し見られるほどになっている。

そんな青梅街道を少し東方面、新宿方面に戻ると、北に伸びる細い

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銭湯日記⑨ 大正ロマンの復活銭湯 〜桜湯〜

銭湯日記⑨ 大正ロマンの復活銭湯 〜桜湯〜

京王線には、数年前に座席指定制列車の京王ライナーが登場した。通勤経路に京王線には入っているが、私は新宿〜明大前間しか使わないので、姿は目にしつつ遠い存在であった。それどころか、朝の出勤時間にちょうど目の前を素通りしていき、次の電車までの時間が空いて待たされるので、恨み節を持っていたといっても過言ではない。
そんな呪詛の対象京王ライナーには縁もなく、かれこれ数年乗らずにいたが、府中に最近復活した銭湯

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自己紹介〜銭湯考現学採集について〜

自己紹介〜銭湯考現学採集について〜

序章たる初回の投稿、何を書けば良いのかトンと検討がつかぬ。名乗れるような経歴もないが、まずは自己紹介といきたい。

東京生まれ東京育ち東京就職でありながら、お多感な高校生の時分に森見登美彦を読むに至り、京都への羨望を持ち、その結果既卒の大学に続いて2度目の大学生活を京都の某大学の通信学部で学び、今に至っている自称「銭湯考現学者」である。

コロナの猛威が来襲する直前の20年3月に卒業に至るも、卒業

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銭湯日記⑦ いつでもクリスマス。メルヘンな電飾銭湯 〜お湯どころ野川〜

銭湯日記⑦ いつでもクリスマス。メルヘンな電飾銭湯 〜お湯どころ野川〜

 喜多見駅近くで会社の研修が終わった。行政区分としては世田谷区になるエリアであるが、高級住宅街などのイメージが強い区とは思えない長閑な駅前風景が広がる。
 そんな喜多見の街には、地味に古墳が点在している。隣町が「狛江」というところから推測すると、高麗(コウライ・コマ)などを起源とする渡来人が住んでいたものとも考えられるが、「喜多見」の語源ははっきりとは分からないという。しかし、国分寺崖線に近接し湧

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銭湯日記⑥ 住みたい街ですか?の答えを探すロック空間 〜弁天湯〜

銭湯日記⑥ 住みたい街ですか?の答えを探すロック空間 〜弁天湯〜

 漫画家マキヒロチの作品に「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」という漫画がある。森三中大島とメープル超合金の安藤なつという、大きめサイズの女性芸人二人によって実写化もされたので、ご存知の方もいるかもしれない。

 ストーリーを説明すると、吉祥寺の不動産屋を経営する双子姉妹が、「なんとなく吉祥寺に住みたい」と訪れた客に対して、「それなら吉祥寺じゃなくても良くね?」と、吉祥寺以外の街の不動産を勧めるとい

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銭湯日記⑤ 住宅街の中のアナロジースチームサウナ 〜大黒湯〜

銭湯日記⑤ 住宅街の中のアナロジースチームサウナ 〜大黒湯〜

 高校時代の友人と久々に会うことになった。
 この年齢ともなると、迂闊に異性の友人と会うこともできない。数年前ならば何の気無しに会うことができたにも関わらず、結婚だの恋愛だのという制約によって、気楽に会いにくくなるのは、歳をとるにつれ仕方がないとも思いながらも寂しくも思う。

 目的地は代田橋のプリンの有名な店であった。比較的近所に住んでいるにも関わらずそんなことは露知らずの私よりも、遠方に住んで

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銭湯日記④ 商店街の中で賑わう古さと新しさの共存空間 〜小杉湯〜

銭湯日記④ 商店街の中で賑わう古さと新しさの共存空間 〜小杉湯〜

 GW前半を京都で過ごし、東京へ帰ってきた。五月晴れで暖かい連休の後半、飲み友達に誘われ訪れたのは、中野駅である。北口には、ライブ会場としても有名なサンプラザ中野が聳え立つが、この隣に広大な芝生の公園がある。ここで、日がな休日を酒とつまみでやり過ごす会が開かれた。

初夏の天気は、ピクニックにも丁度いい。広々としたシートの上で、途中のコンビニで買った缶ビールを飲むのは、素晴らしいほどに唾棄すべき休

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銭湯日記③ 通り沿いのボイラー室から始まる衝撃〜旭湯〜

銭湯日記③ 通り沿いのボイラー室から始まる衝撃〜旭湯〜

"まいまい京都"という、ミニツアーイベントに参加した。住民がガイドをしつつ、街を散策して新しい発見を得るツアーになっているのだが、土日開催のイベントに、なかなか参加する機会が得られなかった。

GW中で授業との被りがない日の開催があったので、早速申し込んでみた。

集合したのは阪急西院駅。今回のツアーは、阪急京都線の線路に沿って歩きながら、線路を開通させた新京阪(京都線の旧称)の痕跡を探すという、

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銭湯日記② 元遊郭街の隣のサウナの聖地〜サウナの梅湯〜

銭湯日記② 元遊郭街の隣のサウナの聖地〜サウナの梅湯〜

京都キャンパスでの講義を履修している時の定宿を、私はいくつか決めていた。
その一つが、河原町松原にある"Guesthouse Len"である。

四条河原町まで歩いてすぐという利便性も去ることながら、宿の前のバス停から5系統に乗り、乗り換えなしでキャンパスに行ける点も、この宿を重宝したポイントである。

もう一つ重宝されるポイントとして、徒歩圏に銭湯が散見される点が挙げられる。
初めてお世話になっ

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銭湯日記① 路地のドン付き銭湯~壬生湯~

銭湯日記① 路地のドン付き銭湯~壬生湯~

 銭湯(公衆浴場)は、緊急事態宣言が発令された後も営業が認められている。これは現在でも銭湯が、"生活インフラ"という必需品扱いを受けている証拠と言える。

とは言え、利用者減少に伴い廃業していく銭湯が多いのも事実。

そんな生活インフラであり、マイノリティとなりつつある銭湯を、何かしらの形で後世に残すべく、私は2度目の大学生活の卒業制作を行うにあたって、卒制テーマにすることにしたのであった。

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