見出し画像

サウナなし銭湯について

 緊急事態宣言の発令前夜、下高井戸の月見湯温泉を訪れた。サウナに入りながら、常連とご主人の会話を聞いていたところ、緊急事態宣言発令後はサウナを休業するかもしれない、とのことであった。翌日25日より緊急事態宣言の発令となり、その予想通り、多くの銭湯サウナは休止となっている。


 事あるごとに述べているように、私はサウナーではないので、サウナが営業中であろうとなかろうと、訪問した銭湯には入浴することにしている。そこでサウナが営業していれば入るだけの話である。ところがサウナをメインと考えている人間も一定数いるようで、フロントでサウナ休業中の旨を聞くと、踵を返して帰っていく人もいる。そうした人間を批判するつもりもないが、訪問したからには入ってけよ、とも思ってしまう自分もいる。

かくいう私も、ビールのない居酒屋にわざわざ出かけていかないので、同じことか・・・



調査範囲銭湯186軒(2021.4現在)中、サウナがない銭湯は57軒とかなり少なかった。今回はそんな57軒からの選出である。なお、あくまでも主観、且つ男湯側の見解なので悪しからず。

サウナの熱さの気持ち良さ=熱湯部門

サウナの熱さを求めるのであれば、熱湯風呂でもそれなりに気持ちがいい。なので、まずは熱湯風呂部門から。

・新代田「宇田川湯」

古い円柱型の煙突、番台型の受付、浴室には富士山のペンキ絵がかかる昔ながらのオーソドックス銭湯である。2つの浴槽の奥が一応高温浴槽だが、かなり熱い。体感45度くらいだろうか。流石に高温浴槽は辛いという方は、手前の少しぬるめの湯に入り直すといい。こちらもほぼ同じくらいの熱さなので、休憩する暇もないだろう。錆びまくってホラー化した大村崑のオロナイン広告も一見に値する。

・上大崎の「高松湯」

かなり築年を経たビル型銭湯で、暖簾がなければどこが銭湯の入口かも分からない外観も特徴的である。ビル型だが番台、広告には「都電通り」の文字、浴槽もタイル張りで、かなりの歴史を覚えさせる。カランのお湯を出した段階で予感はしていたが、高温浴槽が恐ろしく熱い。耐え忍んで隣のジェットバス浴槽に移るが、こちらの方がなお熱いというフェイク付き。目黒駅からのアクセスの良さ、近所に庭園美術館があるなど、お出かけついでにも利用しやすい銭湯である。

水風呂の気持ちよさ=交互浴部門

続いて、サウナと水風呂の寒冷差を楽しみたい方向けの交互浴部門。様々な湯温のある銭湯での交互浴は、サウナに近い気持ちよさを得られるだろう。

・西荻窪「天狗湯」

交互湯の聖地とも呼ばれる高円寺「小杉湯」同様、水風呂を合わせて4つの温度の浴槽がある。ミルキーバスは入りやすい湯温、深浴槽の高温風呂はかなりの熱め。そこから隣の水風呂(なんとボイラー室への扉を塞ぐように設置されている)への流れは、熱い時期などかなり気持ちがいい。フレーム型になった富士山のペンキ絵を眺めながら入る水風呂は、また格別である。フロントで看板猫が出迎えてくれるのも、癒しの時間を与えてくれる。なお女湯側には、スチームサウナのような個室があると聞いているので、宣言下でもサウナ空間っぽさを楽しめるかもしれない。

・豪徳寺「鶴の湯」

ここの特徴は軟水風呂。女性客にも人気を得られそうである。富士山のペンキ絵をバックに、柔らかい肌触りのバイブラと水風呂の交互浴は気持ちがいいが、なんとここには露天風呂もある。交互浴と外気浴の合わせ技は、サウナなし銭湯ではなかなか貴重な存在。商店街の狭い敷地にあるため露天風呂も細長い構造だが、しっかり熱いお湯と涼しい露天の外気の組み合わせは最高。耳を澄ますと世田谷線の連接台車の音も聞こえてくるので、のんびりした気持ちになれる銭湯である。

外の空気の気持ちよさ=外気浴部門

最後に外気浴を楽しみたい人向けには、坪庭や外気に触れ合える空間のある銭湯をご提案。

・清澄白河「常盤湯」

隅田川と小名木川に囲まれた一角の宮造り銭湯。外観からもその立派さが目立つが、ここの特徴は何と言っても鯉の泳ぐ池とそこに面した縁側である。脱衣所に沿ってベンチがあるのはもちろん、そのまま浴室の隣にまで池が続いているので、浴室の扉を開け、外気浴をしながら池を愛でることもできる。ここの銭湯は、ぬる湯からあつ湯まで3つの浴槽を楽しめるが、どの浴槽も差異が分からないほどに熱いので、熱湯+外気浴も楽しめる。水風呂はないがカランの水も十分に冷たいので、活かした方次第ではサウナ要素全てを包括できる。なお坪庭は男湯だけのようなので、女性諸氏は涙を飲んでほしい。

・大井「東京浴場」

厳密には外気浴ではないのだが、ここまで開放的に窓が大きい銭湯もないので選出。ここの特徴は、男女湯の仕切り部分に岩や植栽がなされた坪庭がある点である。この坪庭に面してガラス窓があるので、浴室の左右がどちらもガラス窓というド級の採光環境が整っている。訪問したのが真冬だったので窓は閉められていたが、夏場ならばこの窓を開けるのだろうか。浴槽は、古め銭湯あるあるな熱湯かと思いきや、案外丁度いいお湯加減。端にあるコンパクト薬湯も、秘密基地感がありおすすめ。近所の「大盛湯」も、ペンキ絵の代わりにガラス窓越しの坪庭を借景にした開放的な銭湯なので、はしご湯も良い。

私は、サウナー用語の「ととのう」という言葉も好きではない。「気持ちよかった」で充分だろう。

ただあえて使わせていただくなら、こうした銭湯で「ととのえる」体験をしに行ってはいかがだろうか。 

ノーマル銭湯も案外楽しく、気持ちが良いものである。


それでは、良き湯時間-yujikan-を。

この記事が参加している募集

休日のすごし方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?