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銭湯日記⑨ 大正ロマンの復活銭湯 〜桜湯〜

京王線には、数年前に座席指定制列車の京王ライナーが登場した。通勤経路に京王線には入っているが、私は新宿〜明大前間しか使わないので、姿は目にしつつ遠い存在であった。それどころか、朝の出勤時間にちょうど目の前を素通りしていき、次の電車までの時間が空いて待たされるので、恨み節を持っていたといっても過言ではない。
そんな呪詛の対象京王ライナーには縁もなく、かれこれ数年乗らずにいたが、府中に最近復活した銭湯ができたと聞き、ちょうど良い機会なので会社帰りに乗車することにした。
夕方ラッシュ時間帯の筋を縫うようにして走るので、快走したり、ノロノロ運転をしたりを繰り返すこと新宿から22分、京王線の中核、府中駅に着いた。ライナーの感想としては、「金を払って座れるなら快適である。ただし小田急ロマンスカーの方が遥かに良い。」といったところか。

府中という名称は全国各地にあるが、「府」つまり昔の行政の「中」心であったことが地名からも伺える。現在も南口を出て少し歩くと、武蔵大國魂神社が鎮座しており、欅並木の立派な表参道も通っている。

そんな駅の南口を出て、商業施設やバスターミナルを抜けていくこと徒歩3分ほどで、今回の目的地の銭湯、桜湯に着く・・・はずだが、なかなか見つからない。
周辺は駅近立地の高層マンションも多く立ち並び、ほんとにこのあたりに銭湯があるのか!?と徘徊していたところ、なんとそんなマンションの1階に銭湯はあった。

廃業銭湯の復活と聞いていたので、宮造り妻入り建築の昔ながらの銭湯を勝手に想像していたが、現れたのは築年15年程の高層マンション。1階は桜湯であるが、そこから上は10数階建の分譲マンションである。その意外性に思わず驚く。


2020年に、立川の銭湯「立川 湯屋敷梅の湯」の主人の手によって復活を遂げた。復活時に改装したのか、入口は大正モダン風の外観となっており、往来から見ると理容室のようなレトロな雰囲気を醸す。懐かしい丸型郵便ポストの置かれた入口から中へ入る。

木札式の下駄箱に靴を入れ、券売機で料金を払っていると、ボタンの一つにカップルプランと書かれていることに気づく。男女ペアで来た場合の割引らしく、他の銭湯では見られないユニークな料金プランで面白い。

牛乳用自販機のあるロビーは、そこまで広くはないが休憩スペースとしては申し分ないサイズ感。壁面は全て漫画棚で、様々なコミックが置かれているあたりは、本店の「湯屋敷梅の湯」同様である。こうした休憩スペースや漫画スペースがあるだけで、ファミリーや若年層も獲得できるようになるだろう。


金魚の描かれた暖簾を潜り、脱衣所へ。白と黒のモノトーンでまとめられたロッカーがシックな雰囲気を演出。白ロッカーには暖簾と同様、金魚や出目金の絵が描かれており、和風のアクセントになっている。

浴室は、男女湯が横並びになっていない少し珍しい配置。ビル型銭湯なので平天井、湯気抜きは側面の窓から行っているようである。
浴室向かって右側にカランがあるが、カランの手前2台分には、サウナの整い椅子スペースになっているので、事実上使用していなさそう。カランは15台と、他の新しい銭湯同様、数は少ない。洗面器には「立川梅の湯」と書かれており、本店から持ってきた様子が伺える。
向かって左側の主浴槽には、電気風呂、ジェットバス、バイブラがおかれ、左奥にサウナ、その隣に水風呂ともう一つのぬるめ浴槽があるという配置。主浴槽は丁度いい湯加減、ぬるめ浴槽は水風呂のサブ的な役割なのだろうか。
サウナの中に入る。8人定員のサイズ感、大きいサイズではないが今日の客数が少ないためか、ゆとりを感じられるほどである。室内の温度計は100度程度だったが、体感としてはそこまで熱く感じない。水風呂も20度台後半なので、キンキンに冷えた水風呂が苦手な私にとっては入りやすい。平日夜で比較的空いていたこともあり、落ち着いて入浴することができた。

廃業した銭湯が復活を遂げることは珍しい。特に東京では減少する一方だったので、こうした銭湯の復活は嬉しいニュースである。立地的には駅も近く、周辺はマンションが立ち並び居住者も多いだろう。
また、競馬開催日ともなれば、競馬場からの帰り道にも当たるので、より利用者も多いのかもしれない。小さめながら気持ちのいい銭湯だったので、また会社帰りに来よう。しっかり京王ライナーを予約して。

①桜湯・府中市宮町・2020.7 訪問
②左:男湯、右:女湯
③ビル型
④煙突なし
⑤フロント型
⑥木札型
⑦カラン15・シャワー15
⑧バイブラ、ジェットバス、電気風呂、サウナ、水風呂

それでは、良き湯時間-yujikan-を。

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