Yujikan

銭湯考現学者を自称する平成男子。 調査銭湯数約210。 2度目の大学の卒制の延長として…

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銭湯考現学者を自称する平成男子。 調査銭湯数約210。 2度目の大学の卒制の延長として、銭湯調査レポ、考察、雑学を執筆中。 銭湯好きの方のフォロー、お待ちしております。 書を捨てよ、湯へ浸からう https://www.instagram.com/yujikan.110/

マガジン

  • 銭湯採集

    190軒超の各地の銭湯訪問を経て、数字面の計数や傾向などから見えてくる地域ごとの特性や、歴史的経緯などを推測したレポート形式の短文です。 個人的妄想も楽しみつつ、ご一読頂ければと。

  • 銭湯日記

    各地の銭湯の訪問日記。銭湯の外観、内観の観察から、行くまで、行った後の周辺の散策も含めて記しております。 サブカルネタ、経験談、無駄知識などが混入していることも有りますが、ご愛嬌ということで。

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自己紹介〜銭湯考現学採集について〜

序章たる初回の投稿、何を書けば良いのかトンと検討がつかぬ。名乗れるような経歴もないが、まずは自己紹介といきたい。 東京生まれ東京育ち東京就職でありながら、お多感な高校生の時分に森見登美彦を読むに至り、京都への羨望を持ち、その結果既卒の大学に続いて2度目の大学生活を京都の某大学の通信学部で学び、今に至っている自称「銭湯考現学者」である。 コロナの猛威が来襲する直前の20年3月に卒業に至るも、卒業展示はコロナのために中断、発表の場を持ち合わせていなかったために、Instagr

    • 未来は明るかった。レトロフューチャーの空間へ 〜中銀カプセルタワービル〜

      その昔、未来は明るかったらしい。私が生まれる遥か前、万博という国際的大イベントが大阪千里丘陵で開かれた頃の話である。 万博のテーマは、「人類の進歩と調和」。何もなかった丘陵地帯には、動く歩道やモノレールといった先進的な乗り物、各建築家を総動員したかのような豪華絢爛なパビリオンが出来上がり、未来都市の様相を呈していた。 今話題の代々木公園の比ではないレベルの木々を伐採しまくった人工都市で「明るい未来」とは、今となっては笑止千万であるが、高度経済成長の最末期においてはそれがトレン

      • 銭湯日記13 戦前に想いを馳せて入る交互浴 〜武乃湯〜

         夏のある日、海老名で仕事が終わる。  普段ならば、ロマンスカーの時間まで待つか、もしくは急行で帰るのだが、今日は各駅停車に乗る。各駅停車で都内まで帰るとなると、気が遠くなってくるが、2駅め、相武台前で降りた。  相武台前駅は、急行通過駅でありながら、車庫線や駅ビルなどもあり、ほどほどに大きめな印象を与える駅である。  元々は「座間駅」として開業。その後、昭和12年に近くに陸軍士官学校ができたため「士官学校」駅に、戦時中に防諜上の理由で現在の「相武台前駅」に変更となった。

        • 銭湯採集④ 受付について

           子供の頃の銭湯のイメージは、番台でお金を払うことから始まった。子供の頃、我が地元にあった銭湯「浜の湯」もそうした昔ながらの銭湯であった。  父に連れられてきた私は、父が番台にお金を払うのを下から見ている。子供の私にとって、番台の高さは遥かに大きく、番台に座るご主人や女将さんの姿もあまり見えないくらいだったように思う。風呂上がりのポカリスエットを買うべく、父にお金をもらって番台に払いにいく時、かなり背伸びをして番台にお金を出すのであった。  地元の銭湯は番台であったため、少

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        自己紹介〜銭湯考現学採集について〜

        • 未来は明るかった。レトロフューチャーの空間へ 〜中銀カプセルタワービル〜

        • 銭湯日記13 戦前に想いを馳せて入る交互浴 〜武乃湯〜

        • 銭湯採集④ 受付について

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        • 銭湯採集
          5本
        • 銭湯日記
          11本

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          サウナなし銭湯について

           緊急事態宣言の発令前夜、下高井戸の月見湯温泉を訪れた。サウナに入りながら、常連とご主人の会話を聞いていたところ、緊急事態宣言発令後はサウナを休業するかもしれない、とのことであった。翌日25日より緊急事態宣言の発令となり、その予想通り、多くの銭湯サウナは休止となっている。  事あるごとに述べているように、私はサウナーではないので、サウナが営業中であろうとなかろうと、訪問した銭湯には入浴することにしている。そこでサウナが営業していれば入るだけの話である。ところがサウナをメイン

          サウナなし銭湯について

          銭湯日記12 下町のビル型湯屋で鶴を愛でる 〜白水湯〜

          銭湯をリノベーションしたがあるらしい。Instaを見ているとそんな情報を見たので、入谷を訪れた。 カフェ快哉湯は、昭和通りから一筋中に入った通りにある。昭和3年建築の平入建築、下町の狭隘な街路にあるだけあってコンパクトな建築である。 入谷駅前を通る昭和通りは、関東大震災の帝都復興計画のもと整備された大通りである。震災の時は、上野周辺では火災の影響も大きかったと伝え聞く。そんな更地の中に、新たに大通りが作られ、時を同じくして快哉湯という銭湯としてこの建物は生まれた。震災からの

          銭湯日記12 下町のビル型湯屋で鶴を愛でる 〜白水湯〜

          銭湯日記11 小さな屋根の中の大きな特徴 〜南湯〜

          最寄りは西武の新桜台駅とのことなので、副都心線から一駅だけ西武線に乗る。・・・と考えたが、他社線分の運賃を払うのをケチって、小竹向原駅から歩いていく。 池袋から3駅とは思えないほど静かな小竹向原駅の地上出口から、遊歩道をしばらく歩いていく。4月を迎えても寒々とした雨の夜は、ただでさえ静かな遊歩道をますます寂しい気持ちにさせていく。 環七通りに出て、南下していくと一駅隣の新桜台駅に到着する。新桜台駅も地下駅なので、駅前広場のようなものはなく、地下への出入口が口を開けているだけで

          銭湯日記11 小さな屋根の中の大きな特徴 〜南湯〜

          銭湯日記⑩ 路地裏に広がるマジック空間 〜昭和浴場〜

          会社帰りに普段使わない丸ノ内線に乗る。ものの数分で着いた東高円寺駅は、すぐ隣には蚕糸の森公園があり、新宿から近いことも含め豊かな住環境が広がったエリアである。 丸ノ内線が開業する前は、青梅街道の上を都電杉並線が走っており、この辺りには蚕糸試験所前という電停があったらしいが、そんな面影は駅前の小さな商店街に少し見られるほどになっている。 そんな青梅街道を少し東方面、新宿方面に戻ると、北に伸びる細い暗渠道がある。これも宅地からされる前は田畑を潤す農業用水だったのだろう。 そんな

          銭湯日記⑩ 路地裏に広がるマジック空間 〜昭和浴場〜

          銭湯日記⑨ 大正ロマンの復活銭湯 〜桜湯〜

          京王線には、数年前に座席指定制列車の京王ライナーが登場した。通勤経路に京王線には入っているが、私は新宿〜明大前間しか使わないので、姿は目にしつつ遠い存在であった。それどころか、朝の出勤時間にちょうど目の前を素通りしていき、次の電車までの時間が空いて待たされるので、恨み節を持っていたといっても過言ではない。 そんな呪詛の対象京王ライナーには縁もなく、かれこれ数年乗らずにいたが、府中に最近復活した銭湯ができたと聞き、ちょうど良い機会なので会社帰りに乗車することにした。 夕方ラッシ

          銭湯日記⑨ 大正ロマンの復活銭湯 〜桜湯〜

          銭湯採集③ カランについて

          脱衣所で服を脱ぎ、いざ風呂へ入らん!と思っても、いきなり浴槽へ向かう人はあまりいない。まずは体を洗うべく、椅子と洗面器を持ち、近くの洗い場を探す。この洗い場は、通称カランと呼ばれる。 カランとは、「キッチンや洗面所、浴室に使われている水栓の管やハンドル、蛇口の総称」である。家庭用カランは、ハンドルを上下左右に回せば適切な温度の水(湯)が出てくるものだが、銭湯では、お湯の出る赤いハンドルと水の出る青いハンドルが1セットになったものがほとんどである。 近年改築、新築した銭湯では

          銭湯採集③ カランについて

          銭湯日記⑧ 富士のタイル絵と一緒に 〜月見湯温泉〜

          私は楽器ができない。ピアノを習っていたのも小学校2年生までであり、今では楽譜が読めるのが関の山、「ねこふんじゃった」も弾けやしない、そんな体たらくである。 しかしながら音楽は好きだった。 高校1年の時に母が持っていたYMOのデビューアルバム「Yellow Magic Orchestra」と「PUBLIC PRESSER」のLPを聴いて以来テクノにハマり(注:Chemical BrothersやDaft Punkではなく、ニューウェーブ時代の初期テクノ)、なぜかKORGのシンセ

          銭湯日記⑧ 富士のタイル絵と一緒に 〜月見湯温泉〜

          銭湯日記⑦ いつでもクリスマス。メルヘンな電飾銭湯 〜お湯どころ野川〜

           喜多見駅近くで会社の研修が終わった。行政区分としては世田谷区になるエリアであるが、高級住宅街などのイメージが強い区とは思えない長閑な駅前風景が広がる。  そんな喜多見の街には、地味に古墳が点在している。隣町が「狛江」というところから推測すると、高麗(コウライ・コマ)などを起源とする渡来人が住んでいたものとも考えられるが、「喜多見」の語源ははっきりとは分からないという。しかし、国分寺崖線に近接し湧水などにも恵まれた土地であったことから、かなり古くからある程度は開発された土地だ

          銭湯日記⑦ いつでもクリスマス。メルヘンな電飾銭湯 〜お湯どころ野川〜

          銭湯採集② 煙突形状について(1) 円柱型煙突

           こどものとも社の絵本に「おふろやさん」という本がある。この絵本に出てくる銭湯は、母屋の大きな破風と妻入の建築、玄関の唐破風屋根、浴室内のペンキ絵と典型的な東京型の銭湯の形を今に伝えている。  この本についてはいずれまた述べるとして、まずこの本の表紙に注目すると、銭湯の裏手から太い煙突が伸びている様子が見て取れる。ご丁寧に舞台の銭湯の屋号「亀の湯」の表記までがなされている。 まずは「煙突」の中でも、この本にも出てくる円柱型煙突について書く。  銭湯煙突には、格子上に補助材

          銭湯採集② 煙突形状について(1) 円柱型煙突

          銭湯日記⑥ 住みたい街ですか?の答えを探すロック空間 〜弁天湯〜

           漫画家マキヒロチの作品に「吉祥寺だけが住みたい街ですか?」という漫画がある。森三中大島とメープル超合金の安藤なつという、大きめサイズの女性芸人二人によって実写化もされたので、ご存知の方もいるかもしれない。  ストーリーを説明すると、吉祥寺の不動産屋を経営する双子姉妹が、「なんとなく吉祥寺に住みたい」と訪れた客に対して、「それなら吉祥寺じゃなくても良くね?」と、吉祥寺以外の街の不動産を勧めるというもの。この漫画からは、「住みたい街イメージ」の吉祥寺でなくても、他の街でも十分

          銭湯日記⑥ 住みたい街ですか?の答えを探すロック空間 〜弁天湯〜

          銭湯日記⑤ 住宅街の中のアナロジースチームサウナ 〜大黒湯〜

           高校時代の友人と久々に会うことになった。  この年齢ともなると、迂闊に異性の友人と会うこともできない。数年前ならば何の気無しに会うことができたにも関わらず、結婚だの恋愛だのという制約によって、気楽に会いにくくなるのは、歳をとるにつれ仕方がないとも思いながらも寂しくも思う。  目的地は代田橋のプリンの有名な店であった。比較的近所に住んでいるにも関わらずそんなことは露知らずの私よりも、遠方に住んでいる友人の方がアンテナを張っているということだろう。  代田橋駅から歩き、その店

          銭湯日記⑤ 住宅街の中のアナロジースチームサウナ 〜大黒湯〜

          銭湯日記④ 商店街の中で賑わう古さと新しさの共存空間 〜小杉湯〜

           GW前半を京都で過ごし、東京へ帰ってきた。五月晴れで暖かい連休の後半、飲み友達に誘われ訪れたのは、中野駅である。北口には、ライブ会場としても有名なサンプラザ中野が聳え立つが、この隣に広大な芝生の公園がある。ここで、日がな休日を酒とつまみでやり過ごす会が開かれた。 初夏の天気は、ピクニックにも丁度いい。広々としたシートの上で、途中のコンビニで買った缶ビールを飲むのは、素晴らしいほどに唾棄すべき休日の過ごし方といえよう。そんな素晴らしき休日はあっという間におわるもので、早々に

          銭湯日記④ 商店街の中で賑わう古さと新しさの共存空間 〜小杉湯〜