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銭湯採集

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190軒超の各地の銭湯訪問を経て、数字面の計数や傾向などから見えてくる地域ごとの特性や、歴史的経緯などを推測したレポート形式の短文です。 個人的妄想も楽しみつつ、ご一読頂ければと。
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記事一覧

銭湯採集④ 受付について

銭湯採集④ 受付について

 子供の頃の銭湯のイメージは、番台でお金を払うことから始まった。子供の頃、我が地元にあった銭湯「浜の湯」もそうした昔ながらの銭湯であった。

 父に連れられてきた私は、父が番台にお金を払うのを下から見ている。子供の私にとって、番台の高さは遥かに大きく、番台に座るご主人や女将さんの姿もあまり見えないくらいだったように思う。風呂上がりのポカリスエットを買うべく、父にお金をもらって番台に払いにいく時、か

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サウナなし銭湯について

サウナなし銭湯について

 緊急事態宣言の発令前夜、下高井戸の月見湯温泉を訪れた。サウナに入りながら、常連とご主人の会話を聞いていたところ、緊急事態宣言発令後はサウナを休業するかもしれない、とのことであった。翌日25日より緊急事態宣言の発令となり、その予想通り、多くの銭湯サウナは休止となっている。

 事あるごとに述べているように、私はサウナーではないので、サウナが営業中であろうとなかろうと、訪問した銭湯には入浴することに

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銭湯採集③ カランについて

銭湯採集③ カランについて

脱衣所で服を脱ぎ、いざ風呂へ入らん!と思っても、いきなり浴槽へ向かう人はあまりいない。まずは体を洗うべく、椅子と洗面器を持ち、近くの洗い場を探す。この洗い場は、通称カランと呼ばれる。

カランとは、「キッチンや洗面所、浴室に使われている水栓の管やハンドル、蛇口の総称」である。家庭用カランは、ハンドルを上下左右に回せば適切な温度の水(湯)が出てくるものだが、銭湯では、お湯の出る赤いハンドルと水の出る

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銭湯採集② 煙突形状について(1) 円柱型煙突

銭湯採集② 煙突形状について(1) 円柱型煙突

 こどものとも社の絵本に「おふろやさん」という本がある。この絵本に出てくる銭湯は、母屋の大きな破風と妻入の建築、玄関の唐破風屋根、浴室内のペンキ絵と典型的な東京型の銭湯の形を今に伝えている。

 この本についてはいずれまた述べるとして、まずこの本の表紙に注目すると、銭湯の裏手から太い煙突が伸びている様子が見て取れる。ご丁寧に舞台の銭湯の屋号「亀の湯」の表記までがなされている。
まずは「煙突」の中で

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銭湯採集① 銭湯屋号について(1)

銭湯採集① 銭湯屋号について(1)

noteを始めるにあたって、まずは銭湯レポートについて執筆してきた。とはいえ、こんなものであれば銭湯を訪問すれば誰でも書くことができる。
各地の銭湯に足を運んでもらいたいので、紹介も兼ねて今後も書いていく所存だが、私が本来発信していきたいのは「銭湯訪問記」ではない。
大学の卒業制作のために銭湯を調査し始めて約1年半、現在その蓄積数は130余りとなった。
サンプル数としては決して多くはないが、傾向な

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